◆ 闇の魔法使い襲撃

 旅の途中で何度もゴブリンやオークの襲撃に遭ったが、いずれも追い払い、ククたちは数々の冒険を乗り越えていった。


 しかし、今度の戦いは、いつも以上に手強かった。

 今までのゴブリンといった魔法も使えない弱い雑魚などではなく、しっかりと魔法を使いこなす人間__闇の魔法使いが十人近い人数で襲ってきた。


「一人として逃すな!」


 奴らの一人は叫んだ。別の一人は人差し指をキキに向け、闇の魔法を発射した。魔法は風のように、凄まじい勢いでキキに向かおうとした。

 その時だった。ククがキキの前に出て、小枝を振った。すると、闇の魔法は逆方向に跳ね返され、奴らに当たった。うち一人が倒れた。


「クク、ありがとう!」

「キキ、今のうちに逃げて!」


 キキは言われた通りに、木の陰に隠れた。

 ククと奴らの間で、魔法の撃ち合いが続いた。最初は、強力な魔法を使う奴らの方が優勢だった。だが、強ければ強いほどその分、敵に跳ね返されたときの打撃も大きなものとなる。それに、ククは小枝さえあれば、並以上に上手く魔法を使いこなせた。


 奴らの攻撃をかわしては、跳ね返していくうち、三人が倒れた。いつの間にか、ククの方が優勢になった。

 とどめに聖なる小枝を一振りすると、枝の先が光り出す。放たれた光の魔法は、奴らに見事命中。残りの三人も全員倒れた。


 ほっとしたのも束の間、まだ戦いは終わらなかった。


 目の前に、ククと同い年ほどの人間の少年が現れた。彼もククと同じく、手に小枝を握っていたが、小枝からは邪悪なオーラが漂っている。また、彼は冷たい目をしていた。


「あなたは、誰なの」


 ククに問い詰められて、少年はふてぶてしく答えた。


「闇の魔法使いを率いる魔王、シャド王子だ」


 彼はキキやククと同じ人間ではない。闇の魔法使いだったのだ。


「お前は今までに、何人ものゴブリンやオークを倒したようだな。光の魔法使い! お前には、今すぐ消えてもらう!」


 シャドは小枝を一振りした。邪悪な小枝から放たれた闇の魔法は、ククに直撃。弾みでククは後ろへ吹き飛ばされた。

 しかし、シャドは攻撃を止めない。さらに三回、魔法を放った。いずれも命中し、ククは大きく傷ついた。


 ククが危ない。ククが苦戦するのを、キキは、黙って見ていられなくなった。


「見つけたぞ、逃すな!」


 突如、後から来た闇の魔法使い複数人が、キキを囲い込んだ。


「かかれ!」


 奴らはキキを睨みつけると、固く握りしめた拳に魔法を宿し、一斉に襲いかかった。


 思わず、キキは枝を大きく振り回した。今こそ、魔法が覚醒するときだと信じて。意識を全集中させて。

 ところが、どれだけ強く念じても、魔法が発動しない。その隙に、奴らはキキ目がけて殴りかかった。


 その時だった。

 奴らの一人が拳を振り上げたと同時に、キキの枝がそのまま、勢いよくその一人に当たった。太く丈夫な枝の衝撃で、一人は遠くまで吹き飛ばされた。

 キキも動揺した様子だったが、気を取り直して枝を構える。

 そんなことにも構わず、他の奴らは、拳に魔法を宿し殴りかかった。


「気を抜くな! ぶちのめせ!」

「負けないよ!」


 キキのほうも、枝を大きく振り回した。枝はまた奴らに当たり、うち数人を遠くまで吹き飛ばした。キキは枝を振り回して、次々と奴らを倒した。


 奴らが全員いなくなり、ようやくククの元へ駆けつけることができた。

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