第24話 出世払いになりそうです。その7
時々、、猫が来ている夢を見ながら、、、相変わらず長くは起きていられない。
ハンナに窓を開けてもらったら、春の匂いがした。
「今は、、、何月?」
「もう、4月も半ばになりましたよ。暖かくなってきましたね。窓、もう閉めますよ?」
新学期が始まるなあ、、、私はどうしようかな、、、
お医者さんが来て、包帯を解いてくれた。
「ゆっくり、、眼を開けてみてください。」
ぼんやりと先生の輪郭が見える。丸っこい顔に、丸眼鏡。心配そうにのぞき込むハンナ。室内はカーテンが引いてあるからなのか、薄暗い。
「私の指が見えますか?」
軽くうなずく。
「もう包帯はいいでしょう。しばらくは、昼間の光は避けてくださいね。だんだんに、ですよ。焦らなくていい。」
「はい。ありがとうございます。」
少しづつ、部屋の中を歩いたり、廊下を歩いたり、、、思ったより体力が落ちていて自分でびっくりする。寄り添ってくれるハンナに感謝だね。
眼が見えるようになって、鏡を見たら、、、髪が肩のあたりで切りそろえてある。
毛先が燃えてしまって、仕方なく切ったらしい。ハンナが申し訳なさそうに言う。
片方のピアスは、、やはりついていない。
「・・・・ところで、、、ハンナ?」
「はい、何でしょうか?お嬢様。」
「ここは、、、、どこなの?」
部屋は広く、調度品も品があり、整っている。カーテンも重厚。廊下は絨毯敷、、、隣は、侍女用の部屋になっている。
うちのベットにしてはふかふかだなあ、、と、寝ているときにも思ったが、、
「今?でございますか??」
「・・・・・」
「ここは、王太后陛下の離宮でございます。」
「・・・・・」
「お嬢様が落ち着かれるまで、どなたも通さないから、と。2階のフロアー全て貸し切りでございます、、、、私もお迎えが来たときは驚きました。お嬢様は、、、あんなんでしたし、、、お元気になられて、、、ホントに、、、留学先で火事に遭うなんて、、、」
「・・・・・」
そうか、、、早く元気になって、、帰ろう。
ご飯を食べて、歩き回って、、、朝晩は外に出ても大丈夫になった。本はまだ読んではダメらしい。退屈だ。ハンナとボードゲームをしたりして、、、夜はやはり、疲れて寝てしまう。
時々、夜中に猫が来る気配がするのだが、、、夢なのか、、、な。
中庭で、お茶ができるようになってからは、、、エントランスにあのタイルが市松に敷いてある、、、時々、王太后陛下とお茶をしたりする。
そんなある日、思いがけない人の訪問を受けた。
お客様が来たと、中庭に案内された。ハンナはお茶を出して、下った。
「・・・デイジー?」
「・・・へ?」
抱えきれないほどのバラを持った、、、エリック・ユーハン侯爵?
「・・・この度は、、いろいろと迷惑をかけてしまって、、母を、、助けてくれてありがとう。君も、、大変だったね、、本当に、、すみません。」
「ああ、、、奥様は?」
「うん、、あの後、王都の王立病院に入院させていただいていたんだけどね、、もう、心臓が弱っていて、、会うなら、今しかないらしく、、、僕もまだ取り調べが終わっていないんだけど、、特別に領から出させてもらえたんだ。監視付きだけどね。ふふっ。」
「そう、、貴方の領はいいところだわ。領民もみんなあなたが好きでしょ?彼らのためにも、、、しっかりしてね、領主様?」
「うん、、、デイジー、、、僕は、、、母に、なんていえばいい?」
「・・・愛していると、、、それだけ。充分よ。」
奥様に、、、愛していると言ったのは、、彼女の夫だろうか?司祭だろうか?
別れ際に、忘れ物があったよ、と、渡されたのは、ベットわきに落ちていたらしい、かわいいカバーの国税官入試問題集と、、、ハンカチに包まれた、、、少しくすんだピアスの片方。
「焼け跡から、執事が見つけたんだ。大事なものだろうから、って。」
ああ、こんなことってあるんだ!素直にうれしい!もう、二度と揃わないと思っていたから!
「ありがとうございます!本当にうれしいです!」
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