第3話:ギルドの面接官をわからせます
「そんなもん拾ってどうするんだ?」
エルフの少女は、せっかく俺が外してやった呪いの装備を拾い集めて袋に入れていた。
「高く売れるんですよ。呪いの装備からは
「そうか、俺もろくにカネは持ってないからな。お礼代わりに山分けってことでどうだ?」
一応、リュックの中には銀貨が何枚かあったが、とりあえずの宿代くらいにしかならないだろう。
「ダメです♪ これはもともと私の持ち物なんですから」
「お礼くれるって言ったじゃん」
「お礼は体で払いましたから、これは別です」
「しっかりしてるなぁ」
「冒険者なんですから、当然です」
エルフは長命だという。見た目には俺より年下にしか見えないが、実際は経験豊富なのかも知れない。その割には呪われまくるというミスをしているのだが。
「ところで、冒険者っていう制度があるんだな」
「ええ、こう見えても私は冒険者ギルドの正規会員ですから!」
インストールされた知識に「冒険者」という言葉は無いようだった。話によると、近年に認められたばかりのシステムで、「魔王」に立ち向かう人材を集めるために専門家を組織・管理しているようだ。おおむね、ゲームのイメージ通りだ。
「俺も、その冒険者になったほうがよさそうだな」
世界の危機についても詳しい話は聞いていないのだが、とりあえず「魔王」を倒せば良いのだろう。思ったより単純そうで助かった。
「そういえば、名前聞いてなかったな。俺はケンっていうんだ」
本名は健一郎というのだが、こちらの言語ではやや発音しづらいようなので、縮めて「ケン」と呼んでもらうことにした。もともと仲の良い友達はみんなそう呼んでくれる。……もう会えないのか。
「私はイリス。
「イリスか、よろしくな」
こうして、俺たちは冒険者ギルドのある街を目指すことになった。
**
夜を明かしてから、イリスの案内で街までたどり着いた。思っていたよりも遠くなかった。と言っても、それは今の俺の感覚であり、元のままだったらとても歩けないような距離だった。おそらく、10キロ以上はあったはずだ。
「筆記試験と体力試験は通ったが、これから面接か」
俺たちはさっそく冒険者ギルドの扉を叩いた。筆記試験は簡単な読解問題と計算問題で、義務教育を終えた日本人ならば容易に解けるものであった。体力試験は以前の俺では無理だっただろうが、女神様に与えられた力のおかげで問題なくパスした。しかし、面接が関門だという。
「私は鑑定技能で通りましたが、ケンは……あの能力ですか?」
「そうだな。それしか無い」
イリスは裸にされたのを思い出したのか、少し恥ずかしそうにそう言った。
*
「装備の強制解除? 聞いたこともない能力だけど、本当にできるのかしら?」
ギルドの面接官は妙齢の女性だった。眼鏡をかけて、ブラウスにタイトスカートといったキャリアウーマン風の格好である。
「はい、呪われた鎧でも壊さずに外すことが可能です」
俺は、サンプルとしてイリスから鎧の一部、胸当ての部分を借りていた。ひと目見ただけで呪われているとわかる、漆黒の
「ふぅん。確かに、呪われているようね」
「あっ……」
面接官は、勝手に鎧を身に着けてしまった。
「これを壊さずに外すなんて聞いたことも無いけれど、本当にできるのかしら?」
「えーと。確かにできますが、鎧だけでなく服も脱げます。恥ずかしいことになりますが、大丈夫ですか?」
「まさか、そんなことできるはずないわ! どうせ、その能力もでっちあげたんでしょ?」
どうやら、俺のスキルを信じていないらしい。これは身をもって教えてやる必要がありました。
「わかりました。今から実行するんで恨みっこなしですよ」
「ええ、やってごらんなさい」
「……
俺がキーワードを放つと、面接官の体が光り輝く。そして胸当ての留め具が外れて、床に落ちた。
「まさか!」
続いて、ブラウスのボタンが外れていく。弾け飛ぶのを期待したのだが、基本的に非破壊のようだ。ボタンが全て外れると、彼女は胸を突き出して両手を後ろに伸ばしたポーズになり、ブラウスが引き抜かれていく。
「ちょっと、止めなさい!」
「この能力は全部脱がすまでがセットなんですよ。やってみろって言ったのはあなたですよね」
この世界にもやっぱりブラジャーはあるんだな、と思うまもなく、ストラップが浮き上がって抜けていく。なかなかの美乳だ。
「いやぁっ!」
「あ、上半身だけじゃ終わりませんので」
「そんな、嘘でしょ?」
スカートのベルトが緩み、床に落ちる。イリスのかぼちゃパンツとは違う、ぴっちりしたショーツも容赦なくずり下げられたところで、効果が止まった。メガネや靴・靴下には影響はないらしい。そういえば、イリスの時も頭のリボンはそのままだったな。
「こ、こんなことしてタダで済むと思ってるの?!」
「別に、俺はやれと言われたからやっただけですが?」
せめてもの情けで、俺は後ろを向いた。さっきまで偉そうにしていた面接官が、涙目で胸と股間を隠している様子は絶景であったが、長い付き合いになりそうなので恨みを買っても仕方ない。
「……確かに、実力は認めるわ。もう前を向いていいわよ」
「呪いの解除だけでなく戦闘にも使えそうね。冒険者になるには十分な能力だと認めざるを得ないわね」
「ありがとうございます」
俺は床に落ちた鎧を回収しながら、お礼を言った。
「もし呪われてお困りでしたらいつでもお声をかけてください。ギルドの構成員ですから、無料で解いてあげますよ」
「け、結構よ!」
こうして、俺はギルドの会員権と素敵な思い出を手に入れた。
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