第5話 資料④:教団周辺住民の証言

 あ~? なんだおめえ。

 あ? 記者? ・・・教団の話を聞きたいって?

 何も話せることはねぇよ。この村とあの教団にはなーんの関係もねぇんだ、はよう帰れ。

 ・・・・あんた、あの教団の事調べてなんになるんだ? ネタ探しのためだけにあんな頭のおかしい奴ら調べてるんだったら、悪いことは言わねぇからやめとけ。命がいくつあっても足りねーぞ。

 ・・・・・・・・分かった、分かったよ。そんなムキになんなって。あんたは悪そうな人には見えねーし、俺が知ってることなら教えてやるよ。って言っても、そんなに知ってることはねーけどな。

 

 あの教団の施設ができたのは十年くらい前のことだ。『人々を救うため、我々はここに楽園を築きたい』って言って、白ずくめの集団が村にやってきた。当時は大分揉めてさ、『変な宗教の人たちが近くにいては安心して暮らせない』って村の一部の連中がかなり強く抗議したんだ。でも何故か一ヶ月もしないうちに抗議は治まって、気づいたらでっかい施設が山奥に建っちまった。

 これはおかしいぞって事で、一応建設反対派だった俺と他数人で抗議の中心にいた婆さんの家に問い詰めに行ったんだ。

 そしたらさ、婆さん死んでたんだよ。茶の間のこたつに入って座ったまま、俯いて死んでた。

 これは大変だってことですぐに警察呼んで、色々調べたらしいんだけど『事件性は無い、不審な点は無い』って。いやおかしい、教団が関わってるかもって言ったんだが、警察はまともに取り合っちゃくれなかった。

 確かに婆さんの死因は心筋梗塞だったらしくて他殺とは言えないかも知れない。でも・・・・、あれはただの病死じゃ無いと思うんだ。

 何故って? ・・・・婆さんの死体を始め見たとき、思わず目を背けたくなった。それくらい婆さんは、

 人ってそんなに笑えるのかってくらい口角を上げて、最早引きつってるようにも見えるくらい笑ってた。そんな婆さんの生気の無い目線の先にはさ、結構前に亡くなった孫娘の写真があったんだよ。婆さんは孫の写真見ながら笑って死んでたんだ。どう考えたって不審だろ。

 今でもあの光景は目から離れないよ。あまりにも異様で、恐ろしい死に様だった。婆さんの死には絶対にあの頭のおかしい連中が関わってるに決まってるって誰もが思ったさ。でもその一件以来、村の連中は教団を恐れて無関係・無関心を貫くことにした。無理に関わったって良いことねぇからな。

 ・・・・俺が話せるのはこれくらいだよ。あんたも笑って死にたくなきゃあ教団とは関わらんことだな。



※録音はここで終わっている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る