第11話 オウム探し。

 

 僕はもうひとつの依頼を行うために移動していた。

 依頼表に書かれた名前と住所と地図を見ながらだ。

 そこはマチルダさんの屋敷とそれほど距離がなかったよ。

 わずか30分歩くだけで到着した。




 そこも大きなお屋敷だった。

 石造りの大きな二階建てで庭木もきれいに手入れされている。

 やはりペットを飼える人というのは生活に余裕のある富裕層の方々ばかりなのだろう。




「ごめんください」




 広い庭を抜けて屋敷の玄関扉のノッカーを叩きながら僕は言う。




「はい」




 しばらくするとメイドさんが顔を見せた。

 やはりここにもメイドさんがいた。

 金持ちなのは間違いない。




「ペット探しの件で冒険者組合から来ましたマキラです」




「ああ、旦那様がお待ちしておりました。どうぞ中へ」




 と、言う訳でまたまた応接室へ招待されたよ。

 なんかペット探しを依頼する人はよっぽどペットが大事なのか冒険者を大事にしてくれるね。




 そしてお茶とお菓子を戴いていると身なりの良いおじいさんがやって来た。

 きっと依頼主に違いない。




「捕らえてほしいのは真っ赤なオウムなのです」




 エドモンドさんと名乗ったおじいさんがそう告げた。




「なにか情報はありますか? 最後で見かけた場所とか姿絵とかあると仕事がしやすいのですが」




 僕がそう言うとエドモンドさんが困り顔になる。

 どうにもこうにもならないといった様子だ。




「説明するより、いっしょに庭園に来てくれませんか?」




「……はい?」




 エドモンドさんはそう言うと僕を手招きして屋敷の外へと連れ出すのだった。




 庭園は花が咲き乱れる良く手入れされたものだった。

 そして外壁に沿って大きな樹木が並べて植えられていた。




「あれです」



 エドモンドさんがその大きな木の1本を指さした。

 するとその高い枝に1羽の大きなオウムがとまっていた。

 姿は真っ赤でエドモンドさんの話と一致する。




「あれですか?」




「そうなのです。うっかり鳥籠から逃げ出してしまって庭にずっといるのです。もちろん捕まえようと網を用意したのですが、逃げられ続けて困っているのです」




「なるほど」




 確かに鳥を捕まえるのは難しいよね。

 しかしこれは幸運だ。探す手間が省けたよ。

 これなら仕事は簡単だよね。




「では捕まえます。捕獲用の網を用意してください」




 僕はエドモンドさんといっしょに着いてきた屋敷のメイドさんにそう告げた。

 すると事前に準備してあったのか、メイドさんは屋敷の中からすぐに細長い捕獲網を持って来た。




「じゃあ、行きます」




 僕の言葉にエドモンドさんとメイドさんが頷いた。




「木に登るのかな?」




「いえ、魔法を使います」




 僕はそう答えると杖を背の高い木の枝。つまりオウムがとまっている枝に向けたのだ。




「転倒」




 ――ツルリン。




 枝に浮かぶ魔法陣。

 魔法が発動し、枝にとまっていたオウムが足を滑らせた。

 そしてそのまま地面へと落ちて行く。




「おおっ」




 エドモンドさんが感心した声を出す。

 が、……そこでオウムは羽ばたいた。




 そりゃそうだよね。鳥なら墜ちる前に飛ぶわな。




「ああ、逃げるっ!」




「大丈夫です。――転倒」




 空中に浮かぶ魔法陣。



 ――ツルリン。




 羽ばたき上昇していたオウムだったが、僕の二回目の転倒魔法を受けて空中で転けた。

 そして真っ逆さまに落ちてくる。




 そうなんだよ。

 転倒魔法は空中でも使用可能なんだ。

 飛んでいても転けて失速してしまうんだよね。




「捕まえました」




 メイドさんが無事に落下中のオウムを網で捕獲した。

 これで一件落着だ。




「おお、ありがたい。さっそく鳥籠に戻すように」




 エドモンドさんはそうメイドさんに命じた。

 メイドさんは深く一礼すると屋敷の中へと網を持って姿を消したのだった。




「これで完了でいいでしょうか?」




「ああ、もちろんだ。さっそくサインしよう」




 そう答えたエドモンドさんは僕が取り出した依頼表にサインしてくれる。




「また、なにかございましたら、よろしくお願いします」




 僕は一礼するとエドモンドさんの屋敷を去るのだった。

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