第58話~地下迷宮物語 その1~

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彩美と七海の3Dモデル作成状況も発信して行きますね

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七海が手際よくメイレーンにメイクをして行く

慣れないブラシが肌を撫でる感覚に少しむず痒さを感じてるメイレーンが可愛いよ

しばらく見ていると

「はい完成!」

手鏡を七海が手渡す


「本当に私なの・・・綺麗」

手紙を覗き感動してるメイレーンだよ

ナチュラルメイクだけど少し目元と眉をキツメにハッキリさせて童顔を上手に大人顔に仕上げてるよ

私も色々なメイクを覚えてきたけど自分の顔に対してで人の顔をここまで自由に印象を変えて纏める七海の腕は本当に凄いよ

「わあ~このギャップ感は萌えポイントアップだよ」

とセット前なのでメイレーンの頭を思う存分ナデナデする美香

昨晩に何があったのか気持ち良さそうにナデナデを受け入れて笑顔のメイレーンだよ


「じゃあ髪もセットしちゃおうね」

七海が髪のセットをはじめる

ヘアオイルを塗りブラシで丁寧に髪を伸ばして行く

普段しているセンター分けのワンレンを綺麗に整えるとハーフアップにして右側の耳に掛かる髪を編込んで顔周りをスッキリ見せる

最後にセット中に出来たアホ毛にオイルを軽く塗り整えて完成

「うわあ本当に私なの!?」

手鏡を持つ手が感動から震えてるよ

中学生か高校生になったばかり位で成長が止まって幼女のイメージがだったけどメイクとヘアセットでスレンダーな少し小柄大人の女にイメージが変わったメイレーン

印象が可愛いから綺麗になったよ

「今日は全部私がやったけど依頼から帰って来たら道具揃えて手解きするのから自分で出来る様に練習しよう」

「はい!お願いします」


私達も服装を整えメイクを終えるとナターシャが朝御飯を届けに来てくれたよ

「今日は茸のポタージュです」

パンは大き目のクロワッサンだね

本当は物語の続きを話そうと考えていたけど私の記憶が使われた可能性をもう少し検証してからと七海と決めたよ

朝御飯を食べながら出た話題はメイレーンのナデナデだったよ

”なんか美香にナデナデされてメイレーンご機嫌だったね”

「最初はビックリしたんですけど思い出したら美香さんのナデナデが気持ち良くなっちゃって」

思い出したら?

「御主人がメイレーンを褒める時は必ずナデナデだったんだって」

「今のパーティーメンバーじゃ絶対に私の事をナデナデなんてすることないので」

”なんか仲良しでありそうなんだけど”

「彼らが若さで無茶しそうになると小煩い注意とか怒ったりするんで結構煙たがられてるんですよ冒険者仲間と言う意味では信頼はしてくれてますが」

外から見てるだけだととわからない苦労も多くあるんだね

「本音だと彼らと一旦離れて皆さんとパーティー組めるのは楽しみで仕方ないんです」

「おねーさん役をやるのに少し疲れちゃったみたいなんだよ」

昨晩は美香と色々話したんだね

「何かを決める時にケンプファーはリーダーなのに私の顔色を伺ったり」

コーヒーを一口飲み気分を落ち着かせるメイレーン

「サイは無意識だけど私に察してで意見を代弁させることが多かったりね」

”セレンは一緒になるけど”

「セレンは一人なら親友なんですがケンプファーと一緒だと同調しちゃってなんかビクビク接してくるので悲しいの」」

「一度離れてお互いにクールダウンする機会にしたいのだな」

七海がメイレーンが話難い部分を代弁したよ


朝食を終えると紫煙を巡らして気分を整え冒険者ギルドへ

ケンプファー達は先に到着して冒険者酒場で朝御飯を食べ終えお茶をしてたね

挨拶を済ますと

「うわメイレーン綺麗!」

セレンがメイレーンのメイクに驚く

ケンプファーとサイは気が付いているのか?いないのか?

この鈍感さもメイレーンの葛藤だったんだろうね

これだけ変わったら女心としては褒めて欲しいよね


ギルドに入るとミナイがすぐに気が付く

「メイレーンさん綺麗!大人感がぐーっと増していい感じですね」

照れるメイレーンが可愛いよ

”何か良い依頼あったかな?”

「またも変な力が働いた緊急依頼が今朝一で入りました」

笑いながら依頼書をカウンターに出してくれるけどオヤクソクになりつつ読めません

遮音結界を張るの待ちミナイが説明をしてくれる


依頼主は光の国大使のミカエル

依頼内容は闇の国と国境を接する付近の光の国領地で見つかった先史代の遺跡と地下迷宮探索

距離的に冒険者ギルドがある光の国王都より闇の国の王都の方がかなり近いのと光の国王都からだと険しい山岳地帯に阻まれ闇の国を経由して迂回をしないと辿り着けない場所

盗賊による盗掘や一般人が迂闊に入らない様に光の国辺境警備隊が現在は封鎖しているが巡回の予定もあるので長期間の滞在は難しく圧倒的に到着が早い闇の国冒険者ギルドに依頼することとした


いまだに新たな遺跡が見つかるのは先史代が高度な認識阻害を施し遺跡を隠していたから

遺跡の中にある地下迷宮に偶然誰かが立ち入ると遺跡の認識阻害が解除され遺跡が姿を現す

迷宮の入り口は巧妙に偽装されているので多くの偶然が重ならないと見つかる事は無い

国土の広い闇の国や光の国でも数年に一ヶ所見つかる程度

今回はかなり強い地震が遺跡を発見した周辺であり被害調査に向かった巡回警備隊が地震で偽装が破壊された地下迷宮の入口発見に至った


う~ん偶然のタイミングとは言えないよ

多分だけど少し前に発見されていたけど美香初陣のために依頼タイミングを待ってくれていたとしか思えないけどね

遺跡の初動調査は地下迷宮に強力なトラップや守衛として未知のモンスターが配置されている場合があり危険度が高いので黒曜石級以上になる

それとダブネスが大量のモンスターを産み出し世に放てたのは先史代が地下迷宮の守衛用にモンスターを産み出す装置を使ったからだよ

現在王都に滞在する宝石級はジルと七海に私だけなので必然的に私達に依頼が回って来る仕込みまでだね

報酬は五十万Gと安いのは遺跡や地下迷宮で発見した品は発見者の物として手に出来るボーナスがあるから

誰も足を踏み入れていない地下迷宮では先史代の遺品が多く残されている場合も多いからね

あと今回は現場到着までの時間を短縮する為に特別報酬として馬が加わる

依頼の目的は遺跡と地下迷宮の難易度調査と周辺領地に被害が出る要素を発見した場合は排除

難易度調査は今後遺跡を探索した冒険者の安全の為に設ける制限の為

光の国としては遺跡を探索したい冒険者から入場料を取ることで国庫がわずかだけど潤うからね


依頼書にサインをして受諾だよ

「馬は黒泉館の厩舎に預けてあるそうです」

冒険者ギルドを出ると雑貨屋と食品屋に立ち寄り少し買物

まずはアルコールストーブと燃料だね

今回は地下なので野営となった場合に薪をあてに出来ないからね

食品屋では携帯食料と酒を何種類か買い増したよ

黒泉館の厩舎に行くと馬具を付けた馬が用意されていた

「彩美ちゃんから乗馬の練習しとくようにが早速役に立つね」

美香は乗馬サークルに入ったり乗馬スクールに通って練習をしてもらっていたんだ

七海はお客さんとの話題造りで乗馬スクールに通っていたことがあるからすぐに乗れたんだよ

私も物語を書くのに描写をしっかりしたくて両親にお願いをして乗馬スクールに通っていたんだけどコレも破滅につながった借金の一部とはだよ

元は辺境暮らしのケンプファー達は生活の一部で馬に乗っていたので問題ないよ


目的地までは約五十リーグで徒歩なら二日の距離だけど馬なら午後半ばには到着出来るね

街を出ると速足で一時間位進んで少し馬を休ませて一時間位進むの繰り返し

ダークもフリューゲルもだけどミカエルの用意してくれた馬達もかなりの名馬で速足一時間で二十リーグも進めるよ

二回目の休息は小さな小川を見つけたので少し早いけどお昼だね

馬達は小川で水を飲み草原の草を食べて休憩中

私達は携帯食料をワインで流し込み時短飯だね

ガイアの一本バーサイズな携帯食料の味は正直に最悪

硬く焼き水分を極限まで抜いた状態のパンにベタベタに甘い糖蜜漬けの細かく切り刻まれたドライフルーツが入ってる

長期間保存出来るようになんだけど食感はボソボソで口の中の水分を全部持っていくし後味は気持ち悪いレベルで甘ったるいし

ワインで無理やり流し込むと胃の中でワインを吸収して膨らみ満腹感が出る

極限まで携帯性とカロリーだけに特化した食事と言うより餌だね


食事を終え移動を再開

予定よりかなり早く昼過ぎには遺跡に到着出来たよ

遺跡の周辺を警備する軍隊を見つけたので近づいていくと指揮官と思われる人が出て来たよ

馬を降りると

「光の国第三巡回警備隊の隊長ミゲルです」

”今回の依頼を受けました水晶級の彩美です”

「ではよろしくお願いいたします」

と道を開けてくれる

”あっ馬をお願いしていいかな”

「お預かりいたします」

私達は馬を預けると徒歩で遺跡跡に入る


遺跡の状態はかなり悪く建物は残っておらず僅かに基礎が何ヶ所か残っているだけ

”地上は何も無いね”

先頭を私と並び歩く七海

「地下迷宮に期待だな」

地下迷宮の入口は遺跡一番奥の切り立った崖にあった

周りに散らばる土砂や岩で塞がれていたのが地震で崩れたみたいだね

幅は二人が並んで歩け高さも三メートル位あるね

七海と美香に私は鷹目で明りは不要だけどケンプファー達は携帯ランタンを準備してるね

ランタンの準備が終わり地下迷宮に入る

自然の洞窟では無いのは一目でわかる

壁も床も全てレンガ大の石を組み合した造りになっている


数十メータ直線な通路を歩くと無機質な金属製の扉が行く手を遮る

この先が本格的な迷宮だね

扉の取っ手を持ち手前に引くと扉が開いた

中に入るとかなり大きな部屋だ

テニスコート二面分位サイズに天井も高さが十メーターくらいある

そして今までの通路と違うのは部屋の壁や天井が薄く光り室内を照らしている

部屋の中央にうず高く金製品が積み上げられてるのが見える

典型的なお出迎えなんだけどどうするかなと一瞬考えていたら

「あっ馬鹿!」

メイレーンの呟きが聞こえる

見た事もない宝の山にケンプファーとサイが駆け寄る


あ~あメイレーンの日常の悩みが垣間見れたよ

二人が宝の山に触れると白い糸が噴き出し二人を簀巻きにする

「なんだよこれは!?」

ケンプファーの悲鳴が響く

次に狙われたのは宝の山へ一番近い位置に居たセレン

速度的に回避は無理と判断して氷壁の詠唱に入るが間に合わない

ケンプファー達と同じように簀巻きにされる


「まったく見え見えのトラップに突っ込むとは」

メイレーンの嘆きが部屋に響くよ

宝の山は色を失い巨大な蜘蛛に変形していく

先史代の高度な認識阻害を操れる護衛の蜘蛛なんだけどファンタージでよく出て来るタランチュラ系でなく女郎蜘蛛なんで不気味さが倍増だよ

七海と私は蛇とか足の無い系は大好きなんだけど多脚系は見るだけでも鳥肌が立ってしまうレベルで苦手なんで二人揃って一歩下がってしまいました


蜘蛛は天井に跳躍して三人に繋がる糸を数メートル巻き上げ天井に糸を着けて宙釣りにする

バタバタと身を捩らせ暴れる三人だけど糸の切れる気配は全くないよ

目覚めた蜘蛛は私達全員を簀巻きにしてから落ち着いて食事タイムの予定みたいだね

蜘蛛が天井より降り立ち私達に正対する

あ~駄目!直視もしたくないよ七海と私は二人の後ろに逃げちゃうよ

それを見た美香が笑いながら

「二人は蜘蛛が超苦手だから私達で行くよメイレーン」

と声を掛ける

「はい!」


銀乃剣を手に美香が斬り込む

蜘蛛は大量の糸を吐き出し美香を捕縛しようとする

剣で斬り落として行く美香だが糸の勢いは収まらず前に進めない

「燃やします」

メイレーンの掛け声に合わせ横に動きメイレーンの射線を作りながら糸がメイレーンに届かない様に斬り落とし続ける

「火嵐」

吐き出される糸の束に命中し一瞬だが糸が全て燃やし尽くされ美香が斬り込む隙が出来る

美香の体が薄青く光ってる耐火のバフを発動したね

まだ燃えてる糸束や飛び散り残ってる火を耐火バフで無効化し蜘蛛との間合いを詰め糸を吹き出す口へ剣を深々と突き立てる

手応えを感じ突き刺した剣を抜き断末魔で暴れる脚を次々と切り落として行く美香

全ての脚が斬り落とされ口を破壊され糸を吹き出せない胴体だけになった蜘蛛だけどやっぱし嫌悪感が抜けない七海と私は手を握り合って硬直中

しばらく胴体だけでバタバタしていた蜘蛛だがやがて目の光を失い動かなくなる

それでも硬直している私達を見たメイレーンが

「燃やしちゃいますので少し待ってくださいね」

蜘蛛の胴体にメイレーンが手を当てると炎に包まれ数秒で灰になったよ


「生き返った」

”うん”

まだ鳥肌に脂汗だけどね

「まさかの御二人は蜘蛛が苦手だったとかですね」

”ありがとう危なく反射的に魔矢を放ってしまうところだったよ”

「再確認だけど此処では彩美の魔法は禁止だよ迷宮が壊れて生き埋めになるからな」

そうなんだけど嫌悪感がヤバかったよタランチュラ型とか土蜘蛛型なら出会いは覚悟してたからここまで動揺しないけど女郎蜘蛛は反則だよね

美香がポーチからワインを取り出し渡してくれる

七海と一口ずつ飲んで落ち着きを取り戻す

「冒険を重ねてもねーさんと彩美ちゃんの蜘蛛苦手は変わらないね」

「御二人に苦手な物があったと知れて嬉しいです」


何か忘れてる気がするよ

「おーい!降ろしてくれぇ~」

あ~あ燃やした蜘蛛胴体の煙に燻されて涙と鼻水まみれの三人が吊るされているよ

メイレーンが小さな火球で吊るしてる糸を焼き切る

落下してくる三人を七海と美香に私で受け止め立たせる

美香が剣で簀巻きしてる糸だけを斬り落とす

安堵から座り込む三人の前に仁王立ちのメイレーン

あ~あ有視界化出来るなら全身から炎が吹き上がるレベルで怒ってるね

セレンが立ち上がりメイレーンの前まで来て

「ゴメン油断しちゃった」

「セレンの油断は問題あるけど二人に比べれば今後の修練課題で済ませられるよ」


メイレーンに睨まれて固まる二人

目を伏せメイレーンと視線すら合わせようとしない

何か言おうと爆発寸前のメイレーンだったけど突然怒りは萎み肩を落として私のもとへやって来ると小さい声で

「時間の無駄だね先に進もう」

見え見えのトラップに掛かり迷惑を掛けたのにメイレーンの怒りに気圧され一言の謝罪や反省も発さない二人に呆れてしまった感じだね

これちょっとヤバイかもケンプファーとジルを連れて来たの時期尚早だったかな

まあパーティーの問題は私が考えても何で先に進むよ

部屋を奥に進むと又は質素な金属の扉

扉を開けると二人が並んで進める幅の光る廊下が続く

いくつかの分岐や曲がり角を過ぎながら地下迷宮の奥に進む

あっチートで持ってる能力にマッピングがあるので地図は頭の中へ自動的に作成されて行くので迷子にはならないよ

しばらく気の向くままに廊下を散策すると法則性に気が付いたよ

どの脇道も結局は蜘蛛の居た部屋から真っすぐ続く廊下に戻されるね

では真っすぐ続く廊下を直進が答えかな

意味も無く存在する脇道は何の為なんだろう


答えがわかったのは敢えて理由を探して入ったある脇道

廊下の先に倒れてる妙齢女性の姿

「大丈夫ですか!」

ケンプファーが駆け寄ろうとする

あ~あ又もかいな

横を走り抜けようとする瞬間にセレンは足を出し引掛けて転ばす

盛大に吹っ飛び地面に大の字で伏せるケンプファー

「あ・ん・た・馬鹿過ぎ!」

とケンプファーに叫びプイってするセレン

「困っている人を見付けたら助けるのが冒険者だろ!」

起き上がりセレンに詰め寄るケンプファー

「あのね私達が入る前は誰も入ってないの!人が居る訳ないの!なに脳筋やってんの!」

セレンが早口で捲し立ててケンプファーを睨みつける

その後ろで肩を落とし項垂れるメイレーン

泣きそうな小声で

「駄目だこりゃ・・・」

と呟く


銀級までは採取とか目の前の敵を倒す系の単純な依頼が多い

金級からはダンジョンとか少しトラップがある知恵の必要な依頼も出て来る

そして多くの地下迷宮は金級か白金級からしか解放されない場合が多い

その理由を体現してくれてるケンプファーだよ

脳筋で戦闘力頼みから脱せないでいるんだよね

多分だけど偶然に出会わなかっただけで他の脇道にも同じようなトラップが用意されていたんだね


魔法を禁止されている私は出来るだけ軽い力でダガーを女性の影に投げる

ダガーの刺さった影はゆっくり立ち上がり赤い目で私達を睨み付ける

仕留めずに起こすだけに成功だね

「死鬼だねぇ~」

七海が呑気に解説をしてくれるよ

ここからは一瞬だった

人外の跳躍力で私達に向かい来る死鬼にメイレーンが火球で牽制をして美香の方に追い込む

脚部強化で死鬼に跳躍をし一気に間合いを詰めた美香が死鬼を袈裟斬りにする

二人の息が凄い合ってるね


「タイミング最高だよメイレーン!」

美香がメイレーンのヘアセットを崩さないようにナデナデしてる

今までの色々を一時的にも忘れようと美香のナデナデに身を預けるメイレーンだし

そして・・・ああ・・・鬼の形相でケンプファーを睨むセレン

もう何が何だかわからないよ!

「これは流れに任すしかないよ想定とか出来るレベルじゃないからね」

七海が私の耳元で囁くはまではいいんだけど

囁き終わった後に耳を一瞬だけど甘噛みは駄目!腰が砕ける・・・

さりげなく私を支える七海

「すまない可愛すぎてつい」

又も小声で囁かれるけど確信犯だよね


では答えは蜘蛛の部屋から真っすぐ廊下を進めばよかったかと言えばなんだけど

その廊下に脇道から戻ろうとした時に感じた気配

ってマジかぁ!

コイツらがいるなら憎しみの泉は必ず地下迷宮には存在するよ

物語には書いてないけど私の記憶にはあるのコイツらは存在するのに大量魔力を必要とするから憎しみの泉は必須になるんだよ

何せ死して肉も内臓も無しに骨だけで動ける存在って魔力しか動かす力は無いよね

そして憎しみの泉があるのであれば定期的に倒したはずのモンスターが無限供給される魔力で設定された場所に復活して地下迷宮が冒険者達の探索対象として続く理由も納得だよ

いくら狩っても復活しちゃうのでは完全攻略は泉の破壊以外は無いよね


カチャとかガシャとか騒がしい音を立て数十体が近づいて来る

だって肉がないから骨の擦れる音とか当たる音が響き回るんだよ廊下に

スケルトン・・・骨だけになった人で粗末な装備で襲って来る下級モンスター

まあファンタジー物の定番モンスターだけどさ

私の記憶だけにある物語では少し解釈を変えてコイツらって最低でも主要な骨を砕くダメージを入れないとバラバラになっても何回でもパズルを組み立てて復活してくる厄介な奴になってるの!

すでに骨なので炎では燃えないので滅びない

凍らしても骨ですから何かな感じでノーダメ


「これは俺らの見せ場だ!サイ行くぞ」

って又もケンプファーとサイが突撃する

知識だけなら物理攻撃が有効なスケルトン戦で筋力馬鹿が優位な戦に感じるけどさ駄目だよ

もうメイレーンもセレンも二人にこの先の絶望しか感じてないオーラだよ

ケンプファーの打ち込みもサイの打ち込みもスケルトンの骨を弾き飛ばすだけで砕く事は出来ない

糸で釣られ宙に浮く風船を棒切れで叩いて割るのがどれだけ難しいか考えれば想像は付くよね

骨が弾け飛ぶ速度より上回る速度で攻撃が入らない限りは骨は弾けるだけで砕けることなくノーダメなんだよ


「二人の回収をお願いしていいかな美香」

メイレーンが美香に頼む

「ほーい!」

と二人の戦いを見て対応方法を理解した美香がスケルトンの群れに斬り込み背骨や骨盤の組み立て直してもスケルトンが動けない主要な部分を砕きながらスケルトンを斬り二人に追いつき両脇に抱えると脇道に転がり込む

「セレン!」

「氷嵐!」

凍り付くスケルトン達だけど融ければ意味が無い

「火嵐!」

なるほど!決めたね二人で!

氷嵐で極限まで低温化した骨が火嵐で一気に熱せられることで熱膨張に耐えられない骨が砕けスケルトン達は粉々に吹き飛んだよ


脇道のモンスターを処理しても憎しみの泉がある限りは一定時間で復活するので無視して蜘蛛の部屋から続く通路を進む

この通路の守りはスケルトン達だけだったみたいで次のモンスターに出会わないね

しかし先史代は憎しみの泉を守る為にこんな面倒な物を作ったんだろう

えっ設定したの私じゃないかって!

ってそこまでまだ背景を作り込んでなくファンタージ―には迷宮だよねだけの考えだったんだよ

とりあえず泉を見付ければ答えはわかるかもね

と目の前に事に集中するよ


廊下は少し幅が広くなり天井が高い小部屋になり金属製両開きの扉がある場所で終わる

この展開はわかります

扉を開くと階層ボスが居て倒すと下階層への階段とか転移魔法陣が出現するんでしょ

って実は記憶の物語に地下迷宮内の描写は少ないので私の記憶を利用してるなら他の私が見たファンタジー物作品から補完で設定流用になってるはずだからね

扉を開け次の部屋の中に入り背後で扉が閉じた瞬間

足元の床に違和感が生まれる

警戒してたメイレーンとセレンに美香は感触の異常を感じた瞬間に床を蹴り左に力の限り飛ぶ

扉前の床数メートル四方が両開きで開き床下に落ち穴になっていく

七海と私も右に飛ぶが・・・あっ・・・

完全に油断してたケンプファーとサイが動けないでいる

もう少し床が開くと二人は何かヤバイ事になるだけはわかるよ


私は少し重心を下に移動して穴右側の壁を蹴り左上方向に再度跳躍する

穴が完全に開き自由落下を始める二人に少し下の角度から空中タックルをして二人を左側に持ち上げる様に弾け飛ばす

運動エネルギーを完全に二人へ移したので私は垂直落下を始めます

視界の隅ではメイレーンとセレンが穴の縁で二人の腕を掴み引き上げてる

頭を下に落下してるので私の運命はわかったけど

こんな古典的なトラップを先史代は作るのかいな

五メータ位下の底は剣山のようになってるよ

このままでは全身串刺しの即死です

飛行で回避というチートも出来るけど

「金乃剣よ」

床にある針の先端に剣の先端を当て落下を止める

針の先端と剣の先端を支点に剣を伸ばした右腕で持ち倒立状態でバランスをとる私


上から声が聞こえる

「おーい大丈夫か?」

全く心配感がない七海の声

「なんか彩美ちゃん面白そうなことやってる」

呑気な美香の声

あのねえコノ状態を見て呑気過ぎませんか御二人

バランスを崩さない様に右腕を曲げてから伸ばす反動で跳躍をして七海の横に着地する

「おかえり」

”ただいま”

何か七海のボケに対抗しようとしたけど穴の逆側で繰り広げられてる光景で萎えちゃったよ


座り込む二人に仁王立ちで見下ろすメイレーンとセレン

セレンが何か言おうとしたけど先に落ち着きを取り戻したメイレーンが肩に手を置くと何も言わず肩を落とし悲しそうな表情になる

同じように肩を落とし悲しそうなメイレーンと二人で私の元へ来る

「本当に二人を助けて頂いてありがとうございました」

セレンがお辞儀をしながら感謝を伝えてくれた

「本当にすいません・・・もう言葉も出なくて・・・」

悲しそうにメイレーンが呟く

”気にしないで”

ビタンビタンと足音が部屋の奥から近づいて来る気配がする

”さて気合を入れ直して第一階層のボス戦だよ!”


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