第23話~お礼~

”魔法物理結界”

テラスを囲むように薄い紫色のガラスみたいな幅一メートル位の六角形が組み合わさって覆われていく

壁際に並んだ案山子の一体に右手を伸ばす

右腕に矢だけをイメージして魔力は込めない

腕にある無意識に生まれる微量の魔力だけで魔法の発動をする

ルシファーと同じサイズ程度の矢が数本現れる

「魔矢」

案山子に向かって飛んだ矢は案山子を貫通して結界に当たり砕け散り消える


ふー弱めるというか魔力を意識して使わないならなんとかなるか

でも少しだけ強めたいとかの時はどうすればいいのか

少し閃いたけど失敗したらで魔防壁をすぐに出せる心構えだけはしておかないとね

先に腕に可能な限り絞って魔力を込める

右腕に矢だけをイメージして魔力は込めない

初回の太い矢が腕を覆うように十数本現れる

一呼吸待つと本数が減り矢が細くなって行く

時間の経過と共に少しずつ細くなり本数が減って行く

二秒くらいで半分くらいの太さと本数になる

「魔矢」

案山子はバラバラになったが無散せず矢も結界に当たり砕けて跳ね返ってきたが私に届くまでに消えて行く


できた!と単純には喜べないけど

先に魔力を込め自然発散で減って行く途中の丁度いい魔力残量で解き放てばある程度自由なパワーで発動出来そうだけど戦闘中とかに調整を上手く出来るかだね


パチパチパチ

「しかし無意識に放出しているレベルの魔力で魔矢を発動させてしまうとは驚きですよ」

”無敵チートが仇になるとは想定外だったけど何とかなるかな”

「二回目はどうされたのですか」

”先に微量の魔力を腕に込めて発動をさせて放出され腕の魔力が減って行く途中で打ち出した感じかな”

「普通と逆ですね発動後に集中して魔力を高めて魔法を強化はしますが発散を使って弱めるなんて聞いた事ない方法です」

”まあ問題は戦闘中に発散する時間を確保出来るかだね”

「通常は前衛にアタッカーとタンクが入り魔法を発動させる時間を確保するのですが彩美の前衛出来る人材はそうそうに居そうもありませんしね」

”まあ練習すれば移動しながらとか発動とかも出来るようになると思うので自分の脚を使うしかないかな”

「その前に魔法を使わなくてもほとんどの戦闘は終るかと思いますが」


そう数日前に剣の実力を見るためルシファーと車椅子に乗ってだけど軽く刃合わせしたら私の軽いと思った一撃で剣はルシファーの手から跳ね飛んでルシファーも数メーター吹き飛んじゃったんだよね

あの時は「もう少し手加減をお願いします」って怒られたよね

でもあれって紙も切れないレベルでしか力入れてなかったと伝えたら「無敵チート過ぎます」って呆れられたね

ルシファーが剣で打ち負けたのは人生初で少し落ち込んでたのが可愛いかったあ


「結界解除」

ルシファーが車椅子を押して部屋に戻る

失礼します

狭霧が押し車を押して入って来る

もう驚きません押し車を持ち上げて階段を上がって来ても

十数個の牡蠣に似た貝殻に身が乗った状態で湯気を上げている

横には四合瓶サイズのデキャンタとグラスがある

「白酒に当ては貝の酒蒸しになります」

押し車を車椅子に座った私とルシファーの椅子の間に配置すると狭霧は部屋を出て行く


”これは牡蠣かな”

「こちらでは白岩貝と呼ばれています」

”確かに白い岩にも見えなくないね”

ルシファーがグラスに酒を注いで渡してくれる

軽く乾杯して一口まあ度数は覚悟してたから味を楽しめるね

今度は白岩貝を殻から口の中に流し込む

プリントした身の感触に磯野の香りと酒の香りが身の塩味と相まって美味しい

”美味しい”

すぐに酒を口に含むとさらに美味さが増す

「以前に寿司で生魚を食べる風習がないとで悲しまれたとのことでしたので出来る限り生に近い感じの料理を選んでみました」

”これはガイアにも同じ料理があって味もほとんど同じというかメネシスの方が身の味が格段に濃いので虜になるかも”

「この貝は比較的流通量が多く闇の国でも水揚げがありますので御希望いただけれ通年で御準備できますよ」

”それはうれしいね”

「では昨晩のお話の続きをお聞かせ頂ければと」

”結婚式がスタートからだったかな”

「はい」


美香は三月に入ったらと言っていたが正確には二月二十八日が卒業式の練習で三月一日が卒業式かあ

本当に今日が実質的な高校生活最終日とはね


朝起きると寝た時と同じ姿でベッドの端と端で真ん中で美香と手を繋いだ姿で寝ていた

二人とも寝返りもせずにピシッと寝てたとか奇跡なような状況だよね

ベッドから出るのに美香の手を離す

それに気が付いたのか美香も目覚める

「おっ美香ちゃんのナイスボディー魅力に負けなかった偉い偉い」

って寝起きからアクセル全開だねえ

”手・・・ありがとう・・・温かくて・・・すごくリラックスして寝れたよ”

顔が赤らむ美香だよ

「彩美ちゃんの役に立てたならうれしいよ」

なんか照れ隠しに感じるのは私の自意識過剰かな


G君に頂いたチキンサンドで朝御飯を済ますと着替えメイクして学校へ

昨日と同じで学校少し手前で美香が先に行き普段の登校を装う

教室に入ると梶原を見付け近づく

「おはよう彩美ちゃん」

”おはよう梶原くん今日の放課後だけど稽古お願い出来るかな”

「おっいいぜ!そうだよな今日を逃すと卒業まで出来る日も少ないしね放課後に道場で待ってるよ」

”ありがとう”


本当は放課後すぐに七海の面会に行きたいけど今日を逃すとタイミングが難しいから

授業中に美香とショートメッセージのやり取り

”今日の放課後だけど梶原に柔道の稽古をつけてもらうんで一時間位かな”

「らじゃー」

”先行ってる?”

「タカちゃんの店で待ってるよ」

”オッケー!”

美香は私が何をしたいか気が付いてるね

全く察しの良い子は何とかだね


四時限目の終わりを告げる鐘がなる

いつもと同じ学食で皆んなとの昼食

これも今日が最後かと思うと少し寂しいな

食後に少し雑談をしてると

「なあ卒業式のあとだけど皆んなでどっか行かないか?」

「いいわね!」

「昼休みも終わっちゃうので何にするかは後でグループメッセージで相談しよう」

まさに青春いいねえ


六時限目が終わるといつでも稽古を付けて貰えるように洗ってロッカーに置いておいた柔道着を持って道場へ向かう

クラスを出る時に美香とすれ違ったらウインクですとお

ちょっと誰かが気が付いたらあ

と思いつつウインクで返してしまったよ


着替えて道場に着くと準備運動が始まる直前だった

柔道部員達から少し離れた場所で一緒に準備運動をして体を柔らかくする

準備運動が終わると梶原がやってきて

「よし乱取りで前回までの復習するか」

”お願いします”

正直に梶原は全力の数%も出してないよ

投げる時とかは私が受け身を自然に取れるようにして体に受け身を覚えさせてくれてる

私が投げを掛けると自分から飛び力を入れるタイミングと方向を教ええるように飛ぶ

五分十本の乱取りをしたら私は完全に体力切れで大の字で畳にひっくり返ったまま起き上がれない


梶原が起こしてくれたので畳の外にある休息スペースへ

部員飲み放題で準備されてるスポーツドリンクのペットボトルを梶原が渡してくれる

”ありがとう”

ペットボトルを開け半分位一気に飲む

「正直驚いたよ最初は三本も持たなかったのがセットの十本出来る様になるとは」

”ギリギリだけど梶原くんが上手くアシストしてくれるから”

「まあ愛の力にはかなわないな」

”柔道は力だけじゃないって梶原くんに聞いた時にもしかして私でもなんて考えちゃって”

「筋はいいぞ!思い出すのは嫌だと思うが松原程度なら余裕で蹴散らせるレベルになってるしな」

”えっ”

「流石に俺とは体重差が倍近いから今の技術では力がないと厳しいけど勘が良いタイミングと持ち前のスピードを上手く使えれば将来は体力勝負にならない短時間であれば十分互角になる可能性を秘めてるよ彩美ちゃんは」

”そんな私が!?”

「でなきゃ先生も部長も練習の参加を認めないよココは遊びの部活じゃないからな」

”なんか信じられないよ”

「最初に稽古に来て帰った後に皆んな何か格闘技してたのかなって勘違いするくらい筋が良かったってことだ」


”ありがとう・・・そして夏もありがとう”

「知ってたのか」

”うん”

「彩美ちゃんと美香ちゃんの仲なら仕方ないか」

”感謝されたくてやってる訳じゃないからお礼はいらないって聞いていたけど駄目なのそれじゃちゃんとお礼しないと”

「彩美・・・ちゃん」

”七海が動いてくれたのは徳さんの依頼だったからだけじゃないの・・・友達がこんなに必死に探す人は何者だろうって思い美香ちゃんや梶原くんが必死に探す姿に心動いて協力してくれて私は帰れたの絶対にお礼しないなんて出来ないよ”

「俺らは花園大学の柔道部が決まってるから時間ある時はいつでもいいから稽古においで」

「本当にありがとう」

軽く涙目だよ


更衣室を借りて制服に着替え軽くメイクを直して部屋を出ると梶原が待っていた

「稽古もだけどカラオケとかも遊んでくれよ二十歳になったらお店も行きたいしね」

”うん!楽しみだよ!”

なんか分からないけどあまりに梶原が愛おしくて頬へ反射的にキスしてしまった

あっやばあああああぁやらかしたぁ!

梶原の顔が真っ赤になる

「最高のお礼を貰ったよ」

えっ

「体の性別なんて関係無いさ愛する人のために全力で頑張る姿は美しくて綺麗で愛おしいくらい乙女でさ彩美ちゃんは柔道部員のアイドルなんだよ」

”照れるな本当にありがとう!稽古とカラオケ楽しみにしてるよ!”

「おう!」


梶原と別れタカちゃん店まで小走りで目指す

ドアの窓越しに美香が見える

店内に入ると

タカちゃん涙目になって

「彩美ちゃん」

”ありがとうタカちゃん私は大丈夫!七海も絶対に大丈夫!”

「何でも力になれる事があったら言ってね」

”じゃあ稽古で疲れがピークなんで血糖値上がるの何かください!”

「はは!了解!」


「ちゃんと伝えられたみたいだね」

”うん”

反射的に頬にキスしたことを伝えたら

「そりゃ梶原くんが真っ赤になるよ」

”えっなんで”

「うーん表現が難しいけど男子生徒からも性対象とか関係なく本当にアイドルになってるからね」

”なんじゃそれ!?”

「きっと水の世界に足を踏み入れて性別を通り越して人を惹き付ける何かを手にいれたんじゃないかな」

「はい特性デコのチーズケーキだよ」


チーズケーキは大量の生クリームと細かく刻まれたフルーツ山盛りで上からチョコソースがかかってるよ

カロリーの塊!

ダイエット中なら回れ右だけど今の私は体の芯から欲してるよ

「あとアイスチャイね!これも糖分多いので血糖値あがるよ」

「「いただきまーす!」」

うぅ~糖分が体に回って体力が充電されていくよ


「さっきの話を聞いててだけど彩美ちゃんはオーラがあるんだよ」

”オーラって”

「七海さんも持ってるけど人を惹き付ける魔力かな」

魔力・・・何か違う魔力なら出来そうな気が・・・あの石畳の部屋に招かれてから・・・なんか色々と変な考えが・・・

って招かれたって夢だよね・・・「ここは現実でもなく夢でもない」・・・夢でない・・・


”タカちゃん美味しかったぁ!元気百倍!感謝だよ!”

「何か困ったら連絡してね」

御会計をして店を出てマンションに向かう

「魔力って!彩美ちゃんも魔乙女組だったのね」

美香の軽口が気持ちを軽くしてくれる


マンションに着くと着替えて荷物を準備する

なんと特別室フロアーにはシャワールームも!!って予想してましたよ

なので明日から学校がないので着替えを持って行けば数日は七海と一緒に居れるしね

まあ無駄な御都合主義で私達用の簡易ベッドも依頼すれば準備出来るとか昨晩に戻ってから特別室入院マニュアルみて驚いたりでね

他にも色々と驚くサービスで逃げ込んだ政治家や芸能人が何ヶ月も引き籠れる訳だよね


マンションからタクシーで病院へ

カードを使って病室へ

ドアを開けると七海!七海!七海!ベッドに駆け寄り頭を抱きしめる

えっ酸素マスクが取れてる

壁にある画面の体温を見ると三十八度まで下がってる

呼吸も安定してるからマスク取れたのか回復してるね

・・・「大丈夫だから七海は数日で熱も下がり回復する」

今日で三日目だから数日なら後一~二日だよね

あれはやっぱし夢じゃなかったの


美香は持って来た荷物を備え付けの棚に仕舞ったりとコッチを見ないようにしてくれている

感謝!

七海の唇に唇を重ねる

酸素吸入とかでいつもの柔らかい滑らかな感覚と違い荒れてガサガサだよでもでもコノ感触は七海だよ

唇を離し七海の顔をもう一度見る

少し痩せちゃったね

でも顔色はかなりよくなったね頑張ったね

耳元に寄って囁く

“愛してるよ七海“


横にいる美香に場所を譲ってソファーに行く

「ねーさん今晩は」

美香は七海の手を取り心の中で話している

ソファーに戻ると鞄の中から化粧ポーチを取り出す

今日は夜はメイクダウンしてスッピンになるからリップクリームーも持ってきてたね

普段だとグロスしか入れてないからラッキーだよ

美香がベッドから離れたので七海の元に戻りリップクリームを塗る

目が覚めるまでに荒れが治るといいなあ

このままじゃ痛そうなんだよね


ソーファーに戻ると

「リップクリーム持って来てるとか私より女子力高いね」

“スッピンになると私も七海も乾きやすいんで必須なんだよね“

今度は鞄の中からタバコを取りだし火をつける

美香もタバコを吸い始める

“熱がかなり下がって顔色良くなってきたので少し安心だよ“

「早く彩美に会いたくて ねーさん頑張ってるね」

“本当に一昨日の夜は完全にパニックなったよ四十一度超えとか聞いたこともない体温で“

「私知らなかったけど四十二度超えると死んじゃうって彩美ちゃんがあんなに取り乱したのも今ならわかるよ」

“弱すぎなんだよ私 本当は七海を信じて学校優先で考えなきゃダメだったのにさ“


タバコを吸い終えベッドサイドの椅子に座ると七海の手を握り顔を見る

早く帰って来て

でも無理はしないでね何時迄も待ってるから

一時間位そのまま手を握って顔を見ていたら

「さて腹が減っては戦は出来ぬ!晩御飯どうする?デリバリー?食べに行く?」

“ちょっと考えるね“

特別室は新宿の有名店のデリバリーを色々と取り寄せも出来るけど病室にこもったままも気分的には滅入るよね七海も危機は脱した感じだし少し離れるのは大丈夫だよね


二人とも七海直伝の少し年上に見えるメイクをして服も大人っぽいのを準備してるので深夜にならなければ歌舞伎町なら大丈夫だと思うけど

飲み屋さんは色々知ってるけど飯屋は弱いんだよなあ

同伴とかアフターで行く店ってかなり固定化されちゃってるし

焼肉は七海が全快祝いに絶対行きたいって言うと思うし

顔の通ってない普通の居酒屋は年齢確認される可能性もあるし

悩ましい


色々考えてると美香が缶ビールを持って来てくれたよ

「お店悩んでるの?」

“うん色々知ってると思ってたら意外に七海が一緒じゃないとって場所が多くてね“

静かに缶を軽く当てて乾杯

「年齢確認されたら面倒だもんね」

”そうなんだよ七海が一緒ならまずされる事ないけど”

「難しいならデリバリーでもいいよ」

”あったぁ!T’sキッチン!”


大久保公園から新宿駅方向に少し歩いて花道通りに出たら区役所方向に向かってトー横の裏辺りにあるホストビルの地下にT’sキッチンはあるよ

ドアを開けると右側にカウンターが八席で左側に四人掛けテーブル席が三組

カウンターの内側には割烹着姿のたっちゃんが居る

「いらっしゃい彩美ちゃん」

”カウンターでいいかな?”

「好きなとこでいいよ」

私のお気に入りは入口近くの一番手前のカウンター席

何時もはここに七海と並んでだけど今日は美香とだね

”今日のおすすめなーに?”

「鰤のいいのが入ったんで鰤シャブがおすすめだよ」

”飲み物は久保田を冷で美香はどうする?”

「彩美ちゃんと同じで」


”何か食べたいのある?”

メニューを見て悩む美香

「ミョウガの天婦羅」

渋いねえ

”じゃあミョウガの天婦羅と出汁巻き卵に焼き牡蠣二個と鰤シャブで”

「あいよー七海さんが一緒じゃないって珍しいね」

”七海はちょっと過労で熱が出ちゃって入院しちゃってる”

「えっ」

”順調に回復してるから面会帰りに私達も少し息抜きでね”

「ゆっくり休んでいっぱい食べてってね」

”ありがとうございます”


女性がガスコンロを持ってくる

”由香ちゃんありがとう”

由香ちゃん・・・実は店員でなく店が好き過ぎて飲みに来てる時に手伝える事があると動いちゃうお客さんとか最初は店員さんと勘違いしてたよ

網に乗った大き目の牡蠣が二個出てくる

牡蠣が焼けるまでミョウガの天婦羅と出汁巻き卵を楽しんで

殻が開いたらシンプルに牡蠣は醤油を少しだけ入れて口に流し込む

プリンとした身を楽しんだら殻に残った磯の香りが凝縮されたスープを楽しむ

網が下げられて出汁の張られた小鍋がガスコンロにセットされる


この店の出汁は全てたっちゃんがキッチリ取ってるのでメチャおいしいんだよ

少し厚めの鰤刺身と白菜に椎茸が出される

白菜と椎茸を先に入れて出汁が再沸騰したら鰤をシャブシャブ

表面が全体的に白くなったら引き上げてポン酢でね

うん脂が乗ってて美味しいシャブシャブしたので温まって脂が溶け出すので刺身より楽しいよ

「これ美味しい!日本酒との相性も最高!」

どんどん酒飲みの見本に仕上がっていくなあ美香

〆に白米をいれて一煮立ちしたら醤油で味を整え卵を回し入れてネギを散らせば雑炊が完成

手間をかけた出汁とシャブシャブした鰤から出た脂が最高だね

美香は無言で三杯も食べてるよ・・・ご飯を多めにしてもらって成功だよ


ふ~お腹いっぱいだね

病院への帰りにコンビニで夜食のプリンと朝御飯のサンドイッチを買って帰ったよ

病室に戻ると部屋の照明が抑えめにされ七海のベッドの横に簡易ベッドが二個並べて置かれていた

七海の枕元に行き顔を見る

まだ少し赤いけど普段見る寝顔で安心だよ

唇に指を当てるとさっきより柔らかくなってたのでよかったあ

もう一度リップクリームを塗っておこうね


ミニキッチンにあったジャックの瓶とグラスを持ってソファーへ

グラスを掲げて乾杯してジャックを飲む

美香と一緒に紫煙を巡らして一息つく

「体温三十七度まで下がってるよ」

”もう熱は納まったかな明日には目を覚ましてくれると信じるよ”


それから交代でシャワーを浴びる

トイレと思っていた扉の内側は洗面室になっていてトイレとシャワーブースの扉があるスペースだったんだよね

浴槽は予約して使える個室風呂があるけど数日ならシャワーだけで十分だね

さて時間も日付が変わりそうなので寝る事に

なんせ八時には回診が来るから七時前には起きて身支度しておかないとだしね

七海のベッド側の簡易ベッドに私が寝る

美香は疲れていたのかすぐに寝息が聞こえてくる

昨晩・・・やっぱし熟睡できなかったのかな・・・


七海の手を握りたいけど簡易ベッドが低くて手が届かない

静かにベッドを出て七海に向かって簡易ベッドに座る

暗がりでもほのかに輝いて見える玉のような白い肌の永遠に見飽きない美しい七海の顔を見ながら手を握る

我慢出来ずに七海の手に頬を寄せる

スベスベで温かい手の感触が頬に気持ちいい

温もりに身を任せていたら・・・意識が闇に落ちて行く・・・

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