第2話~水商売の世界~

ああ。あれから何があったっけ?

からぁ何でこの部屋にいる

でぇ胸は爆乳でアソコはソレなの

思わず抱きしめる自分の両肩だけどコレも細くなってないか


窓の外が薄暗くなり始めて暖炉の炎に反射するように鏡状になる窓

そこに写る私は私であって私でない

”これってぇ異世界転生したらぁ女装癖の変態が純女になってましたぁ!(異世界は私の考えた空想世界でした)”

とかのタイトルなんですかぁレベルで私の特徴を残して女なんです


起き上がろうとしても何か怠くてすぐにベッドに倒れ込む

もうさぁ何が何だか!

てぇレベルの体調悪さ


ガチャ

ってぇ多分外に繋がってるドアが開く

って知ってるよその扉は王宮の廊下に繋がってる

「おや意識が戻ったか」

クリスタルを溶かして声にしたらぁきっとこんな声なんだろうなぁ

「創造主よ」

”はい!?”

「少し硬いか主様でよいか」

”その私は彩美!彩美でいいよ!”

「その反応は現状を理解してるでいいのかな?」

黒髪豊かな絶世の美女。額から伸び出る二つの角を除けば

”貴方の名前はルシファー様で「闇の国」王妃でぇこの部屋は愛娘の「まどか様」の部屋でぇ”

「やはり主様なんですね」

”だからぁそんな偉そうな呼び方でなく「彩美」って呼んでぇ”

「では彩美も私をルシファー様でなくルシファーって呼ぶのでいいのではないか」

あっそうね

”ここは闇の国なのかルシファー?”

「はい信じられないと思いますが彩美が空想していた世界は時を遡り現実になって存在してるのです」

だけど何が何?

「私達の歴史を彩美が感じて物語にしたのか」

うんうん

「彩美が作り出した空想世界が現実になったのか分かりません」

何それぇ

「でも彩美は私達を現実にして命を与えてくれただけは間違いないのです」

”それってぇ「まどか」の言葉・・・”

「やはり彩美は主様なんですね」

そんな確証って思うけどそうなんだとしか今の私には解釈できない


無事高校に復学してからはあの日からの惨めな思い出が凄い勢いで薄くなって行く勢いで幸せだった

久々にそれも謎の交渉結果にて女制服で超緊張して登校すると

「おはよぉ彩美ちゃん」

”おはよぉ!美香ちゃん”

とクラスメイトや先生達はこの女制服姿になんの違和感もなく休学していたことも触れずに普通に接してくれた

なんともない普通の学校生活の一日が過ぎて行く

前と違ったのは弁当じゃなく

「ごめん!初日から寝坊しちゃった学食で今日はお願い」

とナナミからお昼代をもらって学食で昼を初めて食べたことくらいかな

お昼にいつもの感じで鞄を開いて弁当がないと気が付いた瞬間は少し哀愁を感じたけど

鞄から財布を取り出し席を立つ

「彩美ぃ今日は学食なの?」

”うん”

「じゃ一緒に行こう!」

と美香に手を引かれ学食に

・・・・・・・・・・

「あっ彩美は学食初めてだよね」

”うん”

「じゃ食券の買い方とか教えてあげるね」

”ありがとう”

と食券を買うのは少し悩んだけど

メニューがこんなに多いなんてね

食券を引き換えて他のクラスメイトが既に着席してるテーブルに案内される

「いただきま~す」

悩んだ結果のメニューはカルボナーラセット

カルボナーラと小さいサラダとカップスープ

本当に特長もない普通の味だったけど温かいってだけで幸せ

うっやばい涙こらえて味が分からなくなるけど幸せ


「じゃあまた明日ねぇ」

改札に向かいながら手を振ってる美香

前は一緒に電車だったけど今日からはナナミの家なんで徒歩帰宅だしね

あれ美香っていつも私と一緒にいてくれる

ナナミからも「美香って子が中心で捜索情報集めてた」って話だった

思わず改札手前の美香に向かって駆けだしてる私

「どうしたの彩美?」

思わず美香をハグして

ありがとうって言いたいのに嗚咽と涙しかでない

「帰ってきてくれてありがとう」

”うん”

「ほら涙拭いて」

とハンカチを差し出す美香

ありがとう

ハグをほどいて美香に向かいあうとハンカチを受け取り涙を拭いてると

「色々あったみたいだけど彩美は私の最高な友なんだから今度は私が助ける番だから」

涙を拭き終えハンカチを返すと美香は手を振りながら改札の人混みに消えていった


今度は私が助ける番だから・・・

入学した時の美香は人見知りでいつもクラスルームの隅に一人でいた

私は事ある事に美香に話しかけ輪に誘っていたっけ

そこから美香の人見知りは少しずつ消えて行き今では輪の中心に居る事も多くなってるし

ってまさか

こんな普通のことで・・・


考え事を少ししながら歩いていたらナナミのマンションに到着いや帰宅でいいのかな

預かった鍵でオートロックを開けエレベータに乗り部屋前に到着

部屋の鍵がガチャリって開く

あとはドアバーを押して扉を開けて部屋の中に入れば

って何こんな事で心臓バクバクの緊張してるの私


えい!

思い切ってドアを開けて部屋の中に

ナナミの靴が並んでるってことはナナミはまだ家にいるのかな

まだバクバクする心臓を抑えながら玄関とリビングを繋ぐドアを開ける

「お帰り彩美」

心地よい低音でいて耳に響く声が出迎えてくれる

”ただいまナナミ”

「学校どうだった」

”なんていうか普通だった”

「それはよかった」

ソファーで読んでいた雑誌をサイドテーブルに置いてナナミが立ち上がりこちらに向かってくる

バッチリメイクで両肩が出たオフショルのロングドレス

ああ綺麗・・・思わず見惚れてしまうよ

ナナミは私の前まで歩いてきて

「何堅まってるのよココは彩美の家なんだから」

その瞬間抱きしめられて・・・お互い自然に唇を重ねた

全身の力が抜けて崩れそうになる膝をナナミのハグで支えられている

「おつかれ!おつかれ!まあいきなり色々で疲れてるよね」

大丈夫だよ私いま幸せすぎて

ソファーに手びかれ座らされる

ナナミはキッチンにいくとグラスを二つ持って戻ってきた

「はい!祝杯!でいいのかな」

グラスを受け取ると

「かんぱーい!」

反射的にグラスを傾けると予想通りジャックダニエルのストレート

覚悟してたから咽ないぞ

”ごほ!”

あっ無理

「ふふふふ」

最上な鈴の音のように気持ちよい笑い声

”でも美味しいよコレ”

喉が焼ける感覚に耐えながら少しいがら声の私

「まあ慣れよ慣れ」

”こういうお酒をスマートに飲めるのあこがれるなぁ”

「少しづつ無理せずにね」

”はい”

ゆっくりグラスを傾けながらナナミの肩に頭を預けて少しだけ休息

ナナミは読みかけの雑誌を手に取り続きを読み始める


15分くらいゆっくりしたかな

「ごめん18時そろそろお店に行かないと」

反射的に横に座ってるナナミに抱き着き胸に顔をうずめてしまう

やさしく髪を撫でてくれるナナミの手

温かい・・・

そっと胸から顔を話して出来るだけの笑みでナナミをみつめる

”ごめん仕事の邪魔しちゃ駄目だよね”

「まだ一人は怖い?」

”・・・うん”

「じゃぁ出勤しちゃおう!」

へっ!?

「本当は学校に影響しない週末だけお願いする予定だったの」

”って!私は未成年なのにいいの!”

論点がズレて行く気がするけど

「知ってるよ書類見ちゃった時に学生書に書いてあった3月15日の早生まれでまだ17歳だったよね」

”知っててか~い!”

「まあこの街ではなんでもないことだからさ」

”うん。ナナミに迷惑かからないならお店行く”

「でも今晩だけ特別だよ明日からは翌日学校の日はダメだからね」

”ありがとう”

ありがとう今晩を乗り切ればきっと私は大丈夫・・・宛てもなく街を彷徨っていた日々で強くなってるはずだから・・・


「じゃあメイク直して服選んでくるから」

”はーい!」

ナナミのメイクテーブルを借りて登校前にして少し崩れてきたメイクを直す

「ちょっと普通過ぎるかな」

ナナミがメイクに手を加えてくれる

数分後・・・

「はいで来た!う~ん元がいいから美人だぁ」

鏡をみるとソコには大人の私がいたメイクだけでこんなに変わるなんて

「はい今日はスーツね」

がさごそと私が着替え始めるとナナミはスマホを取り出し何処かへ電話を始める

「あっマキぃごめん少し遅れるからオープン準備よろしく」

「・・・・・・・」

「そうそう」

「・・・・・・・」

「あと琴音ちゃんまだいる?」

「・・・・・・・」

「一人お願いしたいから小遣い奮発するからって少し待たしといて」

「・・・・・・・」

「じゃよろしく!」

ちょうど着替え終わった私

「おっサイズ丁度よかったかな可愛い」

濃い赤のジャケットに胸元が開いたシャツいい具合の開襟でデコルテは見えるけどパッドは隠せる

と少し恥ずかしいお尻隠れてるかなってジャケットと同色のタイトミニスカート

「街中では少し目立つけどお店ではこれくらいじゃないとね」

”・・・・・・”

「まあ新宿じゃ街中でも大人しい仕上がりだから大丈夫この街は少しかわってるからね」

クロスのペンダントとか少しアクセを渡されコーデ仕上げに着ける

「さ!行こう」


「すごい!その高さのヒールで普通に歩けるんだ」

”高いヒールは足が長く見えるんで大好きだったの”

ジャケットに近い色の10cmくらいヒールで出勤中

ヒールが細いのでアスファルトの凹凸で少し気を使うけどなんとか普通に歩ける限界かな


タクシーを捕まえて数分で二丁目のお店に到着

「おっはよぉ!」

ナナミが元気よく挨拶しながら入店

まだオープン前なので明るい店内

テーブルにセットを準備する人

カウンターでガサゴソしている人色々と開店準備中

「ナナミ」

聞き覚えのある声が

「琴音ちゃん裏でまってますよ」

「ありがとうマキ」

あっこの前チーママって言われてた人だチーママと電話してたのか

「彩美バック行くよ」

バックルームに行くとドライヤーとかブラシとか整髪料を前にしたピンクと黒のレイヤーカラーなショートヘアの小柄な女性が鏡の前に

「ナナミさん待ってたよ」

見た目通り少し高めの可愛い声

「琴音ちゃん新人の彩美よろしく」

「ワンレンでスーツかぁわかった出来るOL風とかでいいかな」

鏡の前に座らされて髪のセットが始まった

「はい完成!こんな感じでいいかな私は美容師じゃないセット専門なんでハサミ使えないから少し不揃いだけどゴメンね」

肩長のセンター分けスト―レートワンレンな私

両サイドを内巻きにして小顔感

額上の分け目は持ち上げられて少し前に迫り出す感じの立体感

”うわぁ可愛い私!琴音さんありがとうございます”

「これが御仕事御仕事でも素材いいからセットしてて楽しかったよ」

「琴音ありがとう追加料金はマキに話してあるから」

「はい毎度です」

道具を片付けてバックルームを出て行く琴音さん

”琴音さんありがとうございます”

「御仕事御仕事!」


鏡に写る私は別人だった

ナナミが手を入れたメイクで幼さ残るファイスラインは陰影を駆使して大人の仕上がり

美琴さんのセットした髪型はナナミが用意してくれたスーツに合わせて大人のOL感ばっちし

「やっぱし元がいいとちょっと手を入れるだけで超絶美女ぉ~!」

ナナミがジャンプしてぇ空中泳いでないぃいw

私の前にナナミが

”あっ”

思いきりハグ

柔らかい暖かい気持ちいい

「惚れ度ぉ200%アップぅ~」

やばいナナミのテンションがなんかおかしい


「えっとコホン」

あっこの声はチーママ

「ナナミそろそろオープンよ」

「あっマキすまない彩美があまりに可愛すぎて」

えっとナナミのママとして威厳がぁ

「彩美ぃ気にしなくていいよココまでナナミが惚気るの初めてだけどナナミはとっても自分に素直なのよ私が大好きでチーママ受けてる理由の一つだから」

”そうなの”

なんか顔が赤らむ

「ってことでママと彩美もホールへよろしく」


ナナミとホールに戻るとキャスト10人位と黒服スタッフ3人がテーブルの隙間に並んで立っていた

私とナナミより少し前にバックを出たチーママも並び立つ列に入る

「さて朝礼をはじめるママよろしく」

チーママの声が店内に響く

「おはよう先週末に出勤してた皆はわかると思うが彩美だ」

何人か顔に覚えのある方々がうなづく

「彩美の逸材度は感じてくれていたみたいだが今日から非常勤キャストで入店してもらう新人指導をよろしく頼む」

なんかぁ視線が痛い気もするけど

「では今日も御客様が笑顔で帰り明日の活力になる一助として」

チーママの声が響く

ーお客様の明日の活力一助へ!-

すごい全員ハモるのぉ

「では開店!」

チーママの〆で朝礼は終わった


なんか数分だけどメチャつかれたよ

「紗季ぃ彩美をお願いしていいかな」

ナナミが私の肩に手を置きながら白髪ボブの子に話しかける

あっこの子はあの日の最初にテーブルについた子

顎ピアスがインパクトあったなぁ純女って思って可愛いって指名入れて二セット目でニューハーフって聞いて心臓飛び出しそうになったっけ

「はーいママ」

”紗季さん・・・よろしくお願いをいたします”

「何を固くなってんのよぉこの前みたいに元気にいこう!」

紗季さんに呼ばれて入口から死角になる入口横のボックス席に座らさせられる


「基本はココが待機席ね」

”待機席?”

「テーブルについてない時に待つ場所かな」

”今テーブルに居る方は”

「来店予約とか人気で開店後すぐ確実に指名来店あるキャストはテーブル待機って私はまだそこまで」

”えっ紗季さんでも”

「世の中はそんなに甘くないの」

”こんなに美人なのに”

「見た目だけでないのがコノ世界でね彩美はコノ席とはすぐにお別れ出来るから大丈夫だよ」

”えっなんで”

「私はトークがだめだめメンヘラNHだからさぁ」

”ええ”

「いいの私はご飯をお腹いっぱい食べれる毎日で満足してる業界NO1とかママとは・・・もう分かってるから」

そうか

これが新宿

綺麗とか可愛いだけじゃダメなんだ

って私は生きていけるのコノ世界で

「なに青い顔してるの」

えっ

「あなたは違う!レべ違い!チートって言いたくなるレべ差って本能でわかるから嫉妬も生まれないレベチなの」

なにそれ

「だからこの前にテーブルで営業もあったけど口説いた時に恋人は無理だけど友達って言ってくれた・・・それだけ・・・」

”紗季!ありがとう紗季とは紡いだ時間とか語り合った時間は少ないけど友達は間違いない”

「なにそれ」

”笑わないでね魂の共振を感じるって感覚が私のイメージで”

「あは!それ最高だねコチラこそよろしく」


紗季が私の緊張を解くアイスブレイクな会話をしてくれてる間にも多くの御客様が入店して席に座ていく

多くの席は予約来店とか見るからに予約はしてないけど来ることが普通な感じで待ってるキャストの席へ向かい埋まって行く


「彩美ちゃぁ~ん5番テーブルお願いしまぁ~す」

ボーイさんの声が・・・

「ほら彩美ぃ5番はアソコね最初はヘルプで気にいられたら指名って頑張れ!」

”えっヘルプって新人なのに最初に?”

「多くの御客様の趣味に合うかってで新人は優先で指名ない人がいる常連テーブルヘルプで呼ばれる指名獲得チートタイムなの頑張れ!」

そうなのかぁ奥が深い

”紗季さんありがとうございます”

「あっママが御客様横に着いてるから御客様の対面に座ってお酒作るのモードで開始ねぇ」

”は~い!行ってきまぁ~す”


”彩美でございます”

と挨拶しながら席をみるとぉ

そう・・・この5番テーブルだけは待機キャストがいないので不思議に思ってた

「彩美ぃ~初日初指名だよぉ」

まだヘルプも着いてないのに指名!?

で御客様の対面に着席して御客様をみるとぉ!!

横に座ったナナミの満面笑みとぉ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

えっと彩美は例外処理X204にてフリーズ

再起動しますか?

Yes/No

ってぇYesかNoってさぁ


”が、が、学園長ですよね”

確かに太い客って聞いていた記憶はあるけど

「ナナミから彩美が今日入るって連絡あったんでね一緒に飲める日を楽しみにしてたので」

えっ

「こんなに早く実現できるとかいいねぇ」

その未成年生徒が校則のアルバイト禁止とかあったりぃもう慣れそうで慣れれないパニックモード



落ち着け彩美

落ち着くんだ彩美

この数日に起きた事を考えれば

驚くより切り開け


「すまぬ浮世に現実を持ち込んで・・・ナナミ」

「いえ私がお願いしたのに準備不足で」

なんだろう

私が分かない領域で話が進んでるって事だけは分かる

「まあ彩美さぁ学校は心配するな明日の午前中は学校依頼イベント出席とかの理由で公休ってしとくから単位は大丈夫」

”は、はい!?”

もうメチャクチャだよこれ

「なんでぇ飲むぞぉ!」

って学園長ぉ私は未成年それもまだ18歳未満の建前成人でもなく子供枠

「お墨付きもでたので彩美ぃ飲むよぉ!」

酒を作るのが最初の仕事・・・だったよね・・・学園長がテーブル隅のグラス置き場からグラスを手に取りキープのジャックダニエルボトルから勢いよく注ぐ

キャスト用のミニタンブラーだけど2/3くらいってぇショットとかのレベルじゃないのかいストレートでぇ

「ナナミからきいてるぞ行ける口だって」

「じゃぁかんぱーい!」

ってナナミと学園長が一気にグラスを飲み干す

いや勢いって怖い

私も負けずと一気!

”うっげほげほ”

「おっいけるねぇ」

「この感じもう可愛いでしょ」

「ナナミが惚れたのもよくわかるな」

「えへ」

なんかナナミが押されてる感じは不思議

「で彩美ここは浮世で現実の世界を持ち込むのは野暮」

”はい学園長”

「そこ!ここでは学園長でなく酔っぱらいの”徳さん”だ」

徳さん・・・そうか学園長の名前は徳松だったけ

”はい学・・・じゃなく徳さん”

「それでいい」

なんか別の意味で背中が汗まみれ

「なのでココでの出来事は普段の私は知らない」

ってぇ何の宣言ですか

「浮世は笑顔で馬鹿笑い時に涙」

徳さんが又も3人のグラスにストレートのジャックを注ぐ

「じゃあ浮世にかんぱー!」

ナナミぃのりのりだよぉ

やっぱし「げほ」でしたが


そこからなんとも取り留めのない会話が20分くらい続く

別のお店の新人の話題だったり新しく出来た焼鳥屋の話だったり

すると

「ママ!1番お願いします」

ボーイの声でママは徳さんに挨拶をしてグラスの上にコースターを置いて席を立つ

あっあれ指名でドリンクを貰った時の作法ってさっき紗季さん教わったマナーだね

またここに戻ってくるからグラスを下げないでねってボーイへの合図と御客様へのアピってであってるよね

去り際に私の肩に手を置いて・・・暖かい・・・緊張とける・・・

「彩美ぃ徳さんの横に移動ね」

”はい”


「さきほど浮世の話をしたが彩美」

”はい”

「少しだけ現実の話だ」

なんだろ

「御両親の件は力になれなくて本当に申し訳なかった」

”そこまでは学校の範疇ではないのでは”

なんか突然で返しがおかしい

「本来は伝えていいのか悩むが漆原くんが中心になって彩美が行方不明と直訴があってな」

漆原・・・あっ美香が!?

「漆原くんが言うには転々と目撃情報はあるけど追い付けないとな」

そうだね炊き出しを追いかけて家のあった世田谷から炊き出しが多いって聞いた新宿方向に向かって来てたもんね

「漆原くん達も夜な夜な目撃情報のあった公園とか周辺を探していたが一月以上が経過して心配も限界で私に相談をしてくれた」

そんな美香がそこまで

「警察に相談もしたらしいが親族以外からの捜索願受理は難しいって言われてしまったとかもあってな」

そうだね親戚連中にも面倒な奴って縁切られて天涯孤独になちゃったんだよね・・・私は・・・

「で足取りを推測すると新宿方向に向かってるのは間違いないので・・・新宿ならとナナ・・・」

「はい徳さん!浮世に現実はダメなんでしょう」

ナナミが徳さんの私と逆サイド横に座る

「徳さんグラスが空いちゃったぁ」

とコースターを外してグラスを徳さんに差し出すナナミ

「おっしゃママが席に戻ってきた記念だ!」

またもグラスになみなみとジャックが注がれる

「かんぱ~い!」

ってぇ私ぃラストまでもつの!?

また取り留めのない会話

でもこの取り留めのなさがなんか安心する


「彩美ちゃん3番お願いします」

徳さんに会釈をして・・・えっと指名入ってるからグラスをテーブルの隅に動かしてコースターを上に置いて

”いってきますね”

「おう帰ってきたらジャックで乾杯だ!」

まじですか!?


そこから色々なテーブルに移動しながら先輩キャストに色々教わって

何回か徳さんのテーブルに戻ってジャック祭りだったり

気が付くと店内が暗転し落ち着いたクラシックが店内に流れ出す

暗い中で周りを見渡すとキャストと別れの挨拶をしながらハグする客がいたり財布を取り出してる客がいたり・・・

あっ閉店の合図なんだコレ


クラシックがフェードアウトすると今度は照明全灯で明るくなる店内

浮世の時が終わる時間

ボーイが伝票を持って店内を駆け巡り順次お会計をして終わった客から退店していく

指名が多いキャストも猛回転で指名の客が退店する毎にお見送りに

なんだか私も呼ばれる回数が多い気がするけど華やかに見えて大変な世界だなぁ

一番最後のお会計は徳さん

お見送りの合間にテーブルの片づけをしていた私にナナミの声が

「彩美ぃ徳さんが帰るよ」

”はーい”

入口に向かい徳さんに御挨拶

”今日はありがとうございました!色々ありがとうございます”

「おう!とりあえず二日酔い登校だけ気を付けてな」

軽いハグを徳さんから受けて徳さんはまだ明るいネオン街に向かって行った


オーゲスアウトして店内はキャストもスタッフも総出でかたずけモード

といっても皆手馴れていて10分くらいで完了

「はい皆なぁお疲れ!」

ナナミの声が店内に響く

「じゃ今日の渡すから順番に」

チーママの声で合図があるとチーママの前にキャストが並んで白い封筒を受け取っている

封筒を受け取ったキャストはバックルームからバッグを取り出して

「お疲れ様でした!」

と言って退店


「彩美も並んで」

あっ紗季

”これ何ですか?”

「指名とドリンクバッグの半分が当日にもらえるんだよ」

”当日払い?”

「ほら水の子って金使いが荒いから給料もらっても家賃とかローンで無くなってその日暮らしの子もいるので生活補助金な感じかな」

”でもなんで半額なの?”

「それは次も出勤してもらう引き抜きとかの対策かな残りは給料と一緒に月末払いってね」

そんな話してる間に紗季の番で封筒を受け取ると軽く一振り

チャリーン・・・

「まあ私はこんな感じだけどね」

・・・・・・・

「うんじゃおつかれ彩美」

なんか諦めた表情だけどメイッパイの笑顔の紗季

”お疲れ様です紗季ちゃん今日は色々本当にありがとう”

軽く手をあげてバックルームに向かう紗季

さて私の番かぁ

「流石ナナミが惚れこむだけあるな彩美」

チーママが封筒を私に差し出す

”あれピンク?”

「ああこれはその日のNO1って証だよ」

”えっ私が!?”

「初出勤で業界経験ゼロで本当に逸材だな」

”徳さんのおかげかな”

「それもあるキープボトル飲みのボトルバックも多きいけど指名数がハンパないな」

”えっ”

「彩美はほとんどのテーブルで指名入る異常事態でボーイが廻しに苦労してたぞ」

言われるとほとんどのテーブルにグラス置いてたっけ

「彩美ぃマキぃ皆な帰ったし御飯行こう!」

ナナミがカウンターに私とマキのバッグを持ってきてくれてる

本当に細かい気配り凄いなナナミは


「で彩美なに食べたい?」

”・・・温かいご飯なら何でも・・・”

「ナナミじゃあ彩美の初日NO1記念で焼肉でどうだい」

「よし幻影亭へ行くかぁ!」

幻影亭・・・聞いたことある歌舞伎町にある超高級焼肉店じゃない確か一人数万円とか

「マキ手数だけどタクシー呼んで」


幻影亭に到着

「ナナミ様いらっしゃいませ」

うわぁ常連なんだぁ

「いつもの部屋空いてる?」

「はい御案内いたしますね」

エレベータで3Fへ

からぁ案内された部屋はガラス張りの個室

なんか知らない世界だよ


部屋に入るとマキが手際よく注文をしてる

「彩美は何飲む?」

”えっとぉ”

メニューを見てるんだけど家では普通に飲んでたけど外食では初めてでよくわからない

「一杯目は私と一緒でレモンサワーにしちゃおう」

軽くパニ喰ってる私をフォローしてくれてありがとうナナミ


温かい

そして食べた事がないレベルの美味しいお肉達

サイドメニューのサラダとかも凄いよ

レモンサワーなんて皮を剥いたレモンが丸ごと一個入ってるし


「彩美は強いなドリンクあれだけちゃんと酒入り飲んでからレモンサワー10杯とかアフター入ってもバッチりな本当に逸材だなナナミ」

なんか少しほわほわするけどって

”御客様から頂くドリンクでアルコール抜きとかあるんですか”

「よくあることだよ」

そうかソフトだと料金安いからバックも少ないからダマするのかな

”それなんか許せない”

「やっぱ私の惚れた彩美だね私も御客様を騙すの嫌だから頂いた酒で真向勝負だよ」

「それで時々大変な私の事も思い出してもらえれば・・・」


最後は絶品アイスと温かいお茶で〆て食事終了

「じゃマキおやすみぃ~」

マキはタクシーを捕まえに別の通りへ

「さて軽く酔い覚ましに歩いて帰ろうか」

ナナミのマンションはここから徒歩で数分だったね


今日の反省とか他愛ない話をしながら数分で帰宅

玄関ドアを閉めてロック

その瞬間・・・

ナナミが振り返って・・・おもいっきしハグ・・・そして

もうガキな私だって分かるシュチュエーションだよ

お互いの唇を重ね息が続く限り・・・

そして自然に離れる

「本当に今日はお疲れ風呂沸かすから少しまっててね」

ほのかにナナミの顔が赤くて少し目が潤んでるのはお酒だけじゃないよね


リビングに入るとナナミがキッチンからグラスとジャックの瓶を持ってくる

「お風呂湧くまで少し飲もう!」

うん酒と真っ向勝負のナナミさまですね

「何か分からないとか困ったことある?」

もう聞いてもいいよね・・・我慢できない

”ナナミの漢字を知りたい”

「えっ」

”名はその人の存在と同じ”

「えっとぉ」

”だから知りたいナナミの存在を私の中で完璧にするために”

「そうなんだ素晴らしい考え方だねって彩美は私の色々をあまり聞かないね」

”そこに存在してくれれば満足って今の私も同じナナミの横に居れれば・・・だから色々は自然と知って行けばいいかなって”

「愛した人の全てを知りたいって人は多いけど彩美の考え方は大好きだよ」

・・・・・・

「七つの美しいで七美は源氏名ね」

えっナナミって源氏名だったの

「で本当は七つの海で七海だよ」

あっ発音は一緒だったのか

「七つの海を股にかけて活躍する子になって欲しいってたいそうな命名されたんだよね」

”すごく良い名だよ”


ティロリンロ~ン♪

「あっお風呂湧いたね彩美からどうぞ」

反射的に七海をハグしちゃった

”一緒に・・・”

「うん」

そこから少しまどろんだ夜が明け方まで続き七海に半分抱き着いたまま心地よい眠りに落ちた

・・・こんなリラックスして意識のまどろみにまかせて眠りにつくのいつ以来だろう・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る