第4話  転ぶ幸先

 死魂送り~とある双子の葬還譚~を選び、お読み下さりまして、誠にありがとうございます!本当に嬉しいし、幸せな気持ちでいっぱいです!😊

 さて、こちらの4話、続く5話は閑話、箸休め的な話です!なので、箸休めいらないなぁと思う方は、ぜひ6話にお進み下さい!お手数をおかけして、大変申し訳ありません。

・・・

「ま、マジで……あの、クソババァ……」


 ようやく止まった乱暴な筒の中で、私は恨み辛みを最大に込めて吐き出す。


「信じらんない。こんな、こんな鬼畜な方法で人間界に送り出すなんて。あの女、本当にクソババァよ」

 はぁはぁと肩で大きく息をしながら立ち上がり、自分の身体が倒れない様にと壁にもたれかかった。


 すると「クソババァと連呼するな、聖」と渋くて良い声が、私を厳しく窘める。

「不敬極まりないぞ。きちんと閻魔大王様、とお呼びするのだ」

 私は下から聞こえる声に目を落とし、「無理」と渋面で答えた。


「絶対に出来ないわ。問答無用で気持ち悪い血を呑ませただけじゃなくて、こんな方法で送りつける意地悪な奴を敬うなんて、絶対に無理!」

 結生を見てよ。と、私は肩越しに結生の方を見る。


 私の視線の先に居る結生は、完璧にダウンしていた。真っ白で血の気がない顔をしていて、うっぷうっぷと何度も短い呻きを吐き出している。


「あのクソババァのおかげで、片割れが見事にグロッキーだわ」

 まだ何もしていない初っ端だって言うのに、よ? と、苛立ちを纏いながらキオンと対峙し直した。


「どうしてくれるのよ」

「俺に八つ当たりするな」

 キオンは髭や尾にまで呆れを込めながら、はぁとため息を吐き出して言う。

「それに、意地悪でも何でもないぞ。地獄から人間界行きの正規の方法が、これだけなのだから」

「こんな馬鹿げた方法一つだけ?!」

 冗談でしょ! と目を剥いて食ってかかるが、キオンは「冗談ではない」と泰然と答えた。


「これは伝車塔でんしゃとうと言って、地獄特有の乗り物だ。だがな、聖。これは誰もが乗れるものではないのだ、普段は大王様方しか使わぬ特別な乗り物なのだぞ」

「そんなレアみたいに言われてもね、ありがたみも何も感じないから」

 誇らしげに告げてくるキオンに淡々と打ち返してから「結生、大丈夫?」と、結生に投げかける。


 結生は「駄目」と正直に言ってから、再び小さくなって呻きだした。


 私は結生の方へ歩み寄り、背をさすろうとしたけれど。まだ他を慮れる程の体力は戻っていなかったみたいだ。

 その場で弱々しく息を吐き出し「少し休憩してから出ましょう」と、ずるずるとその場でへたり込む。


「今ここでちょっと位時間を使っても、問題ないでしょうから」

 締め切りの期限も言われてないしね。と、投げやりに言ってから軽く目を閉じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る