イケメンで生きるのが面倒だからブサ偽装していたら大学でS級美女たちとグループワークをすることになった

三葉 空

第1話 理不尽な世の中

「はーい、じゃあグループワークに入るので、グループを組んで下さい」


 教授が言うと、講義室内はにわかにザワつく。


 そして、みんなしてその動向を注目するのは、4人の女子たち。


 長身でロングヘアー、清楚で可憐な王道の美女。


 遠藤涼花えんどうすずか


 小柄でショートヘアがよく似合う、こちらも美女。


 宝野たかのしずく。


 金髪でいかにもなギャル系の美女。


 岩本碧依いわもとあおい


 ツインテにメガネと、オタチックな美女。


 豊原満月とよはらみつき


 彼女たちは入学早々、すでに我が明星めいせい大学経済学部1年、いや、もっと全体的に人気を博している。


 いわゆる、S級美女たちだ。


 ぶっちゃけ、大学生は大半が勉強よりも遊び目当てだから。


 男なら当然、可愛い子とお近づきになりたい。


 とはいえ、あれだけの美女たちのグループに飛び込むのは、なかなかに勇気がいる。


 上手いことグループを組めても、きっとやっかみがあるだろうし。


 ていうか、5人グループか。


 まあ、俺はそんな友達とかいないから、適当に余り者のグループには入られれば良いかな……


「ねえ、君」


「んっ?」


 ふと顔を上げると、くだんのS級美女の1人、遠藤涼花がそこにいた。


 ニコッ、と笑顔で微笑んだ。


「はい、何ですか?」


「良ければ、私たちのグループに入らない?」


「えっ?」


 その言葉に、俺よりもずっと、周りの連中(特に男子ども)がどよめく。


「……何でまた?」


「聞きたい? 理由を」


「まあ、一応は」


「じゃあ、言うけど……あなた、ちょうど良いから」


「ちょうど良い?」


「ちょうどよく、その……」


 と、遠藤さんが上品な所作で言いよどんでいると、


「あんた、ちょうど良いブサイクだよね」


 後ろからズバッと言ってのけたのは、ギャルの岩本碧依だ。


「ちょっと、碧依。いくらなんでも、ストレートに言い過ぎよ」


「でも、スズだってそう言ったじゃん。グループワーク、男が1人くらいは必要だけど、あまりイケメンを入れると色々と揉めるだろうから、不快にならない程度のブサメンを入れようって」


「もう、碧依ってば……」


「……なるほど、理解した」


 俺はメガネを押し上げる。


「でも、申し訳ないけど、遠慮しておくよ」


「え~、何で? ブサイクって言われたの、怒っているとか?」


「いや、それはどうでも良い、というか、むしろありがたい」


「ハッ? あんた、ドM?」


「こら、碧依。少しは遠慮しなさい」


「とか言いつつ、スズだって笑ってんじゃん」


「そんなことは……ぷっ」


 うん、笑っているね。


 まあ、別に良いけど。


「でも、あなた良いのかしら?」


 と、遠藤さん。


「何が?」


「今ここで私たちの誘いを断ったら、それはそれでやっかみを受けるんじゃない?」


 言われて周りを見渡すと、男子どもがギラつく目で睨んでいた。


「殺される勢いなんですけど……君たちのせいで」


「はぁ~、もう分かったわよ」


 遠藤さんはため息をこぼしてから、みんなを見渡す。


「みなさん、安心して下さい。私たちはあくまでも、この彼をげぼ……課題をこなすための仲間としてしか見ません。決して、不純な感情は抱かないし、そんな関係になることもありませんので、よろしくどうぞ」


 丁寧な口調で、随分と傲慢なことを言って下さる。


 けど、周りの男子どもは、すぐに顔をにんまりとさせ、頷いた。


 こいつらみんなそろって、アホだろ。


「という訳だから……そう言えば、お名前は?」


今治正司いまばりしょうじです」


「今治くん、よろしくね」


 恐らく、他の男子ならイチコロの笑顔。


 俺はひどくしらけながら、一応は頷き返す。


「じゃあ、イマヤン」


 いきなりあだ名かよ。


「岩本さん、なに?」


「とりま、アオの肩もんでよ~」


「え、何で?」


「だって、あたちパイパイがおっきいからさ~♪ どうしても、肩が凝っちゃうの♡」


「……遠慮しときます」


「ハァ、何コイツ? ノリわっる!」


 理不尽にキレられた。


 このギャルはあまり優しくないなぁ~。


「しずく、満月みつき


 と、遠藤さんが呼ぶと、他の2人もやって来た。


「この冴えない男、私たちのげぼ……仲間にするけど、良いわよね?」


「うん、まあ……すずちゃんが言うなら」


 と、ショートヘアで小柄な宝野たかのさんは言う。


「満月も大丈夫かしら?」


「あたしは何でも良いよ~」


 と、適当な返事をする豊原さん。


「じゃあ、決定ね。よろしく、げぼ……今治くん」


「……はい、よろしくお願いしまーす」


 俺はなるべく感情を押し殺して言った。







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