第45話 双子姉妹に反応しているんですけど
「しっかり捕まっててください。ハイヨー! シルバ!!」
『ヒヒーン!!』
最早、ヴィエルジュの馬と化した白馬。名前も付けられているし。魔法学園の制服を着ているのに、この西部劇感……。
さっきはヴィエルジュを後ろに乗せて背中が幸せだったが、今は俺が後ろから抱きつく形になっている。
なんだろ、癖になりそうなんだけど。これって俺が変態ってこと? いやいや、こんなもん世の男子ならこんな邪な感情が芽生えるわ。
「んで、ヴィエルジュ。どこに向かってんの?」
「シルバにバンベルガ様の行方を追うようにお願いしております」
『ヒヒーン!』
犬かよ。
しかし、本当にバンベルガさんの居場所がわかるのならありがたい。俺の魔力感知じゃ遠すぎるのか、あのムッツリスケベっぽいイケオジの魔力を感知できないからね。
『ふたりしてどこ行くの?』
ふと、俺の後ろからフーラの声がして振り返る。
「フーラ!?」
「お姉ちゃん!?」
「えへへ。風魔法で来ちゃった☆」
茶目っ気たっぷりな声を出しながら、俺の背中をギュッと抱きしめてくる。
「リオンくんったら、久しぶりの再会だってのに私のこと無視して行っちゃうだもん。寂しかったんだからね」
「ごめんごめん。急いでたからさ」
「しばらくこうしてくれたら許す」
怒られると思ったけど、これで許してくれるなら本望。
それにしても、フーラはヴィエルジュとは違って硬めの感触の中に女の子特有の柔らかさを感じる。イケナイ気分になっちまうな。
「ちょっとお姉ちゃん。ご主人様に抱きつかないでください」
「だってこうしないと落ちちゃうもん」
「風魔法で飛べば良いじゃないですか」
「風魔法は魔力消費が激しいから疲れるんだよね」
「誘導はどうしたんです?」
「終わったよ。みんな無事に避難できたからこっちに来たんだ」
えっへんと威張るフーラ。ヴィエルジュはどこか納得できていない様子。
俺はロイヤル双子メイドにサンドイッチにされ、幸せな感触で脳がバグっておいでです、はい。ハンバーガーのパティってこんな感情なんだね。
『ゼェ……ゼェ……』
「あ、ほら。シルバがバテてしまっております。重量オーバーなんですよ。降りてください」
「重量オーバーだったら、体重を考えてヴィエルジュが降りるべきだよ」
「なっ……!? わ、わた、私、太ってませんけど!?」
「そんな無闇やたらと成長させたものぶら下げてるからスタイル良く見えないんだよ」
「負け惜しみを言わないでください。ぬりかべさん」
「ぬり……!? あ、ありますー! 私だってありますー! ね? リオンくーん♡」
フーラがムキになって俺の背中にやたらと小さな膨らみを押し付けてくる。
「そんなショボいものでご主人様がなびくはずもありませんと、何度も言っているじゃないですか」
「……これはこれで良き」
「ご主人様!? ウソでしょ!?」
「あっはっは! 大きければ大きいほど良いなんて時代は終わったんだよ。世の中顔! そう! このフーラ・アルバートの神に愛された愛くるしい顔があれば他のステータスなどどうでも良いのだ!」
「顔のレベルは同じです」
「そうだったー! 私達双子だからヴィエルジュも神に愛された顔だったー!」
「神に愛された顔とボディです」
「こんのチートメイドめえええ!」
「おーい。そこの双子達―。漫才している間に白馬が限界みたいだぞー」
「「え?」」
『ヒヒンキュン』
白馬は限界だったみたいで、その場で倒れてしまう。
「よっと」
「「えい」」
俺達は無事に飛び降りた。白馬はその場で大きく息を乱してしまっている。
「ありがとうございます。シルバ」
「ありがとう。白馬さん」
ふたりの美少女双子が白馬の頭を撫でると、我が生涯に一生こ悔いなしと言わんばかりに逝った。
最後は美少女に触られて絶頂したのだろう。こいつもまたオープンスケベってことなんだな。同士よ、安らかに眠れ。
「さて、闘技場まで来たけど、こんなところにバンベルガさんがいるのか?」
ここは入学試験でも使われた闘技場の中心だ。辺りを見渡してもバンベルガさんはおろか、人っ子一人見当たらない。
「シルバがここまで連れて来てくれたので、ここにいたのは間違いないと思われます」
「なんでヴィエルジュはこの短い期間であの白馬を信用してんだよ」
「あれあれ? ご主人様ったらもしかして嫉妬ですか?」
「違うもーん。馬なんかに嫉妬なんてしないもーん」
ムスッとするとヴィエルジュは嬉しそうに笑っていた。そんな俺の左腕にフーラがしがみついくる。
「ヴィエルジュは白馬さんと結婚すれば良いよ。私はリオンくんに嫉妬させることなんてしないから」
「ムカッ」
ヴィエルジュが莫大な魔力を出しながら俺の右腕にしがみついてくる。
「お姉ちゃんはご主人様に嫉妬もされない存在なんですよ。残念でした」
「ムカッ」
フーラが莫大な魔力を出した。
「おいロイヤル双子。そのバカみたいにでかい魔力をしまえ! 物騒だぞ!」
俺の声は届かず、ふたりがバカでかい魔力を出して俺を挟んで睨み合いをしていると、足元に魔法陣が浮かび上がる。
「ふたりとも。お前らの魔力になにかしらが反応しているんだが」
「お姉ちゃんなんて可愛くて魔法の天才で、凄いんだから!」
「ヴィエルジュなんて美人で魔法の秀才で、凄いんだから!」
「安定の褒め殺しに至るのなら、その魔力をしまえよ!」
俺の声は届かず、俺達は足元の魔法陣に包まれてしまい、視界がホワイトアウトしてしまった。
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