第56話
少年の村が近づくと、煙が立ち上っていた。
「あれもヘビの仕業なのか?」
「……うん、大きいヘビが三体も現れて……僕たちは逃げるので必死だったんだ」
獣人たちは村のそばの安全な洞窟に逃げ込んでいるということだった。
少年は隠れ家の洞窟へアルカンタラたちを案内した。
「みんな大丈夫? 冒険者の人を連れてきたよ!」
「おお、無事だったか。坊主の姿が見えんからヘビに襲われたのかと心配していたところだ。
この方たちが冒険者……? ま、まさかヘビを倒してくれるのですか!?」
少年が戻ってきてホッとする獣人たち。
洞窟には20名ほどの獣人たちが身を潜めていた。
「ったく、こんだけ獣人がいるっていうのに、こんな洞窟に逃げるなんて情けねぇなぁ」
「やめないアルカンタラ!」ミルリーフが言う。
「いえ、情けないかぎりです……」
最年長と思われる獣人の男は歯を食いしばっていた。
「我々獣人はずっとこの山で生活をしています。もちろん、獣やヘビ襲われることもありましたが、今までは撃退してきたのです……しかし、今回のヘビはおかしい! あまりに大きいのです。力も普段の大蛇とは比べ物にならない……あれはもしかすると、モンスターかもしれません……」
獣人の男は身を震わせている。
「……なるほど。もともと獣人は人間なんかよりはるかに高い戦闘能力を持ってるはずだろ? そのお前たちが逃げるんだったらそれはただのヘビじゃねぇな。モンスターだろ」アルカンタラが言う。
「モンスター!? こんな山にも現れ出したのね……」
ミルリーフは顔をしかめる。
「ああ、モンスターは自然の中の方が多く生息するくらいだ。この山なんてモンスターにとっては居心地がいいんだろうな。さて、とっととぶっ飛ばしに行くか」
「ちょ、ちょっと待って!」
ミルリーフは、ヘビの待つ村に向けて歩き出すアルカンタラを制する
「……今回のモンスターは……私1人で倒すわ!」
決意したような瞳でアルカンタラに訴える。
「……は? おいおい、さすがにミルリーフ1人じゃキツイだろ? 三体いるらしいぞ? 俺の魔法でドカーンと一撃で……」
「ダメなのよ! いつまでもアルカンタラの古代魔法に頼っていたら。私もSランク冒険者だけど……ハッキリ言ってアルカンタラと私じゃ力が違いすぎるのよ!
私ももっと成長しなきゃと思ってたの」
ミルリーフは真剣な眼差しでアルカンタラに言う。アルカンタラの少し考えこみ頷いた。
「……そうか。分かった、今回は俺は手を出さん。1人で倒してこい。その代わりヘビに飲み込まれても助けないからな!」
「ふっ、誰が飲み込まれるもんですか! アンタはここで待ってなさいよ」
ミルリーフは剣を抜き、村へ駆けていく。
「……だ、大丈夫なの? お姉ちゃんだけで」
獣人の少年は心配そうにアルカンタラに尋ねる。
「……大丈夫だろ。本来アイツの方俺より強いはずだ」
アルカンタラは黙ってミルリーフの背中を見送った。
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