第41話
「ゴホン……お、お二人が大変特別な冒険者であると言う事は疑いようがないようです……」
ほっぺたを真っ赤に腫れ上がらせたポピーの父親は言う。
あまりに興奮し、ひっつく父親を、アルカンタラのビンタで振り払ったのだ。
それすらも勇者パーティーのアルカンタラに叩かれた思い出ができたと、喜ぶ始末だった。
「お二人を……ボアモルチ冒険者ギルドが認める、Sランク冒険者に任命します」
「え……Sランク!? 冒険者ってAランクが最高じゃないんですか!?」
父親の言葉にミルリーフは驚く。
「ええ、一般的にはそうなっていますが、ごく少数の限られた実力を持つ冒険者はSランクが与えられます。
小国の王族や貴族に匹敵する力です」
「す、すごい……そんな力を会って間もない私たちにいんですか?」
「はい。こんな事は前例がないですが、勇者パーティーのアルカンタラ様、そして勇者ソーサー、女賢者アゼリ様の子孫のミルリーフ様です。誰にも文句は言わせませんよ!」
父親は拳を握りしめ、力強く言い放つ。
「お父様、素敵です!」
ポピーも大喜びだ。
「……よくわかんねぇが、とりあえずこれでセコセコと冒険者ランクを上げる必要はなくなったんだろ? もうイヤだぜ……薬草を摘むのは……」
アルカンタラはホッとため息をつく。
「あ、ありがたいのですが……私のことはいいとしても、アルカンタラが100年前の冒険者ということはできればご内密にしていただきたいんですが……」
ミルリーフは感謝しながらも、アルカンタラの素性を心配していた。
「はい。もちろん、事情はわかっているつもりです。
信じられないことですが、あなたは間違いなくあのアルカンタラ様です。
噂が広まれば野次馬が寄ってくる事など心配ですが、何より魔族の耳に入るのが怖い」
父親は先ほどまでとは打って変わって真剣な眼差しだ。
「野次馬って……オッサンが人のこと言えんのかよ……」と、アルカンタラはボソリとつぶやく。
「アルカンタラ様だけが使える古代魔法は現在の魔族にとって唯一の脅威でしょう。情報を知ったら魔族は何かしらあなた方に危害を加える恐れがあります」
「はっ、上等だよ! 邪魔する奴は魔族でもぶっ飛ばしてやるよ」
アルカンタラはニヤリと笑う。
「アンタね……そんな簡単なことじゃないのよ!」
「そうです。魔族の支配を食い止めることができる古代魔法の使い手。極端な言い方をすれば、アルカンタラ様は世界の希望なのです」
「う……そこまで……」
褒められ慣れていないアルカンタラは恥ずかしさから、気まずく黙り込んだ。
ポピーの父親、ボアモルチ冒険者ギルドの所長の華麗な手回しによって、アルカンタラ達の身分は明かされないまま、Sランク冒険者の登録がされた。
「あんなふざけたオッサンでも、なかなかやるな」
「失礼なこと言うんじゃないわよ! ギルドの所長よ? なかなかじゃなくてほんとにすごい人なのよ!」
何はともあれ、こうして不安の種だった国の移動もSランク冒険者の権力によりスムーズにできるようになった。
そして、アルカンタラとミルリーフの二人はポピーの家に客人として招待された。
暗黒水晶の破壊に向かっている第一陣からの結果報告が数日以内にあるということだ。
それまではひとまず、ポピーの家で世話になることにした二人だったが、アルカンタラは最後まで反対した。
「あの二人がいる家なんて……ストレスで死んじまう……」
勇者オタクのポピー親子に質問攻めにされる恐怖に震えるアルカンタラだった。
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