第9話
「ゴホン、国王様、あたらめまして……この男は間違いなくアルカンタラです」
ペドロはバツが悪そうにアルカンタラを指差し言う。
「うむ……そのようじゃな。あれほどの魔法使いなんじゃ、はじめから疑っておらんよ」
「あれほどの魔法って……俺の魔法って本当にそんなにすごいのか? ペドロもそう思うか?」
アルカンタラは不思議そうにペドロに尋ねる。
「ふふ……魔法陣の入れ墨か。懐かしいな、最近じゃ目にすることもなくなったな」
ペドロはアルカンタラの入れ墨を見て呟く。
「現代の魔法使いは魔法陣を使わないみたいだな? それであんなに弱いんだな」
「……アルカンタラ。お前にはワシからこの100年間の話をしておこう」
「おう、そうだな。俺が知っている人間はお前だけなんだしな」
ペドロ長老はアルカンタラに、氷漬けになっていた100年間の話をした。
◆
生き残った勇者ソーサーと女賢者アゼリは魔王を倒せたが、アルカンタラ達、パーティーの仲間をを失ったことを悲しんだ。
2人はせめてものとパーティーの遺族たちの生活を生涯面倒をみた。
「さすがソーサーとアゼリだな」
「ああ、本当にご立派な勇者様だった……」
ペドロ長老は涙を浮かべた。
「まあアルカンタラは身寄りがいなかったからな。勇者様はアルカンタラのような親のいない子供達の施設なんかに寄付もされていたな」
「くぅ……ソーサー、あの男は!」
「ああ! 男の中の男だ!」
アルカンタラとペドロ長老は肩を組んだ。
「そして魔法陣のことだがな……」
ペドロ長老は続けて魔法陣の話をした。
100年前、魔王が滅び平和な日々が戻り、世界中大喜びだった。
魔王に苦しめられていたのは人間だけではなく、エルフ族やドワーフ族、精霊族など、様々な種族にも平穏が訪れた。
「お、精霊族か! この魔法陣も精霊族の腕利き魔術付与師に入れてもらったんだ」
アルカンタラは入れ墨を得意げに見せる。
「魔術付与師か……それも懐かしい言葉だ」
ペドロ長老は言う。
しかし、平和が訪れ数年が経ち、世界は変わり始めた。
魔法陣を持つ魔法使い達が悪事を働くようになったのだ。
魔法陣を持つだけで、体内の魔力を何倍にも増幅することができる。
普通の魔法使いでは太刀打ち出来ない古代魔法に、一般市民は怯える生活が続く。
このままでは世界の平和が再び脅かされると心配され、様々な種族の王が集まり会議が行われた。
そして、古代魔法、つまり魔法陣を禁止するルールが作られた。
魔王が滅び、モンスターが弱体化した時代では強い魔法は必要なかったのだ。
それが勇者がパーティーが魔王を倒した2年後、現代から98年ほど前のことだ。
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