風邪をひいてフラフラの大学生がトイレ行きたくなる話
こじらせた処女/ハヅ
第1話
「っはっ、今何時!?」
スマホの電源を入れると、いつも起きる時間よりも30分も遅い。
「おはようございます!!すみません、朝飯…」
「ああおはよ。おにぎり作っといた」
「ありがとうございます…すみませんほんとに…今日俺の日なのに」
「いつも当番じゃなくても色々やってくれてるだろ?」
「…ありがとうございます…夕飯は俺しますから。大学休みだし。何食べたいです?」
「んー…何だろ…あ、卵そろそろ消費しねえと」
「じゃあ卵系統でいきます。」
「サンキューな。まあでも無理はするなよ?」
「はい、大丈夫です」
じゃあ俺は行くから、と春さんが出て行った。テーブルに残されたおにぎりを手に取り、齧る。
(あれ、なんか…)
変かも、と思ったのはその時だった。やけに喉が渇いて、お茶を3杯も飲み干してしまう。そのせいか、手に持つおにぎりが全然減らない。
(茶飲み過ぎたか…)
水分でお腹が膨れてしまったのだろう。諦めて食べかけのものを、手をつけていない方とともにラップにかけて、冷蔵庫にしまう。
今日はバイトも学校もない。洗濯、掃除、そしてレポート、夕飯準備。大体の流れは決まっている。
とりかかろう、そう思うのに、何故かすごく眠い。時計を見るとまだ9時である。
「ちょっと仮眠…」
春さんの帰ってくる7時までに夕食を作り終えれば良いのだ。
自室のベッドに寝転がり、30分後にアラームをかける。いつもより、瞼が落ちるのが早い。
(疲れてたのかな…)
微睡の中で思いを巡らす。でも、最近不眠気味だったからありがたい。その欲求に抗うことはしなかった。
先日、母が亡くなった。もともと大学は奨学金を借りて通っていたため、学費が払えなくなるということはない。しかし、家賃を払うためにバイトを増やさなければいけないという問題、たった1人の肉親を失ったという現実から、精神的に参っていた。そんな時、声をかけてくれたのが、遠い親戚であり、7つ年上の春さんだ。部屋が一つ余っているから、と俺を迎え入れてくれ、一緒に暮らさせてもらっているのである。
正直、助かった。こんな精神状態で一人暮らしというのは、金銭面以上に気がおかしくなりそうだと思ったから。この提案を持ちかけられた時にはみっともなく泣き崩れてしまったことは記憶に新しい。
春さんにはお世話になりっぱなしだ。家賃も全部向こうが持ってくれているし、家事も当番制。だからせめて迷惑をかけてはいけないのだ。家政婦までとはいかなくても、本当は家事全般を俺がこなすくらいしないと割に合わないのに。
「ぅ゛…あづい…」
目を開けると何故か瞼がすごく熱い。ケータイのアラームはとっくになり終わっている。
「もー、じゅうにじはん…?」
やばい、寝過ぎた。慌てて体を起こすけれど、上半身を持ち上げることができない。
「あれ…え…」
体がふわふわして、でも、いつもの2、3倍重力を感じる。
(気をつけてたのにな…)
ここまで自分の症状を把握してしまったら、流石に分かる。風邪をひいてしまったのだと。でも、いつもは咳やら鼻水やらが酷いタイプのものを拗らせていたので、今回のようなケースは珍しい。
:ごめんなさい、風邪気味なので、ごはんつくれないです。
春さんにメールを送り、再び寝返りを打つ。
(ちゃんとやろうって思ったそばから…)
つくづく自己嫌悪に陥ってしまうが、こんな状態では何もこなせない。諦めてもう一眠りしよう、そう思い、再び目を閉じた。
(あ…)
その瞬間、俺が目を覚ました理由が分かった。腹痛とは違う、ムズムズとした疼き。
(小便、してえ…)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます