謎の少女 その2

「ありがとうございます。私はルミネと言います」


「蓮です」


「レンさん……覚えました。とってもいいお名前ですね!」


 ブルっ。


 何故か寒気がした蓮。


 話に乗ったのまずかったかな……


 何故あの時話を断らなかったんだろうと、後悔し始める蓮。



「それで……私がレンさんのパーティーに入りたかった理由なんですけど……レンさんって運命を信じますか?」


「運命?」


「そうです! 一目見ただけでもう、この人しかいないって感情に支配されたり、寝て起きてもあの事しか考えられないってなったりとか」


 蓮の脳裏に一つだけ心当たりが生まれる。


 ブレイブダンジョンクエスト……か。


 レンは段々とルミネの話に耳を傾けはじめる。



「まさにレンさんがそれだったんです。昨日私はレンさんがこのダンジョンを何回も攻略してるのを見ました」


「っ!」


 見られてたのか!? 


 人がいない早朝帯を選んで潜ってたのに。


 監視員もいないし、攻略する人も全然いなかったから油断した。


 突然言われたことに、冷や汗が止まらない。



「……一体何が言いたいんですか?」


「別に脅してる訳じゃありません。むしろ、凄い人だなって思ったんです。だって、レンさんみたく一日で何回も攻略している人なんて世界中探してもいないですよ」


 褒められてるんだよな?


 色々と感情がごちゃ混ぜになり、動揺を隠せない。



「その時思ったんです。あぁ、やっと探し求めていた人が見つかった……って」


 ルミネは一言一言大事そうに話す。



 そこまでの事か?


 俺よりも強い奴はまだたくさんいるし、今の俺よりすごい奴はたくさんいるだろ。まぁ、いずれは俺が一番になるけどな。


 すると蓮は興味から一つの質問をする。



「ルミネ……さんはもし、俺とパーティーを組む時は何処のポジションに付きたいんですか?」



 ブレイブダンジョンクエストのパーティーには4つの役割が存在する。


 一つ目は前衛。相手の攻撃を受け止めるタンカーやダンジョンに存在する罠や敵の接近を素早く探知するシーフというがこの位置に当たる。



 二つ目は中衛。前衛や後衛の補助や攻撃、回復等のほぼ全ての役割をこなす、オールマイティー職。パーティーの中で一番重要とされているこのポジションは、基本的にそのパーティーのリーダーがすることが多い。無論、俺もこのポジションで攻略を続けていこうと考えている。



 三つ目は後衛。魔法や弓などの遠距離で攻撃したり、回復や補助等で前線が崩壊しないようにするポジション。前衛や中衛に守られていることが多いが、後ろから敵が来ないとも限らないので注意も必要な場所。



 そして最後、四つ目はサポーター。後衛とは異なり、戦闘に参加する事は滅多になく。戦闘後のアイテム回収。攻略に必要なアイテムの運搬。長期に及ぶ攻略の際には皆の日常生活のサポート等をするのがこのポジションである。



 この中で一番不人気なサポーター。このポジションをする人員を見つけるのが一番の課題となるだろうが果たして……


 蓮はじっと相手が話し始めるのを待つ。



「私は……サポーターがしたいんです」


「へぇ。サポーターですか」



 さっきも言った通り、サポーターはブレイブダンジョンクエストのパーティーの中で一番不人気なポジションだ。誰だってモンスターと戦って輝きたいし、活躍したい。しかし、サポーターは皆の邪魔にならないように遠くで立ち回らなくちゃいけないし、何より皆のアイテムを持って何時間も移動するのが大変という地味で辛いポジションなのだ。しかも、戦闘中は自分の身は自分で守らなければいけなく、安全なポジションでもない。



 しかし、ルミネの話を聞く限り、サポーターに誇りを持っていそうな話し方をしていた。それに、話しも上手だし、人と人との緩衝材にも最適。


 意外と悪くないかもな。


 内心、悪くないなと思い始める。


 だがな……


「ルミネさん。一ついいですか?」


「何でもどうぞ」


 俺はこれだけはと言う表情でルミネに言う。



「ダンジョン内では俺の命令は絶対です。それでもいいですか?」


「え?」


 ルミネは驚きをあらわにする。


 これが一番譲れない条件。ダンジョン内では俺の命令に従う事。ある程度は各自好きに動いていいが、俺が危険と判断した時や、こうしなければならないと考えた時に自分勝手に行動する奴は俺のパーティーには要らない。


 自分勝手と思われるかもしれないが、ブレイブダンジョンクエストは絶対の正解が確実に存在する。それは、俺の頭の中に忘れられないほどに記憶されており、俺はこの記憶を元にこれからダンジョン攻略を行っていくつもりだからな。



「これが飲めないならルミネさんは別の人と組んだ方が……」


「飲めます」


「……いまなんて?」


「ダンジョン内ではレンさんのいう事、絶対に聞きます」


 蓮は相手を見極めるべく、ルミネの目を見ながら。



「いいですか。もし、俺がこの場から逃げろと言ったら必ず逃げること。敵を倒すと言ったら状況が絶望的でも戦うこと。それでもルミネさんは……」


「何度も言わせないでください。レンさんが逃げろと言ったら逃げますし、突き進むと言ったら何処までもお供します。何なら、肉壁になれって言われても……」


「そこまでは言いませんって!」


「ふふっ。でも、このぐらいの覚悟は持っていると知っておいて欲しいんです」


 目が語っている。私は本気だと。



 蓮は一度空を見上げ。


「はぁ。分かりました。いいでしょう。貴方を……ルミネさんをパーティーに迎え入れます」


「本当ですか!」


「ただし……」


 ゴクっ。

 

 ルミネが真剣な面持ちで唾の飲み込む。


「今から俺がいう事をクリアしたらですけど」


 こうして、蓮がルミネに言った条件とは……

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