謎の少女 その1

~次の日~


「今日も木漏れ日のダンジョンをクリアしていくか」


 俺はレベル上げの為、またしても木漏れ日の森ダンジョンへと来ていた。


 昨日までに上げたレベルは13。次の危険度に進むためにも最低でも15にはしたい。


 レベル15以上に9個の危険度2ダンジョンをクリアしたら十分に危険度3でも通用すると考えている蓮。



「うーん。よし!」


 その場で軽く体を動かした後、ダンジョンへと入ろうとしたその時。



「あのっ」


「……俺?」


 後ろから声をかけられる。


 どうしたんだろ? 何かあったのかな?


 蓮は不思議そうに後ろを振り向くとそこには……



「……え?」


 茶髪の女性が一人、大きめのバックを背負ってその場に立っていた。


 茶髪ショートカット。背丈は160ない位。目鼻立ちは整っていて、たれ目の印象からか優しそうなイメージ強い。


 そんな茶髪の女性はもじもじとしながらじっと俺を見つめてくる。



「……どうかしました?」


「……欲しくないですか?」


「はい?」


「私が欲しくないですか?」


 こいつは一体何を言っているんだ。


 すぐに優しそうな女性から、やばい奴へと印象が変わる。



「いえ、そういうのは大丈夫なんで。……別に用がないならもう行きますよ?」


 俺は構ってられないと思い、ダンジョンへと足を進めようとした時。



「ちょっと待って! もう少し話を聞いてください!」


「はぁ、今度は何ですか」


「つまり私を……貴方のパーティーに入れてほしいんです!」


 あぁ、そういう事か。


 やっと話が通じた二人。しかし……



「いえ、当分は一人で十分なので他を当たってください」


「あ……」


 間を置かずに蓮は必要ないと言ってのけ、女性は唖然とする。



「それじゃあ……」


「え、ちょっ、待って……」


 ああいうタイプは話が長くなるし、話すだけ時間の無駄だと考え、制止を振り切ってそのままダンジョンへと入って行く。



 まだパーティーは必要ない。俺は嘘を付いたのではなく、本当の事を言ったまでだ。


 これからもラストダンジョンまで休みなく攻略していくつもりだし、他に構っているつもりもない。もちろん、それまでには必要な人員をそろえる予定だが、今の危険度ではパーティーが必要になる事はない。


 ブレイブダンジョンクエストはパーティーを組むことが出来る。一つのダンジョンに1パーティー5人まで入場可能で、ダンジョン攻略の際には5人で攻略する事が冒険者ギルドからも推奨されている。


 危険度3までは一人でも十分に攻略可能。危険度4になるとダンジョン内に徘徊種と呼ばれる、その危険度よりも2~3上の強さを誇るモンスターが稀に出現するからそれまでにはパーティーを組む相手でも探そうとは考えているが……


 徘徊種――危険度4以上のダンジョンから登場する、裏ボス的存在のモンスター。通常、そのダンジョンの危険度の2~3上である事が多く、徘徊種を見つけたら直ぐにそのダンジョンから撤退をする事が推奨されている。徘徊種が出現すると、討伐するまでそのダンジョンから自然消滅する事が無い。もし、徘徊種を見つけたら冒険者ギルドに連絡を取り、上位冒険者を派遣してもらおう。



 それまでは必要ない。


 蓮はそう結論付け。



「ダンジョンRTAを始めてくれ」


『スタートします……』


 よし、気を引き締めていくぞ。


 昨日に引き続き、ダンジョン攻略を始めたのだった。



~~~


「慣れたもんだな」


 またもや記録を更新し、報酬を受け取る。



「やはり1度クリアしたぐらいでレベルアップはしなくなったか。帰還ポータルを出してくれ」


『帰還ポータルが出現します。しばらくお待ちください』


 しばらくして出現した帰還ポータルに入って行く。



 これで一回目……あと何回かやれば……


 蓮はあともう少しだから頑張ろうと自分に言い聞かせ、もう一度木漏れ日の森ダンジョンへと向かおうとしたその時。



「あっ、出てきた!」


 ビクっ。


 蓮はびっくりしながら正面を見る。


 またあの人か。


 目の前には先ほど断ったはずの女性が笑みを浮かべて立っていた。



「もう一度話を……」


「だから……俺は貴方と話をするつもりは……」


「どうしても! どうしても貴方とパーティーを組みたいんです!」


 なぜそこまでして俺とパーティーを組みたいんだ?


 そこまでして自分と組みたいと思っている女性が少しだけ気になり始める蓮。



「お願いです! 少しだけ……話を聞いてください。今度こそ断られたら諦めますから」


 どうしたらこの女性から逃れられるかを瞬時に考えた蓮は。



「……少しだけですよ」


 話だけ聞いて、適当にあしらおうと決意。


「あ、ありがとうございます! やった」


 そうとは露知らず、やっと話を聞いてもらえると満面の笑みを浮かべる女性。



 まぁ、適当に理由を聞いて断ろう。これ以上付きまとわられたら攻略に支障が出るかもしれないからな。


 こうして蓮は渋々相手の提案を受け入れ、近くのベンチに移動する二人。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る