報酬

『報酬一覧』


・全てのステータス3上昇


・スキル[疾走]――20秒間、走る速度が上昇。



「よし……」


 俺は表示された報酬を見て、大きく頷く。


 欲しかったスキルは案の定ゲットできた。


 何故俺が最初のステージに始まりのダンジョンを選んだかというと、初回ダンジョンクリアA以上で貰える報酬にスキル[疾走]があるからだ。


 このスキルは説明の通り20秒間走る速度が上昇するというものだが、このスキルがあるだけでダンジョンの攻略スピードが劇的に変わる。つまり、俺が求める要素、ダンジョンRTAに上手く合致しているのだ。


 難易度1ダンジョンの固定報酬で出るスキルの中で今必要としている有用スキルはこれぐらいだし、後は流すつもりで他のダンジョンRTAをこなしていくか。


 

 固定報酬――指定されたダンジョンをある条件下でクリアすると確定で貰える報酬。始まりのダンジョンでは初回ダンジョンクリア評価A以上の場合にスキル[疾走]が確定で貰える。


 

『ポータルを開きますか?』


「あぁ」


 こうして俺は無事、初めてのダンジョンでNEW RECORDを叩き出し、帰還する事に成功したのだった。



~翌日~


「はぁ……良く寝た。ステータスオープン」


 蓮は朝早くに目を覚まし、寝ぼけながら自身のステータス画面を開く。



 名  :冥利蓮  

 性別 :男

 LV :1


 HP :10


 STR:5[+10]

 DEF:5[+8]

 INT:5[+4]

 MND:5[+10]

 DEX:5[+3]

 AGI:5[+10]

 LUK:5[+4]


 スキル:疾走




 左に表示されている数値が基本能力値。そして[]内に表示されている数値がダンジョン攻略報酬で得られた能力値だ。



「昨日一日だけで結構上げられたな」


 昨日だけでクリアしたダンジョンは10個。しかも、全てNEW RECORDを記録しているので、俺のステータスはレベル1とは思えない能力値へと変貌していた。



「やっぱり初回ダンジョンクリアS報酬は馬鹿にならないな」


 能力値だけで言えば既に10レべを超える寸前まで来ているのではないだろうか。


 種族が人間だと1レベル上がるごとに向上する合計の能力値は5~8ほど。そこに才能や血筋も影響し、多少の誤差はあるだろうが、とんでも種族以外だったら皆そんなもんだろう。



 蓮はステータスを何度も見返し、顔を緩める。


「……ダンジョンをクリアしただけ能力値が上る仕組み。ほんといいよな……」


 なんて言うか、努力すればした分だけ反映される的な?


 前世とは大違いだ。


 蓮は努力していた学生時代を思い出す。



 おっと……余計な事を考えたな。


 別の事を考えよう。そうだ。今日攻略するダンジョンのクリア目標回数でも設定するか。


 そうだな……

 


 普通の冒険者は一日にダンジョンをクリアする数は1~2個。しかし、ダンジョンRTA廃人こと、冥利蓮にかかれば……



「今日の目標は……20回クリアだ!」


 これが朝飯前となっている。



 こうして蓮はダンジョン攻略報酬で得たライセンスカード内のポイントで寝泊まりした宿(他より高め)をチェックアウトすると、冒険者ギルドへと足を運ぶ。



「朝早すぎてやってないかもって思ったけど……そんなの杞憂だったな」


 蓮は色んな冒険者のニーズに合わせ営業している冒険者ギルドに感心しながら、昨日よりも空いている受付へと向かう。



「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」


「ライセンスカードの更新です」


 俺は昨日作ったばかりのライセンスカードを受付に渡す。



「更新ですね。少々お待ちください」


 そう言って受付の人は手元で作業を始める。



 今日は危険度2のダンジョンに行きたいからな。面倒だけどライセンスカードを更新しないと。


 ライセンスカードのグレードに応じて、それ相応のダンジョンに入れる仕組みを採用している冒険者ギルド。


 ライセンスカードのグレードを上げるには、自身が持つライセンスカードのグレードと同じ危険度のダンジョンを10箇所攻略する必要があるのだ。


 俺が欲しいスキルが手に入るダンジョンは高難易度のダンジョンだからな。それに、ラストダンジョンにいち早く到達する為にも、最速で上位のダンジョンへと向かう必要もある。


 俺が色々と考え事をしている間にも受付はライセンスカード更新の手続きを終え。



「おめでとうございます。グレード2に更新完了です。これからもダンジョン攻略頑張ってください」


「どうも」


 冒険者ライセンスカードを作成して僅か1日でグレード2に上がるという快挙をしてのけた蓮だったが、蓮は特別気にする様子もなく、カードを受け取りその場を後にする。



~~~


「なんか愛想のない人だったわね。……あれ? おかしいわね」


 蓮が去った後、蓮を対応した受付は書類を整理している間にふと何かに気づく。



「グリード……ね。登録日は昨日。それなのにグレードはもう2? 何かの間違いかしら」


 これまでのグレード2最速到達者は双姫の二つ名を持つ女性、フェネイの3日なはず。しかし、グリードと呼ばれる人の書類に記載されている冒険者ライセンスカード交付日は昨日。そして、今自分が持っている書類。グレード更新リストには同じ名前、グリードの文字が。



「……同じ名前の人がいたのかしら? ……でもやっぱり何かへん……」


 そうして、その女性は何かに突き動かされるように総務課へと足を運ぼうとした時。



「おい! 受付はまだか!」


 っ! そうだったわ。


 人を待たせていたことを思い出す。



「少々お待ちください!」


 受付の女性はグリードの書類をその場に置き、もう一枚のグレード更新者リストは手に持って自分の持ち場に戻ったのだった。


 それからこの女性はこの事をすっかり忘れ、グリードこと冥利蓮の存在が上層部に伝わるのはもっと先の事となるのだがそれはまた別の話。

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