楽しい結婚生活(仮)
契約結婚が決まって私とリリアナの生活環境が変わって2週間が経った。
「こんな生活納得出来ないわ!! 」
ティーカップを勢い任せで置いたことを窘めてから疑問を投げかける。
「伯爵様には不当な扱いはされていないと思うけれど……。何か不安な事があるの? 」
リリアナと二人で暮らすことが出来て私自身には何も問題が無かったけど急に環境が変わってストレスを感じたのかもしれない。リリアナは体を震わせて叫んだ。
「文句を言わなきゃいけないのはお母様でしょう!? まさかこれが一般的な貴族の生活だなんて言わないよね!? 」
私達はハーネスト伯爵家の離れでリリアナと二人で生活していた。
実はこの状況は私個人の我儘であって、本来の結婚条件には含まれていない。知らない人を生活区域に入れたくない事と契約結婚の条件に私が追加した。
貴族間で行われる普通の契約結婚と異なるのは『ジャックの友人関係に一切の口出しをしない』これに尽きた。勿論、普通の友人関係ではない。
伯爵家では様々な女性のご友人が来て翌日の昼過ぎに帰っていく。彼らがどんな事をしているのか薄々想像出来てしまうが、屋敷に入る許可を得てまで調べようとは全く思わない。
(此処に来てから同じ女性を連れているところを見た事がないけど、どうやって出会っているのかしら? )
屋敷に来る女性は様々だけど幸いな事に貴族の令嬢には此処まで踏み切っていないらしい。ジャックのやり口に引っ掛かった貴族は私だけというのは何とも間抜けな話だ。
リリアナの怒りはジャックに対する女性問題の話だと思っていたけど表情を見るに違ったらしい。
「あの人の女性問題なんてどうでもいいわ! 私が怒っているのはお母様への態度よ。結婚式も無しって見下しているにもほどがあるわ!! 」
「リリアナ、前にも話したと思うけどこれは伯爵様の独断じゃないわ。私も同意しての結果よ。」
記憶操作した後の結婚式はどうするかという問題も出てきたけどそもそも結婚している前提だし、する意味もなかったので必要な書類を書くだけに終わった。
本来ならこんな扱いをされたら悲しいと思うしウエディングドレスに興味がない訳じゃないけど、この結婚事態が私達が助かる手段なわけなので悲しいという気持ちは湧かなかった。
「こうしてリリアナと一緒に居れるだけで私は十分幸せよ。」
これは偽りのない本心だ。本来であれば私は生きていたかも怪しいのにこうしてリリアナとお茶を飲んでお話出来てる時点で十分すぎる話だ。
「お母様が良いなら別に私も文句は無いわ……。」
それが伝わったのか先程までの怒りは静まっていて表情も穏やかになっていた。
「さて、もう少ししたら夕ご飯の材料を屋敷に取りに行かないとね。今日は何が食べたい? 」
そう言うとリリアナは目を光らせてオムライスと答えたので早速その材料を取りに屋敷へと足を運ぶのだった。
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