ファンの僕の夢の恋物語「君に気付いてほしい」

古国

第1話「違和感」

あの舞台の上で見た君の笑顔を忘れることはできなかった。

生まれて勇気を出して初めて行った推しのライブでの光景、声援は今でも頭に焼き付いていた。

一万人は収容できるライブ会場の一般席では周りにはファンクラブでチケットが買えなかった猛者や会場限定のグッズを眺めて笑っている人がいる反面僕のようなライブ初参戦の人も少なからずいた。

今日は会場で買ったグループのボーカリストのリンがプリントされている長袖のTシャツに黒の長ズボンで参戦した僕の頭の中には期待と不安があった。この格好は場違いなのか、どうやって応援したらいいのかな。

でも、そんな不安はライブが始まった瞬間すぐに消えた。みんな席から立ち上がり、「SHINESE」と声をかけ始め人生の中では一瞬の出来事なのに、すぐに濃くはっきり脳に焼き付いた。

そこから人生で一番充実した時間を過ごした。

見ている時僕は心に決めた。「このグループを世界一にしたい。」と



◇◆◇◆


「こら!、何度行ったらわかる。会議中の大事な箇所はメモを取ることだけではないぞ!!。それが将来どういった形になるか想像することだ!。想像力を働かせろ!」


週一回の会議では今度のライブでの入場曲の制作の進捗状況と踊る際の配置場所、銀テのタイミングなどの細かなところにわたってアイデアを出し合っていた。


まだ入社して半年のこの会社NREエンターテインメントの企画部署で働いている白崎悠生は企画会議終了後上司の黒山信士に注意を受けていた。

「分かったら次回から改善するんだぞ白崎!」と注意をうけた。

「すいません、次回から気をつけます。」


内心、なぜ僕ばっかり怒られるんだよと思いながら自分の席に戻り企画案をPDFにまとめていた。


黒山は入社してからずっと僕の教育係で多くのことを事細かく教えてくれるいい先輩であるが、面倒見が良すぎて少しでも気になったことでも注意してくることろが欠点だと思う。


いつも通りの残業を終えて家に帰った。ここは会社の社宅で周りを見渡しても明かり一つなかった。


「どうしてこんなに毎日大変なんだろう」と愚痴をこぼしながらご飯を食べていると携帯が震えルノがわかったので、見てみると

SHINESEとあった。

すかさずライブを見るとまだ誰も見ていなかったのか、それに反応したメンバーのミクが「あ、白さんだ!お疲れ様〜」と反応してくれて疲れが一気に飛んだ感じがした。

ファン歴4年でライブが終わってからよくファンクラブ内でのライブをよく見ていることから自分のファンネームである「白」と呼ばれることが増えたんだと思う。


すると推しのリンが「みんな、この時間に見てるって事は夜ふかししてるのかな〜、残業終わりなのかな〜。まぁそんな事は良くてー、今日も一日よく頑張りました。」

これのために生きていると感じ自分の中の何かが動き始めるのを感じたのだった。

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