嫌がらせされているバスケ部青年がお漏らししちゃう話
こじらせた処女/ハヅ
第1話
「はぁ…」
午前6時、自室のベッド。憂鬱な気分で朝を迎える。セミが鳴き始めて、色とりどりのアサガオが通学路を埋め尽くす。高校に入ってからはじめての夏だ。
中学からの経験で入部したバスケ部。そこは数ある強豪校の中の一つで、強い人がいっぱいいる。このバスケ部に入るために、嫌いな勉強を頑張って、合格してからもずっとワクワクしながらボールに触れていた。
「なのになぁ…」
行きたくない。練習がキツいのだろう、親や友人はそう思っているだろうか。俺も、そうならどれほどまでに良かったか、そう思う。
でも、そうじゃない。辛いのは体じゃなくて、心の方。人間関係で少し、つまづいているのだ。
「おはよーございます!!」
部屋の部室に入って割り当てられたロッカーのそばに行くと、一気に空気が凍りつく。
「うるせえな」
1人が呟くと、そこを中心としてクスクスと笑いの輪が広がる。
(でも黙って入ったら怒るんだよなぁ…)
理不尽すぎる縦社会だ。
二軍入りを果たしただけ。一年では珍しいが、入部早々一軍入りしている奴もいる。あいつもいびられているのだろうか。もしかしたらこういうことは日常茶飯事で、今いる先輩達も経験していることなのかもしれない。だからこういうのは洗礼だと割り切ることにしよう。
(またか…)
そうはいっても、これは酷すぎないか。ロッカーを見て思う。貴重品に手をつけられたことはないけれど、予備のタオルや着替えが泥だらけになっていたり、ぐちゃぐちゃに荒らされていたり。
(いじめみたいじゃん)
「下手くそ」
パス練習の時も、外周の時も、シャトランのときも常に誰かに見られてる気がする。表立っては何も言ってこないけれど、ドリンクボトルが無くなったり、体育館から出る時に靴が隠されていたりするのは困る。
誰かに相談、それも考えたけれど、もうすぐインハイ予選が始まる。そんな忙しい時に、選手でもない俺の問題で雰囲気を悪くしてしまうのも申し訳なくてできない。
まあ、こういうことに直接加担しているのは一部の人間。3年生が引退したら、同級生もまた入ってくるだろう。そうしたらこの環境も変わるはずだ。それまでの辛抱だ、そう思うことにしよう。
「…ま…しま?」
「…あ…わり…ぼーっとしてた…」
「朝練疲れたかぁ?俺もさぁ、先輩にしごかれてばっか」
教室の自席でぼーっとしていると、同じクラスであり、一年唯一の一軍である水城が話しかけてくる。
「…一軍も大変そうだな」
「そーだよー…こっからレギュラーになるのも層が厚すぎるんだよ…」
「先輩、怖い?」
「めっちゃ怖い‼︎すーぐ怒鳴るし」
「…俺も、さ…、…」
「でも、めっちゃ教えんのうめーの‼︎流石強豪って感じ‼︎」
「…教えてくれるのか?お前の先輩」
「ん?まあ。あと、この前凹んでたらアイス奢ってくれた‼︎」
「へ、へぇ…」
良かった、言わなくて。怖い怖いと言いながらも彼は先輩を慕っている。そんな奴に、言えるわけない。俺が嫌がらせされてるってこと。
「そっちはどんな感じ?」
こんな、恥ずかしくて惨めなこと。
「俺もお前と似たようなもんだよ」
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