君の祝福はやがて呪いに

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「憂鬱だ」                       



この時期になると複雑な気持ちになってくる。何故か、それは今日が葵ちゃん愛した人の命日だから。

今はお墓参りに行っている途中だ。あんまり思い出したくない記憶も、この時期になると毎年思い出してしまう。            




「結菜ちゃん今日はその‥‥‥伝えたいことがあって」  「なに?」           

                

私の好きな人、名前は伊東葵ちゃんに放課後呼び出されたんですけど。これは期待してもいいですよね、私にも春がやって来たと思っていいんですよね?


「結菜ちゃんのことが恋愛的に好きで、だからその‥‥‥付き合ってください!!」

やった!!その言葉を私は待っていたんだ。初めてあったときに一目惚れして、3年間片想いし続けてきたのだ。嬉しくないわけがない。


「私も葵ちゃんのことが好きです」              そう言うと葵ちゃんは満面の笑みで私に抱きついてきた。                        


「本当なんだよね、聞き間違えじゃないよね、本当に私を恋愛的に好いてくれてるんだよね?」

葵ちゃんが私から離れて、少し不安がって聞いてきた。


「不安にならなくて良いよ葵ちゃんのことは、ちゃんと恋愛的に愛しています」

そう言うと葵ちゃんは私の事を強く抱き締めてきた。


それから私は幸せな生活を送っていた。海に行ったり、お泊まりデートをしたり、とにかく私の生活は葵ちゃん一色になっていた。

そんなときだった、付き合ってちょうど一年の記念日。お泊まりで祝おうとしていたとき。

前日に葵ちゃんのお母さんから電話がかかってきた。なんだろうと思い、すぐに出ると。お母さんは、葵ちゃんが倒れたって言っていた。もちろんすぐに向かった。                      葵ちゃんは、私が病院に着くだいぶ前には起きていたらしい。


「葵ちゃん」

私は病室に来るや否や葵ちゃんの元へ駆け寄った。


「少し貧血で倒れただけだから不安にならなくていいよ」

と、私に大丈夫と言う葵ちゃんの顔は少し曇っていた。


「本当にだだの貧血何だよね、大丈夫何だよね?」

葵ちゃんは昔病弱だったらしく、それもあってかやはり不安になってしまう。 


「うん、大丈夫少し休んだら回復するから不安にならないで」

やはり葵ちゃんの様子は少し変だった。




それから3日がたった頃だった、私は葵ちゃんに迫っていた。

「葵ちゃんどうして嘘ついたの?」               薄々感ずいてはいたが葵ちゃんは、貧血では無かった。2日前に葵ちゃんのお母さんから病状は聞いた。 


「結菜ちゃんに心配かけたくなくて‥‥‥」          そういう嘘はあまりつかないで欲しい。


「確かに、死ぬかもしれない病気だって聞いてたら心配したけど、教えて欲しかったよ」               どうやら葵ちゃんがかかった病気は治すのが困難な難病らしかった‥‥‥


「嘘は確かに悪かったけど。大丈夫だよ私結菜ちゃん残して死ぬ気なんてないから、治ったらまたいっぱいデートしようね!!」


「もう嘘はつかないでね、約束だよ絶対元気になってね」

そう言うと、葵ちゃんは元気良く「うん」と答えた



それから約1年ほどたった。日に日に葵ちゃんはやつれて行ってはいたが、まだ空元気をしていた。一番苦しいのは葵ちゃん。だけど私もそんな姿の葵ちゃんを、見て嫌な予感が募っていった頃だった。

葵ちゃんの容態が急変したらしく、すぐにどうにかなってしまう訳じゃないらしい。が、かなり危ない状況らしかった。 


「葵ちゃん!!」

私が病室に入ると、ベッドに横になっている葵ちゃんと葵ちゃんのお母さんがいた。


「結菜ちゃん来たくれてありがとうね、お母さん少し二人きりにさせてくれないかな?」

葵ちゃんがそう言うと、葵ちゃんのお母さんは病室から出ていった。


「葵ちゃん大丈夫だよね、またデートするって約束したよね」

私は涙目で消え入りそうな声で言った。


「ごめんね‥嘘はもうつかないって言ったはずなんだけどね‥‥‥」

そう言った葵ちゃんは顔を曇らせ、苦しそうにしていた。


「何でもう諦めてるの、私嫌だよ葵ちゃんが居ないのなんて」

何故か冷静な葵ちゃんに比べて、私は取り乱していた。


「私も結菜ちゃん残して死ぬのは嫌だよ。でももうどうしようもないから、ただ結菜ちゃんを想いで私に縛り続けたくないの。だから私の事は忘れて、もう別れよう」

そう言った葵ちゃんの目には涙が浮かんでいた。 


「嫌だよ忘れたくても、忘れられないし別れたくもないし。縛られたってなにも思わない私の中ではそれほど好きなんだよ?」

そう言った私はみっともないほど、泣きじゃくっていた。


「うーーんしょうがないな。じゃあさ、私の分まで生きて、そしてもし結菜ちゃんが私とおんなじところに来たら。沢山話をしてよ、それまでの少し長いお別れ」

そう言った葵ちゃんは私と同じように泣いていた。


それから3日で葵ちゃんは旅立ってしまった。その日はとある記念日だった。




あのときを思い出しながらお墓に着く。    

葵ちゃんのお墓の前には、とある人がいた。


「結菜ちゃん毎年ありがとうね。でも嫌なんじゃない?ここに来るあなたの顔、少し苦しそうよ」


葵ちゃんのお墓に来るととっても、複雑な気持ちになる。でも一番は葵ちゃんに会いたくなってしまう、でもそれは、葵ちゃんとの約束に反してしまうから出来ない。


「いいえ大丈夫です、葵ちゃんのことは好きですから」

そう言うと葵ちゃんのお母さんは、顔は少し晴れた気がした。


「そうなら良いのよ、ごめんねお節介で」 

そう言うと葵ちゃんのお母さんは離れていった。   


ここの前に来ると毎年思う。葵ちゃんに会いたい死んでしまいたいとでもそうすると、葵ちゃんとは違うところに行ってしまう気がして出来ない。                           約束もあるしね、こんな世界でも葵ちゃんがいない世界やっぱり生きるしかない。いつか死ぬ、その日まで。

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