第4話:魔法は封印しとけっつうの。
ってことで、土曜日。
僕はアリスを連れてアミューズメントパークに来ていた。
アリスは何かの用事で僕と行動を共にするもんだと思ったのかメイド衣装
のままやって来ていた。
メイドのコスプレだと思われてアミューズメントパークの案内係の
おネエさんと間違われそうだ。
「私に付き合ってって、ここのことだったんですか?」
「うん、一人より二人のほうが楽しいだろ?」
「そうですけど・・・もっと大事な用かと思いました」
「これも大事な用なの」
「私、こう言うところはじめてです」
アリスはアミューズメントパークなんて始めてだったらしい。
なにやってたんだろう?最近の女の子なら優先して行ってるだろうに。
たぶん都会に初めて出てきたんだろうな。
で、まずはハナっから「絶叫マシン」だろって思ってアリスと乗ることにした。
高いところが苦手だってアリスは言ったけど、そんなもの一人で乗ったって
つまんない。
僕が無理くりアリスを乗せたもんだから、このあと大変なことになった。
アリスは普段、普通にホウキで空飛んでるから絶叫マシンなんか屁でもない
と僕は思ったんだ。
マシンが超高速で走り出すとアリスは思ったより怖かったのか魔法を
使って絶叫マシンを途中で止めちゃったんだ。
しかも一番高い場所に・・・俺たちが乗ってるボックスが絶叫マシンの
てっぺんで・ぽつんと止まった。
僕たちの頭の上をカラスが「アホー、アホー」って飛んで行った。
最初はマシンの故障かと思った・・・でも違ってた。
「あ〜怖かった・・・なにこれ、ビビっちゃうじゃないですか?」
「まったく失礼しちゃうわ・・・怖くて思わず止めちゃったじゃないですか」
「え?アリスが止めたのか?」
「だって怖かったんですもん」
「まじでか・・・そんなことしたら他の客に迷惑かけるだろ?」
「だって」
「つうか魔女って絶叫マシンなんかより早く飛べるんだろ?」
「スピードに慣れてんじゃないのか?」
「ホウキで空を飛ぶこととこれは違います・・・これは自分でコントロール
できないじゃないですか」
「にしたって、すぐに戻せ、戻せ・・・逆にこんな状況じゃみんな帰れないだろ?」
「分かりました、やってみます」
そう言ってアリスは魔法をかけるとボックスは少しづつ動き出した。
しかも歩くより遅く・・・のろく、亀みたいに、かたつむりみたいに。
結局、出発場所にたどり着くまでに一時間かかった。
絶叫マシンの意味ないし・・・マシンが止まった原因がアリスだって
係りの人にも誰にもバレてばいからいいものの・・・。
やれやれだよ。
「怖かったですけど、楽しかったですね春樹さん」
(怖かったのか楽しかったのかどっちなんだよ、めっちゃロスだし迷惑だよ」
「遊びに来てる時くらい魔法封印しとけっつうの」
予期せぬ出来事に僕はつい口調が荒くなった。
「怒ってます?」
「怒ってないよ」
「怒ってるでしょ?」
「だから怒ってないってば!!」
「怒ってるじゃないですか?」
「いやいや、もう終わったことだし、まじで怒ってないから・・・」
「だって私、皆さんにも春樹さんにもご迷惑おかけしましたし」
「いいよ・・・びっくりしたんだもんな・・・君を無理にアレに乗せた僕が
悪かったんだよ・・・」
「いいから、あっちへ言ってちょっと休憩しないか?何か飲もう」
「喉乾いたわ・・・魔法の使い方が間違ってるんだよ」
「ごめんなさい」
そう言ってアリスは申し訳なさそうに僕のあとについてきた。
つづく。
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