第20話 「ラッピー散歩に行こう!」

 20


 やっぱり連勤は疲れる…


 今日で最終日だったし、明日の休みとスッキリ快調を考えるとドンドン元気が出てきて、結局逆に疲れちゃった。


 そのせいかな?

 夕飯を食べたらめちゃめちゃ眠くなって炬燵に入ったまま寝ちゃってた。


「はぁ~あっ」

 デッカイあくびが出た。


 私は炬燵から出ると、体中の水分が足りていない気がして500mlのミネラルウォーターを冷蔵庫から取り出して一気にがぶ飲みした。


 冷たい水が体中に染み渡る!気持ち良い!


「ふぅ~」


 ペットボトルを片手に、点けっぱなしにしてしまっていたテレビを見ると、22時から始まるドラマがやっていた。


「あぁ……もうこんな時間なのか、寝すぎちゃったな」


 ガサゴソ……


 私が一人呟いていると、炬燵が動いた。


「ん?」

 って見ると、中から出てきたのはラッピー。

 ラッピーは私と同じで寒いのが嫌いみたいで、よく炬燵に潜り込んでる。

 全身突っ込んでよくのぼせないなぁ……って思う。


 ラッピーはどうやら私と一緒に寝てたみたい、炬燵から出てきた時、口の端が寝癖みたいに歪んでた。


「ハハ! ラッピー、おくち変になってるよ!」


 とラッピーに話し掛けた時、


「あ……そうだ……」


 ってある事を思い出した。


 それは、ラッピーに『明日は散歩に行こう!』って約束してたって事。


 夕飯後の運動を兼ねて、ぶぶちゃんが帰ってくる前に内緒でラッピーと散歩に行こうと考えてたんだった。


 私は時計を見た。


 22時43分……


 もうこんな時間……


 どうしよう……


 昨日の私はもっと早い時間に散歩に連れていく気だった。19時くらい。

 それがもうこんな時間……

 あまり遅い時間だと、ラッピーが一緒とはいえちょっと怖い。

 治安が悪い街では無いけど……流石にね……


 私が悩んでいると、ラッピーは私の横にちょこんと座った。

 私はそれを見て、

 催促してるんだな……って感じた。


 ラッピーの目が私に

『お願い』

 って言ってる。


 そんな風に見えた。


「うん! 分かったよ! 行こう!!」


 私はラッピーの頭を撫でた。

 可愛いラッピーだもん、約束を破る訳にはいかない!

 昼食と夕飯の間に飲んだ便秘薬がいつ効いてくるかちょっと心配だけど、大体いつも翌朝に快調って感じだから大丈夫っしょ!

 夜遅いって言ったってどうせ近所だもん、何かあっても土地勘がある!

 お化けなんか無いさ♪ お化けなんてクソさ♪


 私は一服をしたらラッピーと散歩へ行くことに決めた。

 コースはぶらりって感じ、特に決めなくても良いかなって思ってる。

 あ……でも、私が働いてるスーパーの目の前にある並木道は通りたいかな!


 100メートルくらい真っ直ぐに伸びてる道で、道幅も広いし、車は通行禁止だからゆっくり散歩出来そう。


 今の季節じゃもう遅いけど、道の横の並木は春や夏には緑葉のカーテンを広げて、秋には紅葉が私の目を楽しませてくれる。


 そんな所をラッピーにも教えたい!


 実は私が初めてこの街に遊びに来た時、私とぶぶちゃんは自転車デートをしたんだ。


 秋だったから葉の色がすごく綺麗で、私はラブストーリーの登場人物になったみたいな気分になれた。


 並木道を通った先の大通りを挟んだ所にある私の今のパート先も、その時はシンデレラ城に見えたくらい。

 今じゃもうそんな風には一瞬だって見えやしないけど。

 ただデカイだけ、どんだけの土地使ってんのよ!

 でも、あの並木道がお気に入りなのは変わらない。


 そんな事を考えていたらワクワクしてきた!


 我ながら切り替えが早い!


 さぁ、一服終了!


「ラッピー散歩に行こう!」


「ワウッ!!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る