異聞・長屋王の変

木春

《はじまり》

晩照

「一体どうしましたの?いきなりやって来るなんて」

「……うん。安宿……うん」

「何かありました?」

「いや、えっと。その……。ねぇ、安宿媛。僕は。僕は……死んでしまうのだろうか」

「どうして?そんな、いきなり」

「父上も、お祖父様も、そうだった。……って」

「それは!……でも!皇子様はきっと、違いますわ」

「そう、かな。皆、心ではそう思って居るんだ。きっと」

「……なら!私が。私が!神様にも、仏様にも、お願いをします。皇子様を必ずお守りしてくださいって。だから、大丈夫」

「本当?」

「えぇ!………私は、貴方様に生きてほしいですわ。私の命を分けてでも」

「……安宿媛。僕から離れないでおくれ。何があっても」

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