恥ずかしかったけど

きっと。

僕の顔は真っ赤になっていたのでしょうか。


何故なら。

笑みを浮かべて近づく彼女の顔が。


意地悪そうな表情だったから。


「ふふ・・・」

二度目の笑顔は流石に僕をムッとさせたのです。


僕が貧乏学生だということは。

彼女も知っている筈なのに、何度もからかうのはひどいと思ったから。


だけど。

僕の想いは彼女の一言で消し飛んだのです。


「便利じゃない?」

「えっ・・・?」


予想もつかない言葉に僕は聞きかえしました。


「だってぇ・・・」

僕にとってドストライクなモジモジ顔が呟くのです。


「もう一つ、ポケットがあるみたいだしぃ・・・」

「はぁ・・・?」


呆れるほどの変な理由に僕は顔を歪ませたのです。


【ぷっ・・・】

二人、同時に噴き出した。


「はははは・・・」

「ふふふふ・・・」


僕達は笑いながら歩きだしました。


僕の左腕の中に差し込んだ彼女の右腕の温もりが。

とても、くすぐったくて。


今でも。

思い出されるのです。

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