第4話

開店三日目。

俺は、いつも通り起きてパンを作った。

今日は20人ぐらい待機している。


うん、多いな。

昨日と比べて待機する人が増えている。

もしかして、昨日の掲示板効果かな。

そんなことを考えつつ、俺は開店準備をして、店のドアを開けた。

「はい、"ダンジョンベーカリー"オープンしましたよー!」

ちなみに、店の名前は"ダンジョンベーカリー"にした。そのままだな。

続々と客が店に入っていく。

ちらほらと冒険者の服装をした人も見える。


「店主、これよかったらどうぞ」

すると、強そうな見た目をした冒険者からあるものをもらった。

「これ、レアな食材ですよね?もらっていいんですか?」

「いいよ。たまたま手に入れたんだ。ここで使ってもらったほうがみんな喜ぶからね」

その人からもらったものは、"フローズンパウダー"だった。

下層で出るウェアウルフという魔物を倒すと、たまにドロップするアイテム。

これは食材としてつかえて、例えばパンに練りこむとひんやりとした感じになる。

今は夏だからちょうどいい。

そして、この"フローズンパウダー"の効果がとんでもなくすごい。


"50%ダメージ軽減"


だから、冒険者の間で高値で取引されている。

だけど、肝心なのは味だ。

この粉は結構苦い。

そして、少量しか取れないから少しずつ使うというのができない。

だけど、今回もらったのはざっと100gぐらい。

少ないと思うかもしれないが、大量だ。だいたいこれだけで1000万ぐらい。

「すみません、あなたって何者なんですか?こんなすごいものを大量って、、」

「一応S級冒険者らしい。あ、Dwitchもやってるよ」

Dwitchとは今流行っているダンジョン配信サイトだ。

そんなことより、S級冒険者?!

全世界で100人しかいない、あのS級冒険者?!


「どうしてそんなすごい人がここに、、、」

「たまたま掲示板で見たんだ。ここがすごいらしいって。それで、昨日の閉店間際に嫁に買いに行ってもらったんだ。そしたら、そのダンジョンパンってやつがとんでもなく美味くて。しかも、ダンジョン産の食材だから腹持ちもよくて、普通のパンを食べるよりよっぽどいい。自分で来てみたかったから、ダンジョンに行くついでに寄ったんだ」

やはり掲示板か。

てか、S級冒険者がそんなに早口でしゃべるほど、俺のパンは美味しかったのか。

「店主、もしかして料理スキル持ちですか?」

「一応、特級料理スキルを持ってます」

「特級?!いくら料理スキルでも、特級ならどこでも雇ってもらえるぐらい有能だろ!すごいな、特級持ちが自分で店を開くって。なんで自分で店を開いたんだ?夢だからか?」

「夢なのもあります。でも、誰も料理スキルの特級だと信じないし、特級だとしても見向きもしてもらえないので。」

「そうか。よし、今からここを宣伝してみる。」


ここから、俺の店は急成長を遂げていく。

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