第28話 貴様の目は節穴か?

その日の夕食は、

いつもの様に、3人で食べた。

心なしか、沙月さんは俺に近く

夏川先生は少し遠い気がする。



翌日、夏川先生経由で松岡所長と

連絡を取り、住居の件を確認する

事になった。


今日もいつものスタッフさん(横山君、30歳、既婚者)に案内してもらい、

2日前に来た、小会議室の様な部屋に来た。

中に入ると、松岡所長が一人座っている。

「松岡所長、お忙しいところ申し訳ありません。」

「構わんよ。相楽君も掛けなさい。」

「はい、失礼します。」

「今日は、住居の話しだと伺っているが、

間違いないかな?」

「はい、その通りです。昨日、夏川先生と

リハビリが2週間程で、終了出来ると

教えてもらいまして、住む家を

探してくださいと、伝えられてます。」

「ほう。夏川君からも住居についての

申し出があったが、何か希望はあるかな?」

「差し支えなければ、物件を確認することは

可能でしょうか?」

「ふむ。可能ではあるが、間取りや

住む場所の希望はあるかな?

賃料は気にしなくて良いぞ、

こちらとフローティア王国とで

相楽君に住居費用については折半するぞ。」

「賃料かからないんですか?

良いんですか?」

「但し、家具や家電などは、自身で

購入しなさい。あと、家賃に含まれない、

町費や水道、電気、電話、

マンションなら管理費だったかな?

などの費用は自己負担してもらうよ。」

「分かりました。間取りとしては、

1LDKか、2LDK位が良いのですが?

場所については土地勘が全く無いので

紹介していただく物件の周辺を

見に行きたいです。」

「1LDKかの?まぁ男の一人暮らし

ならこんなものかと思ったが、

2LDKか、広過ぎると管理が

大変だぞ?」

「松岡所長、

実は結婚を前提にお付き合いを

することになりまして、

その方と一緒に住もうかと………。」

その言葉に、松岡所長が笑みを

浮かべながら

「相楽君、そうか……ようやくか、

おめでとう。必ず幸せにしなさい。

ご両親への挨拶もしなければいけないね。

家は、私の方で見繕って、相楽君に

見に行ってもらおう。

その時は、結君も一緒かな?

いや〜楽しみだな!!」

(松岡所長ありがとうございます。

1個聞きたい!ユイって誰よ?)


「所長?すいません。

ユイってどなたでしょうか?

うちの嫁は、卯花沙月と言う

名前ですが…」



松岡所長が鳩に豆鉄砲をくらった様に

目が点になっている。

「はっ?

夏川結君では無いのか?」

(夏川先生、ユイって、言うのか。)



「ほう。それはすまんことをしたな。

だが何故じゃ!あんな器量の良い娘と

一緒にいて、惚れんかったのか?

あれほどの娘は、二度と会うことは

無いと思うが!貴様の目は節穴か?」

(何?いきなり爺さんが切れた?!

そんなに矢継ぎ早に言われても、

夏川先生は確かにすごい人だ。

それに器量がいいのも分かるけど、

惚れる?俺が惚れるなんて、

おこがましいだろ、それは?)

「松岡所長?夏川先生みたいな、

すごい方が、こんな40過ぎた行き遅れ

独身を相手するわけ無いじゃないですか?

夏川先生なら、もっと条件が良い方

から選びたい放題だと思いますし。」


「相楽君……お主は………

はぁー、結君が不便に思えてきた。

(小声)姫殿下もだな。


よし、分かった。

住居については、

見に行けるように手配するが、

物件の資料については、

明日の訓練の際にでも届けさせよう。」

「ありがとうございます。

よろしくお願いします。」

「それと、相楽君には、

このカードを渡しておこう。

何時までも迎えに行なければ

こちらにこれないと言うのは

不便じゃろう。」

松岡所長が、紐の付いた金属プレートを

俺に差し出してきた。

「所長、これは?」

「ふむ。この施設、センターゲート

の通行パスだ。

これがあれば、相楽君の部屋と

この部屋、訓練で使用する部屋などの

一部ではあるが、セキュリティの解除

が出来るようにしてある。」

「はい。ありがとうございます。」

「あと、君がいる部屋に電話と

ノートパソコンを設置する手配をしている。後で確認しなさい。


住居に引っ越した後は、

そのまま事務室としては使える様に、

机なども設置する予定じゃから、

覚えておいてくれ。

話は以上だか、質問はあるかの?」

「ありません。」

「では、明日の訓練も頼むぞ。

相楽君、部屋には戻れるかな?」

「何とか戻れるかと……。」

「ちと、待ちなさい」

松岡所長は白衣のポケットから、

携帯電話を取り出し、

誰かに部屋に来るように言っている。

1分位で、電子ブザー音が鳴り、

扉が開くとそこには、いつもの横山君

がいた。

俺は横山君に案内され、自分の部屋に

戻っていった。

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