ニセ勇者 vs. メカ勇者
べんべん草
プロローグ 神話
この世界は一つの大陸の中に完結する。
その大陸の西半分を支配するのは、アスカリアと呼ばれる王国だ。
各種の宝石や金銀で彩られた、煌びやかな王宮の下、一面に広がる城下町。
緑生い茂る大自然の中で、地平線まで続く一面の小麦畑と風車小屋。
王家の力によって統一されたこの地から、戦争は永久に追放された。
かくして、アスカリア王国は、未来永劫の平和と繁栄を約束された
―かに見えた。
王国の砂浜から12
木々どころか草本さえも生えぬ不毛の
いや、それは良く見れば山ではない。恐怖の大王の城砦だ。
【:幾千年の封印が解けた時、魔王は悪魔の大軍と共に、再び息を吹き返す:】
アスカリアの地に伝わる、カビの生えた神話の一節である。
王国の人々は、その城から魔物の大軍が湧き出した後、その神話の記述が真実であろうことをようやく理解した。幾千もの魔物からなる魔王軍が、荒れ狂う海を越え、岸辺から森の木々をすり抜け、平和な王国領へとなだれ込んだのだ。
大挙して攻め寄せる悍ましい魔物の群れの前に、王国軍は戦わずして逃げ出す始末。王国の命運は尽きたと、誰しもが思った。
唯一の希望といえば、やはり神話の記述である。
【:復活せし魔王、勇者がそれを封印する:】
神話の中でも、特に子供じみた一節として風評される部分だ。
勇者とは何なのか?魔王を封印してくれるとは結構な事だが、それほど強い存在なのか?それがどこかから降って来るのか?それとも湧いて出るのか?
それはあまりに不確かで、望み薄な希望だった。
魔王にとっては、その希望が唯一の不安要素だった。
数千年前、何か強大な存在に打ち破られて封印されたという記憶。それは、
とはいえ、すべては過去の話。もはや魔王軍を止める現実的な手立ては存在しない。かくして、アスカリア王国の歴史は、ここに終わった
―かに見えた。
そんな時に、勇者は、現れた。
その報せに、王国は沸き立ち、魔王軍は震え上がった。
その存在に遭遇したと思われる上陸部隊は、瞬く間に散り散りになった。部隊を率いていた四天王たちは、その存在の恐ろしさを伝書
金色の長髪を風にたなびかせ、あらゆる魔物の攻撃を祓い、聖なる剣の一振りで魔物の群れを薙ぎ払う戦乙女。
俄かには信じがたい話だった。だが、その四天王のうち二名が相次いで消息不明となり、一名が死にかけで魔王城に退却してくると、いよいよ城内はパニック寸前に陥った。
上陸部隊は、ひと月も持たずに壊滅した。四天王も二人を残すのみである。
そして当の魔王本人は、勇者との相対と再敗北に恐れをなし、上陸作戦をやり直すことをしなかった。代わりに、自らの城に閉じこもり、籠城を決め込むばかりであった。
かくして、人々を恐怖のどん底に陥れるはずだった魔王軍は、今や勇者の魔王城侵攻の危機に怯え切っていたのだった。
【:勇者は再び現れ、王国を救った:】
これは、そんな一節が神話に書き足されてから、1年くらい後のお話。
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