第155話

「翻訳魔法は?」 


「洞窟に魔力吸収されるから駄目なの」


 出たよ魔力吸収。剣の時もそれのせいでソランに抱えてもらって飛んだんだったな。


 とりあえず封印を見てみようと思い、ロメイアに場所を聞くと、城の隣にあると言われた。

 めちゃくちゃ近い場所に封印してあって、ニアラはアホかと思ったがアホだったら二桁にはなれないので、封印が解かれないことに相当自信があるのだろうと思い直した。


 ヴァイオレットたちも付いてきて城を出ると、本当に隣に地下へと続く大階段があって、観光客や学者らしき人たちが出入りしている。


「うっかり封印が解かれたらどうするんだ……」


「むしろ、できるもんならやって欲しいの」


 一度も解かれたことのない封印だから半ばヤケになってるんだな。

 階段を降りると、長く続く洞窟の左右の壁際に隙間なく露店があって商売していた。

 祭りかよ。


「人が集まるところに店を出すのは当然なの」


 一応兵士がいて、怪しい店は取り締まっているから心配ないらしい。

 露店も少し気になるがとりあえず封印を見に行こう。


 洞窟の奥に行くと、5メートルくらいの大きな扉と、右に石版左に石の箱があった。


「右の石版に長文が書かれているの。左の箱にも書かれているけど短いの」


 まず右の石版を見る。


「えっと、左の箱にお金や価値のあるものを入れてください。箱の後ろのメーターがたまり切ると宝物庫は開きます。あなたはどれだけの貯金ができるでしょうか?」


「ダーリン読めるの!?」


 あれ?なんで読めるんだ?…………あ、これ日本語だ!

 石版を読むに、これはあれだ。五百円を入れて貯金箱が満タンになると百万円貯まってるやつ……百万円貯金箱みたいなやつだ。


「ロメイア、ニアラは左の箱に鎧を入れたんだろ?」


「なの。そしたら、鎧が消えて扉の向こう側から妖精の鎧の気配がするようになったの」


 箱の後ろのメーターを見ると、三十センチくらいあるメーターの一ミリくらいが光ってる。

 宝がどれだけ入ってるか分からないが妖精の鎧が入っていてこれか。


 多分妖精装備シリーズは国一つ買えるくらいの価値はあるだろうに。それでこれか。

 これ作ったの多分脱走勇者の誰かだろうけど何を買いたくてこんなバカみたいな貯金箱作ったんだ?


 箱の文字は注意書きだな。

 百垓ダーガ、ダーガって当時の通貨か?

 このメーターは百垓ダーガまで貯まりますか。京の上の桁の金額集めて何したいんだ?


 まあこの扉が開かない理由がわかったぞ。

 この世界の人々は文字が読めないなら貯金できない。


 日本語が読める他の勇者は個人だからこんな馬鹿げた金額集められない。そうやって数百年以上放置されたんだ。


「剣、試しにお前入れてみるな」


『え?ちょ主……』


 妖精の剣を放り込むと一瞬で消えてしまって、メーターが気持ち増えた気がした。

 海賊から奪った財宝の中で一番高そうな金の彫像を入れると全く変化が見られない。


 この1ミリは先人たちの努力の結晶だということが分かって少し涙が出てきた。

 そうだ。アダマンタイトの剣を入れてみよう。


 剣を入れると妖精の剣よりも僅かだがメーターが動いた。しかし同量のただのアダマンタイトのインゴットでは全く動かない。


 箱にギリギリ入るくらいの大きさのアダマンタイトを入れるとアダマンタイトの剣くらいメーターが動いた。

 加工した方がメーターは上がるのか。希少価値ってやつか?それとも芸術的価値?


 海賊の財宝全部入れてみよう…………ちょっと動いたな。金銀程度じゃ駄目か。


「帰る」


「もういいの?」


「少し準備が必要だ」


 帰りは露店を冷やかしながら俺は城に戻り、スミススライムたちを使って準備を進めた。







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