第83話

「てことで全員冒険者登録するけど良いか?」


「勝手にしてくれ。それにしてもそいつら全員がダンジョンマスターとはな。緊急事態宣言物だぞ」


 向き合って座る俺の後ろの皆を見て、もうジェノルムは俺に何を言っても無駄だと諦めてしまったようだ。


「私たちは登録済みなので大丈夫ですよ」


 ソフィアたちがギルドカードを見せてきた。

 カードはオリハルコン製、SSランク冒険者のカードだ。


「マスターになる前は三人でパーティーを組んでたんだー」


「楽しかった」


「それって何年前だよ?」


「100年ほど前ですね」


「……若かりし頃」


 鑑定で裏切り以外は情報を見なかったけど、こいつらを一体何歳なんだ?


「100年前?…………もしや、エターナルブレイブの方々ですか⁉」


 ジェノルムは少年のようにキラキラした目でエルフ三人娘を香ばしい名で呼んだ。

 エターナルブレイブて……。


「その名前を言わないでー!」


「…………若き日の過ち」


 否定しないってことは中学生が名前を付けたようなパーティー本人たちなのか。

 ジェノルムは大興奮だ。サインを貰おうとしてる。


「そんなに有名なのか?」


「当たり前だ!いくつものダンジョンを踏破し、秘境に入っては財宝を持ち帰ったと言われている伝説のオリハルコン冒険者パーティーだぞ」


 それからもジェノルムはオタクのように彼女たちの逸話を延々と語った。

 それに比例して三人の顔が赤くなっていくばかりだった。まあ、エターナルブレイブなんて名前連呼されると死にたくなるな。


「ジョーカー、すげぇ奴らの家族を人質に取ったな」


「………………命があって良かったです。しかし何故それほどの強者が中堅の下位程度にいたのでしょうか?」


 ジョーカーの仮面の端を見るとびしょびしょに濡れていた。

 下手したら返り討ちにあっていたところだもんな。しかし、冷や汗かきすぎだろ。


 まあ、彼女たちがランキングが低い理由は俺は分かる。

 三人のダンジョンはあまり凝ってなく、ひたすら部屋を置いてモンスターを配置してるだけって構造だ。


 俺の初期のダンジョンのようにポイントが勿体無いからと言う理由ではなく、複雑な構造を持たせるために階層追加コマンドだでダンジョンを作らず、モンスターに新たな階層を掘らせるマスターは多い。


 しかし彼女たちは、最初のポイント枯渇期に少しだけ自力で掘ってその後は階層追加だけしていたようだ。


 罠も宝箱もない。

 宝の無いダンジョンに需要はない。

 プレイヤーとしては一流だっだが、クリエイターとしてはイマイチだったってことだな。


 そんな旨味のないダンジョンでもランキングの中位にいた理由は、マスター本人の魔力をDPに変換してやり繰りしてたからだな。


 裏を返せば、ほとんど冒険者が来ないダンジョンでDP収入を己の魔力頼みな状況なのに中位に居られるほどの膨大な魔力をこの三人は持ってるということだ。





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