第80話

「てゆう事がありまして」


「なぜ敬語なんだ?」


「いやあ、また仕事増えたかなーって。申し訳ないなーって思って」


「まあ増えたがな!」


 今回のバトルと同盟についてジェノルムに報告に行くと、もうどうにでもなれとやけを起こされてしまった。

 良いトコのケーキで機嫌を取ってるのが今の状況だ。


「で?どこのダンジョンがお前と同盟になったんだ?」


「えーっと、こことこことここと……」


「おいおい、オネストダンジョンやクラウンダンジョンかよ。ヴァイオレットさんに続いて大物を仲間にしたな」


 オネストダンジョンはソランのダンジョンだ。

 精神操作系のモンスターが多くてダンジョン内では本音でしか話せなくなるのだ。

 新しい絆ができることがあるが、逆に壊れる時もあるとかないとか。


「スライムダンジョンが本部のグランドマスターに目をつけられるようになった。もうお前のこと隠せねえぞ」


「…………スライムダンジョンのマスターは友好的だって言えば良いんじゃないか?」


「そうかなあ?まあ、俺が悩むことじゃないか。とりあえずこの案件はグランドマスター行きだな」


 それからは暫く世間話をする。

 頭のおかしい聖女様が脱走してうちに来たが、ちょうどダンジョンバトル中で中に入れなくて立ち往生してる間に兵士に連行されていったらしい。


 ジョーカー、グッジョブ!


 各国がそこそこの人数の斥候兵を神聖国に送り込んでるらしい。

 何故か移動するだけの武装集団が多かったのはそれでか。勇者に目をつけられる前に何とかしないとなぁ。


「そうだ!剣聖がお前のダンジョンに向かったらしいぞ」


「物騒な名前の人が来るなあ!誰?」


「簡単に言うと、この世界で最強の剣士だ。リシーア王女と違って人の話を聞くくらいの常識はあるから話せば分かる人だが、注意はしといた方がいい」


「忠告どうも。それじゃあ気をつけてその剣聖さんを見に行ってみるよ」


「あれが剣聖……」


「ただの爺じゃねーか?」


「甘いわよチース。あのおじいちゃん、以前あたしのダンジョンに来たけどSランクモンスターなんて敵じゃなかったわ」


「マジですか!」


 司令室でマスターたちと見ているモニターに写ってるのは、一人の老人。

 和服のような着物に五本の刀を腰にさしてのんびりと歩いている。


 小手調べにアダマンタイトゴーレムスライムを一体送り込んでみたら一刀両断、瞬殺だった。

 アダマンタイトって切れるんだ……なんだあのチートジジイ。この世界年寄りの方がただ者じゃないやつが多いな。


 何故か鑑定しても、ぐさぐさに斬り刻まれた画面が出てくる。

 鑑定を斬ったのか?そんな無茶な……。


「どうにかしてあの爺さんの目的が知りたいな」


「ユースケ様、儂に任せてもらっても構わんかの?」


「老師、大丈夫か?」


「奴とは顔見知りでしてな。まあいきなり殺されはしないと思いますじゃ」


 なんか自信あるみたいだしお願いするか。

 老師は散歩にでも行くようにゆっくりと司令室を出ていった。

 老師が第二迷路に向かってる間にジジイは第一迷路を楽々と突破。タンクスライムも弾を切られてあえなく撃破。


 もうこのジジイを止めることはできない!

 ジジイが第二迷路の中間まで来たところで老師と鉢合わせした。


「ゴの爺じゃねえか。なんでここに居やがる?」


「ほっほ。相変わらず汚い口じゃのう小僧」


 そう罵り合って二人は戦闘を始めた。

 おいおい、なんで戦いになるんだよ!


「…………真剣白羽取りって指二本でできるものですかね?」


「斬撃飛ばすとか、もはや魔法でしょあんなの……」


「……爺怖い」


 確かに剣聖のジジイはすごい。だけどさあ、なんでこっちのジジイ老師もそれに渡り合えるくらい強いんだよ⁉

 もうどうやって戦ってるのか俺には見切れない。


 戦いを目で追えてるのは、自力でマスターに選ばれた俺以外全員だ。

 下位のダンジョンマスターたちは目で追うのがやっとみたいだがな。


「ち、ちょっと行ってくる」


「お気を付けて。どうか死なないよう」


 縁起でもないこと言うなよ。





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