第15話
「どうしたんですか?皆さん」
ガキ……少年が不思議そうに、黙ってる俺たちを見てると先程まで商品を並べていた妹すっと立ち上がって近づいてきた。
「だから言ったじゃないですかマ……兄さん。この情報に銅貨一枚は安すぎると」
良かった。妹の方は常識があったようだ。
「銀貨一枚にするべきでした」
前言撤回!
「そうかな?じぁあこっちの価値はこの人たちに決めてもらおう」
バサッと、カウンターの下から少年は紙の束を取り出して置いた。
「これは!」
「五層までの地図です。と言ってもどの層も道は似たような物ですが。これなら銀貨一枚くらいはするんじゃないですか?」
「銀貨二枚でしょうマ……兄さん」
その地図は精巧に作られていて、所々に出てくるスライムの名前やトラップの種類が書かれている。
これをギルドに持っていくだけで金貨五枚は貰えるだろう。
「一枚だ」
「ほぉらぁ」
「くっ、負けました。さすが兄さん」
俺が人差し指を立てながら言うと、少年は勝ち誇った顔をし、妹の方はグッと拳を握りしめて悔しがった。
「チッチッチッ、二人とも外れだ。ミスリル貨一枚だ。ほら」
「「なっ!?」」
俺がパーティー共有財産の内の半分を出したことで他の二人が驚きの声をあげる。
この兄妹は物の価値が分かっていない。
商人ってのは何でも高く売るものなのに、この二人は何でもかんでも安く見積もりすぎていてる。貴族の子供もびっくりの金への無頓着さだ。
浮世離れした非常識さを持ったこの二人が、悪い大人に目をつけられて利用されるのは、一人の大人として良い気分がしない。それを分かってもらいたいから少し多めに出した。
「ミスリル貨一枚?」
「そんなに頂いていいのでしょうか?」
「いいっていいって。さっきの情報分含めたらこっちに損はない」
本当のことを言うとかなりの大損だが、この二人が将来悪い大人に騙されてほしくないからな。
「うーん。でもなんか悪いなぁ。よし、じゃああれを。コーアちゃん、あれを取りに行くよ」
「はいマ……兄さん」
そう言って少年とコーアちゃんと呼ばれた妹は店の奥へ行った。
コアちゃんさっきから兄さんを呼ぶとき変じゃないか?
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