西にはあるんだ夢の国

勝利だギューちゃん

第1話

「まだかな」


僕は今、歩いている。

西に向かって歩いている。

西に向かって歩き続けている。


こうなったのは、少し前。

というか、昨年の今頃。


「幸せになりたいか?」

「あんた誰?」

「わしは、神様じゃ」

「うそつくな」

「本当じゃ。免許証みるか?」


本当に神様のようだ。


「再度訊く。幸せになりたいか」

「もちろん」

「なら西へ歩き続けろ」

「やだ。めんどい」

「いいから歩け」

「一人じゃ無理」


「ほらくじけないの」

「へいへい」

今、声をかけてのは天使の女の子。

西へ行くのにサポートしてくれる。


もうひとつは、他の方角に進まないための監視役。


「あっ、海だ」

「本当きれいね」

「進めない」

「泳いで」

「泳げない」


そう、ぼくはハンマーボーイだ。


「仕方ないわね」

天使は魔法をかけた。


泳げた。


こんな風に障害があっても、サポートしてくれて、一年間も西だけを歩いた。


「着いたわよ」

「ここは?」

「夢の国。感想は?」

「地球は丸い」


ここは、最初に出発した僕の家だ。


「幸せは、遠くでなくすぐそばにあるんだよ」

「青い鳥かよ」

「わかった?」


文句を言う気もおきん。


「で、神様は?」

天使に訊く。


「今はいない」

「その心は?」

「免許の更新に行ってる」


神は意外に無責任だ。


だが、元の場所に幸せがあるのか?


「あるわよ」

「どこに?」

「私がいるでしょ?」


もしかしたら、行き遅れの娘を嫁にだすために仕組んだりして。


「大正解」


正解なんかい

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西にはあるんだ夢の国 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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