第1話 あなたに会うのに22年かかった

 大戦より22年経過


 商業連邦


 辺境の村より


 僕はあの後このほぼ何も無い村に引っ越してきた、簡単に言ったら逃避行だ。


 だが家にこもってぐうたら過ごしているということではない。


「カイトさんや、今から畑の収穫をするんだが手伝ってくれんかね」

「今回はかなり育って大変そうでね」


 今日の手伝いは麦の収穫、いつもを忘れたころにやってくる畑仕事の手伝いは引っ越した次の年から始まったことだ。


「おじいさん、なんで機械を使わないんですか」


「いやはや、こういうもんは手でやるのがいいんですよカイトさん」


 僕が手伝いをするとき毎回投げかける質問に今回も同じものを返される。


「こうしてね手で取ることで、一つ一つ真心こめて収穫する」


「これがうちのやり方でね」


 理解はできるが非効率だ、今では機械によってこの広さは半日もかからないだろう。


「カイトさんがいるだけでずっと早く終わるのよ」

「そうじゃ、カイトさんさえいれば機械などいらん」


 彼らが勝手に話を進めている中僕は手を進める、なんかもう僕頼りの農業になったのではないかと心配するが。


 収穫の手伝いが終わるときにはもう夕方になっていた。


「今回もありがとうございました」

「これお礼によかったら」


 そういって僕に対して渡してきたのは籠に入った野菜たちだった。

 僕はお礼を言って帰路に立つ、この村で僕にここまで良くしてくれるのは彼らだけだろう。


 今日やるべきことを終わらして顔を洗う、洗面所の鏡に映るのは黒い短髪に碧眼の綺麗な目、顔は男性にしては丸く幼い感じに見える青年だった。

 この姿の自分にはいつも不快感を感じる、あの日から20年の時間が過ぎた、今の僕の年齢は44だ、だが今の鏡に映っているのは軍に入ったときの17のまま変わっていなかった。

 まぁ、この力は合意の上で受け入れたものだ、この世界の平和への小さな犠牲というものだが、今となってはこのことの辛さがわかるというものだ。


 ここに来てから20年も経つがまだどこか違和感があるそんな家のベットで一日の終わりを迎えようと寝た。


 ……

 …………

 ………………


 ここ最近思うことがある、夢を夢だと理解することができるということだ。

 今は何もない暗闇で浮かんでいるという感覚になっている。

 今日はこのタイプらしい。


「繧ウ繧、繝?ヨ繧、繝?す繝ァ繝九ル繧イ繝ュ」


 どこかで聞いたような女性の切羽詰まった声が聞こえる。

 いつもは記憶にあるものが夢と出てくるが、たまにこういう夢を見る、記憶にない、僕には経験したことないはずのものが流れてくる、それもかなり具体的な内容で。


「繧ソ繧、繝√Ι繧ヲ」


 かなり力の入った男性の声が聞こえてくる


「繧キ繝ウ繧ャ繝ェ繝上Ρ繧ソ繧キ繧ャ」


 いろいろな声が聞こえてくるがどれもしっかり聞き取ることができない

 何もないようなくうかんで声だけが聞こえてくる、

 すると



「繧「繝ェ繧ャ繝医え」



 血まみれになった女性を抱きしめている状況に切り替わる

 顔は曇っていて見ることができない

 ただ彼女の胸にはメスのようなものが刺さっていた

 現状がよく理解できなくただただ吐き気がしてくる

 気持ち悪い、忘れたい、いろいろな負の感情がわいてくる、それでも体は動かない、女性の腕が僕を弱い力で抱きしめ返す、そして


「私、繧「繝翫ち繝弱さ繝医ぎ繧ケ繧ュ」


 言葉の肝心な部分が聞き取れない、何かを言い終ったと同時に女性の腕から力が抜ける。

 僕はそれを感じると同時に目の前が暗くなった。




 慌てて目を覚ます、悪い夢を見ていたのだろう全身から汗が止まらない、動悸も激しい、心臓の音がうるさい、それらを感じ抑えていたところ

 ドンドンドンと強く玄関をたたく音が聞こえた

 こんな夜更けに何だろうと急いで玄関の扉を開けると


「すみません!助けてください‼」


 装飾の多い黒いドレスを着た女の子が立っていた。

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