ジュゼッピーナことローズはしたたかに。

 「やっぱり仕事を渡した分はキッチリやってくれる。流石。」

 

 書類とデータの山を確認して、内容に全くの不備がない事に対してローズは満足したように頷いた。どうにも数少ない自身の認めうる友達と会うとテンションが上がってしょうがない。大将閣下の前で真似をしてしまったが、それも本当に仕方がない事だ。

 

 「幹部学校の頃から相変わらず後ろ向きなんだよね。」


 部屋でグッタリしているであろうヤクモを思い浮かべ、フフン。と鼻で笑うローズ。それなりにある伝手でヤクモが『ジブラルタル』にやってくることを知ったときは、それはもう喜んだものだ。

 

 『本当に使えて、任せられるやつが来た。』


 と。数え切れない勝利に比べて、圧倒的に少ない敗北を自身に与えた友人たちの一人。それが自分に付けば、やりたい事や立身出世も早く済むだろう。

 友人と言っているが、上から目線なのはどうなのだろうか?そう思う人間もいるとは思うが、彼女。つまり、ローズとしては普通の事だ。

 何せそれだけの自信と立場を担保できる才能と結果を持っているのだから仕方ない。数少ない敗北も、次への経験と欠点の改善として受け取ることの出来る若さと不釣り合いな度量もあり、何より前向きな性質……なんというか時代時代に生まれる天賦の才能というバグなのか?別格の存在なのか?そんな人間からすれば、彼女の普通の態度だとしても上からになってもしかたないと言える。

 

 「アルバートくんも少しは上手に人を使えるようにならないと。」


 またもや鼻で笑うが、先ほどとは違って嘲る様な笑い方だ。ローズもアルバートの能力は同期として、士官として認めている。認めているうえに必要なのも分かっているが、

 

 (そういうところも。アルバートくんは、ねぇ?)


 良く言えば確実かつ器用な。悪く言えば地味で面白みのないアルバートの能力がロースの目線や感覚に必要だとは理解してもピンとこないのだろう。

 自身の才能や人柄を見る能力は優れていて、年齢不相応の度量もある。そんな才能マン。もとい、才能ウーマン。


   【なんか本当になんなんだよ。コイツ。】


 そんな言葉が出るような優れた彼女であっても、悪癖と言えるモノがいくつかあった。いや、悪癖とまではいかなくても困ったところがあった。

 その中に『人の評価はしっかりと判断する。しかし、その後に主観が入る』というもの。その辺り、気に入らなくても色眼鏡無しで評価するアルバートとは違うところだろう。

 それによって面白い。面白くない。そもそも見たくない。それどころか見ないことも。……等々として区別してしまう。

 それでも使い道や使い方を見つける優れた才能。いや、見方によっては悪辣とも言える才腕が彼女にあり、その天賦の才をハッキリ理解しているので彼女は敵に比べて圧倒的な支持が得られているのかもしれない。


 「でも、そろそろ面白くなってほしいから、早めに前線に戻りたいよね。・・・んー。でも、もうちょっと我慢しなきゃ。」


 まだまだローズの新部隊は出来立てホヤホヤ。彼女が天才と呼ばれる部類であって、彼女が買っている面々をできるだけ集めたと言っても、それで戦闘や運用ができるわけでもない。


 「ヤクモも活かせる場所で輝かないと。」


 ヤクモの能力・才能・適正を、彼が好む好まざるを抜きにして上手く使うべく、焦らずに予定を組み上げていくのだった。






 ※今年、怪我ばっかり、仕事の停滞で少し病んでました。またチョコチョコ書いていきます。

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