第5話 仕事を投げられすぎるとは思わなかった。
「疲れた…。」
王国連邦が誇る要塞・ジブラルタルに到着して数日。『やること以外はやらない』が信条であったはずのヤクモは仕事に続く仕事で疲れ果てていた。
「あー…本当に能力に見合う仕事量を渡しやがってー…」
何時ぶりか?そんな事を考えるぐらいに久々に仕事をさせられたヤクモはグッタリとベットの上で大の字になり、精神的な疲労を回復していた。
「まさかジュゼッピーナが上司とは…」
この数日、仕事を終えてからこぼしてしまうお決まりの一言にまたもやウンザリするヤクモであった。
司令室での騒動を止められた後に、案内役を志願したと言うことはあってか。ジュゼッピーナことローズの案内と説明は耳と頭にスッと入るものであったと言えよう。
『明日から仕事よろしく。キミの上司には素直に従うようにね。』
別れ際に言われた言葉の真意を知った時のヤクモとしては、まさに『してやられた。』モノだったと言える。
『コレ。よろしく!』
驚くやら呆れるやらのヤクモに、キミの上司改めローズが能力の限界一歩手前の仕事を毎日投げてくるのだからグッタリしたくなるものだ。なにせ、誤魔化しがきかないのだから。
「アルバートにも愚痴の一つも言いたかったけど、知らない様子だったから何も言えねぇ…」
仕事の山を順調に処置しつつ、アルバートに文句をメッセージで送ったのだが、アルバートからすれば『そんなん知らん。』と、寝耳に水。そんな面白みも情味もない反応が返ってくるだけであった。
パタパタと寝転がりながら何かしらの鬱憤晴らしを考えるが、前線勤務とは言っても常に戦闘しているわけでもない。
しかも、ローズは昇進直後でありながらも、陸海空宇宙の四軍をまとめうる統合軍の士官として恥じない部隊長として、『陸戦大隊の隊長』、『大型駆逐艦艦長』、『付属戦闘隊の飛行長』という気が狂ったような役目を兼任することになっていた。そのため自身の部隊の編成・準備ために戦闘には不参加ではあったか、仕事量は半端でなく多い。
体を動かしたり、暇を作ることも中々できないために少しずつ溜まっていく鬱憤も中々抜けることができないのである。
「でも、本当に人の能力ギリギリのラインで仕事を振るのが上手い。そして乗せるのもなぁ。」
疲れと鬱憤にボヤくヤクモであったが、ローズの人使いの上手さには呆れつつも舌を巻く。20代で中佐になる能力の高さに目が向きがちではあるが、人の能力・人柄を見つつ、率いて使う。それがローズ第一の能力といえるだろう。
……巻き込まれているヤクモからすれば舌を巻きつつも、本当に勘弁してほしい。それにヤクモからすれば仕事以前にローズが近くにいると火照るような感覚になるのが苦手なのだ。あのやる気を出させるような感覚は自分らしくない。
「アレがカリスマというものなのだろうか。」
士官学校や幹部学校でもファンクラブがあったしなぁ。疲れで更にボヤっとしてきた思考で浮かんできたが、特に意味があったことではない。
「あー…、貯まるなぁ。」
半分ほど寝ている様な感覚になりつつ、この数日の激務によって貯まったスキルポイントを確認して、ちょっとだけスカッとしながらヤクモは意識を夢の中に向かわせた。
翌日にさらに増えた仕事を与えられて、またもやヤクモはグッタリするのだが、それは寝入っているヤクモは知ることもなかった。
※すいません。もしかしたら後々に加筆や修正するかもしれません。
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