第一話 だからと言って何かあるわけでもないんですよねぇ

 薄暗い、人目につかない路地。


「オラァ!」


 複数の男が、輪になり何かを蹴っている。


「ギャハハ!なんか言ってみろよ!」

「おいおい、かわいそーなこと言ってやんなよぉ〜!ギャハハハハ!」

「そうそう!なんせ、何もできない『シン』付きなんだからよぉ!」


 シン付きとは、何か大きな罪を行い、罰を受けている者のことだ。ステータスを99%以上低下させる隷属の首輪を付けているので、わかりやすい。

 男達が蹴っているのは、その首輪を付けた天使の少女だった。見た目は、ボサボサで背中ほどある灰色の髪、土などで汚れた肌、服といえないほどボロボロの布を纏った、山吹色の瞳を持つ少女だ。


「おい、そろそろ時間だぜ?」

「おお、ほんとだな。じゃあ戻るか!」

「二度とここに寄んなよ!汚ねぇからな!」


 そう言って、天使の少女を今までで1番強く蹴り飛ばし、男達は離れていった。


「…………」


 何も言わず、そこから離れようともぞもぞ動く天使の少女。お腹が減ったなと考えていたら、気がついたらレストランの裏側ここにいた天使の少女は、さっきまで蹴られていたのが嘘のように立ち上がり、スタスタと歩いていった。

 彼女は通称『ギラ』。名前は無い。








「か、返してください…!」


「返して欲しけりゃ魔法使えよ〜!」

「かわいそうなこと言ってやんなって!落ちこぼれにそんなのできるわけねぇだろ?」

「それもそうだな!ははははははは!」


 学校の裏庭で、魔石を魔法で浮かせ、遊んでいる男子生徒と、それをジャンプして取り返そうとしている少女がいた。

 名前は一ノ瀬凪いちのせ なぎ。黒髪黒目の小柄な少女だ。制服と灰色のローブを着ており、灰色の腕輪をしていた。この腕輪は、クラスを表している。実力でクラスが分けられており、最高のクラスから黒、金、紫、白、灰色である。それぞれのクラスには別称があり、白は凡人、紫は努力家、金は天才、黒は怪物である。男子生徒達は金色だ。


「や、やっと手に入れたものなんです…!返してください!」


「こんなクズ石一個でご苦労だなぁ!」


 魔石にはランクがあり、S、A、B、C、D、E、Fの7つある。少女の手に入れた魔石はFランクである。魔石は、モンスターを倒すと手に入り、モンスターと同じランクの魔石が手に入る。

 少女は魔法が使えないため、最低ランクでも大変なのだ。


「仕方ねぇな、返してやるよ」


「ほ、本当ですか…!?」


「ああ、返してやる、よ!」


 そう言うと、魔法で遠くに投げ飛ばした。


「あぁ…!ま、待って!」


「とってこーい!」

「犬みてぇだな!」


「「ははははははははは!」」


 建物と建物の間に落ちていった魔石。裏路地に魔石は落ちた。

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