短編「死線ノ断末」(完)

不可世

一話完結

夜のイロハに

飲まれつつ

ただ一人タバコを吸う


天に恋するほど

死にたい日々を送っている

ろくな食事もしていない

友人とも疎遠で

ただ孤独に落ちて


月にさえあざ笑われてるように見える


そうして正気でいると身が壊れそうになるから

ベランダの大麻を

目薬にし差し

意識を昏倒させながら


赤くなっていく空を見ている


ほんと、命って余計だ

生きたるたび、憎悪を覚える

何も出来ない自分だから

ただ衆目に晒され

無視できない痛みを抱える


ほんと、命って余計だ


生きたいと願わずとも

生かされてしまう

な、まるで強制労働だ


この如何なる状況でも鳴り響く

心しらずの心臓を

摘出したくて

止めたくて

ナイフを胸に向けたが

血が垂れただけで

死には至れなかった


こんな無駄な自制心なんて

どこで身に着けたのかと

死にきれないのは何故かと

問ってみたが

それはきっと何に対しても生半可だからだと

生死どっちに対しても臆病だからだと悟った


もう救いようのない自分

そう分かりきってる

だから無知無欲に

全てを俯瞰して

輪の外側から

さらにその外側を目指している


ああ、死ねれば

苦しみは消えると思っている

自分が消えれば

うまくいくと思っている

それは間違えか

いいや正しいはずだ


そうやって僕は

自殺者の気持ちが分かるほどに

育っていく


いつか死に達する踏ん切りが着いたら

どうなるかなんて

人として終わった思想を募らせ

死の造形を描く


そうして死に矛盾を抱かず

すっぱりと消えれるなら

それこそいっぱしに毒を食いあげた事になる


だからそれまで毒を食らう

もう僕に希望は要らない

一生全て惨劇でいい


そうしないと、光に触れるたびに後悔してしまう

希望を持ってしまう

それは毒より苦しい


生きてきた今日までが

むなしいと

知りたくはない

だから一生うやむやでいい


一生、報われなくていい


もう僕は死だけを見つめていたい

生を見れば、古傷が痛む、後悔する


だからもう引き止めないで

僕は死だけを抱いて果てたい


それが僕なりの決心

唯一見いだせた答え


だからもうさよなら

こんな別れくらいしか残せなかったけど


それが僕、


僕の迎えた人生だったんだ。


だから死んだってさほど以外じゃない

僕の人生において死は不思議じゃないんだ


むしろ似合っている

そうなった方が、世間も納得する、まとまりがいい。


そう思える

そう思っている。


じゃ、僕は行くよ。


この死とともに遠くの遠くへ。


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