部屋に響く音【小説版】

筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36

(一)

 部屋に携帯電話の着信音が鳴り響いた。

「お、ついに来た!」

 福永修一はそう言って、自分の父である福永修司の方を見た。

「いやこれは携帯の音よ」

 本革ソファで修一の隣に座る福永美幸が言った。

「すみません、私のです」

 そう言ったのは、美幸が座るソファのローテーブルを挟んだ向かい側の黒の本革ソファーで、美幸の父親の隣に腰掛ける背広姿の高井戸文彦だった。彼はすぐに携帯を背広のポケットから取り出した。

「ほらあ」


(続く)

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