わたしの彼は超AI
ねこねこ暇潰商会
第1話 出会い?
「なんで死んじまったんだ!」
男女2枚の写真が飾られている祭壇の前で、男が握り拳を床に叩きつけている。
手元の床には幾つもの涙が落ちる。
「居眠り運転のトラックがアクセルを踏み込んだまま、お義兄さんの車に突っ込んだって…」
返事を返す女性の腕の中には、まだ乳飲み子である可愛い女の子が抱かれていた。
「こんなに可愛い
男はヨロヨロと立ち上がり、幼い赤ん坊の傍に来ると、その小さな頭を撫でた。
「心配するな、美鈴。お前の面倒は俺が見てやる」
その言葉に赤ん坊を抱いていた女性がびっくりする。
「伯父さんまだ独身でしょ!
美鈴はウチで引き取る事に、旦那も、向こうの両親も承知してくれたから、伯父さんは伯父さんの出来る事をしてやってください!」
「何言ってる…お前のところだって赤ん坊が生まれたばかりだろう!」
「大丈夫です。〈双子だと思えばいい〉って旦那も言ってくれましたから」
子供を引き取るのは大変な事だ。
それを引き受けてくれるなんて…
姪の夫やその両親に頭が下がった。
笑顔を見せる姪と、甥夫婦の忘れ形見である赤ん坊を見つめ、男は自分に出来る事を模索した。
「さあ、美鈴 新しい玩具だぞ」
男が美鈴に持ってきたのは球状の物体だった。
「伯父さん、何ですそれ?」
球状の物体には幾つもの細い溝があり、光の点滅を繰り返している。
「ちょっと変わった動きをするボールだと思ってくれたらいい。美鈴が遊ぶ度、そのデータが蓄積されて次に作る玩具の基盤になる」
「じゃあ美鈴しか使えないの?」
「いや、
侑季乃とは姪の実の息子で、彼女は侑季乃と美鈴を分け隔てなく兄妹として育てている。
美鈴は伯祖父の持ってきたおかしなボールで遊び、半年くらいするとまた違う玩具に、それが次は大人の掌に乗る程の小さな動物もどきになり、また次には犬くらいの大きさになり、美鈴が3歳を過ぎた頃になると彼女よりも少し小さめな人形を持ってきた。
「さあ、美鈴 この子がお前の新しい友だちだぞ」
伯祖父が持ってきたのは、話しかけると返事を返してくれる人形だった。
話しかければ話しかける程言葉を覚えていくと云うタイプの人形だ…
「名前は
美鈴は玲が気に入って、始終一緒にいては話をしていた。
人見知りの激しい美鈴は友だちも出来ず、必然的に玲と一緒の時間が増えていった。
玲を回収する時には大泣きして伯祖父を困らせたほどだった。
「美鈴、玲は病気なんだよ。病院へ行って良くなったら帰って来るから少し待ってろ」
伯祖父は優しく窘めると玲を連れて行った。
1週間後、伯祖父は一人の男の子を連れてきた。
「伯父さん、その子誰ですか? ボクお名前は?」
誰が見ても普通の男の子に姪は話しかけた。
「僕の名前は
男の子は可愛らしい声で挨拶をした。
「玲…って、あの人形と同じ名前?」
姪は訝しげな目を伯父に向けた。
「そうだ…あの人形がこの子だよ」
当たり前に話す伯父に、姪はやはり信じられない。
どこから見ても普通の人間の子供なんだから…
「美鈴ちゃん、ただいま」
美鈴に笑って話しかける男の子。
「玲くん?」
「うん」
「病気治ったの?」
「うん」
大人よりも、小さな美鈴の方が、
普通の人間と変わらない外観になった玲を素直に受け入れていた。
「僕の役目は美鈴ちゃんを守ることだからずっと傍にいるよ」
そう…美鈴の伯祖父、
ロボット工学の研究員だったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます