悪魔に差し出すは私の一番大事な気持ち

たけねこ

何かを得るには対価が必要なんだよ


私の名前は橘心、女子高に通う高校一年生。         

 私には好きな人が居ます。2年生の先輩で私の事をよく気にかけてくれる、優しい先輩です。

 だけれども私の事は、だだの後輩としか見られていないようで、少し複雑な気持ちです。でもこの先輩の後輩という立場にいられるなら、それでいいかなと、思っていた頃のことです。   



「君の叶えたい願い叶えてあげようか」

                               

 学校からの帰り道、後ろから言葉が聞こえてきました。その言葉に釣られて後ろを向くと、なんとゆうか、猫のようで犬のような、それでいて少し鳥みたい。そこには妖怪のような珍妙な生物が居ました。ですがそんな外見は、よくわからない生物が、日本語を喋っているということと比べれば、あまり気になりません。

 いや、やっぱり気にならないは嘘かもしれない……

 

「私の願い叶えれるの?」 


 最初にこんなことを珍妙な生物に対して聞くと言うことは、私はやはり後輩という立場に甘え続けたく無いみたいです。 


「勿論でもね、願いを叶えるという力はあまりに強力だ。強すぎる力には必ずと行っていいほど代償が必要さ」

「代償?」


 代償か、死ぬとかじゃなければ関係ないかな。


「僕がほしい代償は、君が考えてるほどそんなに重くない。願いはゆっくりと着実に叶えられる。その代わりに、僕が求める代償は、君の一番大切な気持ちをゆっくり、ゆっくりと貰いたい。でも何を奪われているのか君は、完全に奪ばわれるまで気付けない」 


 一番大切な気持ち……私が一番大切だと思っている気持ち、それが何になるのか分からない、でも先輩を手に入れられるならどうだっていいや。


「分かった、私の願いを叶えて」

 

 考える事なんて、迷うことなんて、必要ない。私は気持ちに貪欲になるだけだ、こんな機会もう二度とないだろうしね。

 

「本当に良いのかい?」

「というと?」

「僕は他にもいろんな人間と交渉してきた。でも大抵少しの迷いはあるんだよ、でも君にはないんだ、後悔するかもなのに」

「代償なんてどうでも良いです。先輩が私を観てくれる、好きになってくれるなら、大抵のことは甘んじて受け入れます」

 代償なんて先輩が隣にいて、私がそこに居られるなら、何を失っても幸せでいられる自信はある。


「ちなみに僕が嘘をついてると、思わないのかい?」

「嘘をついてなんになるんですか?そもそも貴方みたいな生物がいて、喋っている、そっちの方が何倍か嘘くさいです」


 それに、こいつなら叶えられそうな気がする。そもそもこんな生物がいてしゃべれてる、もうなんでもありだ。賭ける価値は十分あると思う。

 

「ふーん、まあ何はともあれ交渉成立だ。それじゃあ最終確認をするね、君の願いは先輩に自分を好きになってほしい、そういう願いだよね」

「あってます」

「分かったその願いは今を境に、少しずつ叶っていく。」

「ありがとうございます。ところで貴方は何なんですか?」

 最後に気になっていたことを聞く 

          

「僕かい?僕は悪魔だよ、君は悪魔と契約したのさ」  

 本人いわく私は悪魔と契約したらしい。  



 

 次の日から私の生活は一変する。なんて事は無かった、そりゃそうだ悪魔はゆっくりと叶えられるといっていた、でも先輩との距離は少し縮まったような気がする。                


そしてさらに一ヶ月前ほどたった頃、初めて先輩の家に招待された。それは嬉しいことだが。最近違和感があるんだよね、何か私の中から少しずつ何かが抜けてるような。これが……


「心ちゃん大丈夫?ずっと上の空だったけど」     先輩が顔を近づけながら聞いてきた、少しぼーとしてしまったようだ。気を付けないと、せっかく先輩の家に来たんだから。            


「いえ、少し考え事していただけです先輩」

「そう?何かあったら私に言ってね、力になるから」

 先輩は更に顔を近づけて言ってくる。

 

「あ、ありがとうございます」 

 ……何かにつけて顔を近づけないで欲しい。最近の先輩はスキンシップが少し激しい。最近は慣れてきたのか、あんまり恥ずかしくはないが、それでも少しばかり恥ずかしい。関係が深まっているのが実感できるし、嬉しいことは嬉しいんだけど、本当に心臓に悪い。

 楽しい時間はすぐに過ぎてしまい、家へと帰る。先輩と離れてすぐは、とても虚しいし、悲しい。それでも先輩と触れ合いたいと思ってしまう、惚れたら負けってこういうことなのかな?でもこんな気持ちになるのも、多分もう終わる。悪魔と契約したんだから、きっと先輩も負けることになる。




そうして悪魔と契約して二ヶ月ほどがたった。 

最近はよく先輩の家に泊まったり、先輩と遊びに行ったり順風満帆な生活をしていた。

でも私が想像していたのとは何かが足りなくて。昔の私とは何かが違って、なんだろうか心にぽっかり空いた穴がどんどん強引に広げられるような感覚がして、これが代償というのだろうか。

 全て穴が開ききった時にはこの気持ちの名前を知れるのかな、まあそんなことはさておき今日は先輩の家でお泊まりである。         

                                      「ねえ心ちゃんは学校に好きな子とかいるの?」     

 最近は、先輩から恋愛がらみの話を良くしてくる。


「先輩私たちの学校、女子高ですよ?」            少し的はずれなことを聞き返してみた、少しばかりイタズラをしてみたかった。そうすると先輩は、一瞬少し落ち込んだ素振りをし、聞いてきた。       


「そうだけど、良く学校で聞くじゃない女の子同士が付き合ってたりするって」                 やはり悪魔の契約が聞き始めてきたのだろうか?でも確信が持てない。 

 

「すみません、少しイタズラしてしまいましたね、そうですね、居ないと言うと嘘になってしまいますかね」                           「……そうなんだ、ちなみにどんな子?」        どんな子、か       


「優しくて、可愛くて、私が孤立気味だったところに話しかけてくれた人です」                「そんなにその子の事が好きなの?」             先輩の事は愛しているし、大好きなはずだ。       


「はいとっても大好きな最愛の人です」            そういうと先輩の顔が少し曇ったような気がした。 



そして悪魔と契約して三ヶ月がたった頃。         

 先輩との関係は良好だ。私が好きな人が先輩であるとほのめかしてみたり、色々と意味はあるのか分からないが、アプローチをしていた。         

 そして今日先輩に放課後に屋上に来てと呼び出されたのである。なんというか……違ったら恥ずかしいがおそらく告白だと思う。勿論嬉しいのだ、なのになにか釈然としない。

 恐らく悪魔とした契約のせいだろう。嬉しいのに変なことを考えさせられてしまう。

 そんなことは置いといて、私は屋上のドアを開いた。そこにいたのは勿論先輩。     


「心ちゃんその私伝えたいことがあって」          

 開口一番にそう言った先輩の顔は、正に恋する乙女でその顔で私に一言告げてきた。   


「心ちゃんの事が初めて見た日からずっと好きでした、私と付き合ってください!!」   


 何故かそう告げられた瞬間に思ったことは先輩とならいいかな、という何故かあんまり気乗りしない気持ちだった。そのせいか、私は自分自身がよく分からなくなっていた。

 はい、と告げようと思っていた矢先、何故か先輩の事が友達としか見れなくなってしまった。なぜだと考えていると答えはすぐそこにあったのだ。私はそれほど私は先輩が好きだったのか…… 

         

「あの、ごめんなさい先輩は友達としか見れなくてすみません」       

 私は、心から望んでいたその誘いを断った。





 いやー見てて面白かったよ橘心は。願いと一番大切な気持ちが一緒なんだもん。気付かないうちにどんどんどんどん、思いが薄くなって最後1割程度は残っていたけど、なくなってどんな気持ちなんだろうね。

 といっても最後は、仲のいい友達に告白されて関係が悪化しないか心配するような感じだったかな?好きだったのは理解しているが、好きだった気持ちを思い出せないようだね。 

 それにしても先輩が可哀想だね。あっ、良いこと思い付いた!!

 





「ねぇ君!!君の願い叶えてあげるよ!!」

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