第7話 氷詰めの女
一月十五日、釧路市の中心街を流れる釧路川の河岸にあるホテルに、湖立は自分と佐知との二部屋を予約していた。
居酒屋で海鮮ものを堪能した後ホテル内のバーでカウンタースツールに並んで座り談笑していたが、突然佐知が、
「課長、私、妊娠したみたいなんだけど」湖立の耳元で呟いた。
「えっ、……」思わず佐知の腹に目をやる。
「課長、そんな今見たってまだ出てませんよ。ふふふ。今六週目なんです。どうしましょう?」
佐知は湖立の反応を楽しむような目をしている。
「それ、俺に言うのか?」湖立は心の動揺を隠そうと強く言った。
「どういう意味です?」
「おまえ、赤井川先生と不倫してるって言うじゃないか。それに桂とも寝たんだろう?」
湖立は用心し避妊だけは欠かしたことが無いと自信を持っていたし、数えられるくらいしか関係していない。
「えっ俺の子じゃないって言いたいんですか?」口を尖らせて佐知が言う。
「当たり前だろう。妻が妊娠したなら俺の子だと思うが、相手が何人もいる女が妊娠したからってどうして俺だってわかるんだ?」
「女には分かるもんなのよ。逃げんじゃないわよ、責任は果たしてもらうわよ」
佐知の顔から色気が消え、怒りが不細工な顔に変えている。
「そんな怒った顔しないで、おろせば良いだけじゃないか」
湖立はそれが不倫した女の常識だと理解していた。
「そんな簡単に言わないでよ! 私の身体にどれだけ負担があると思ってんのよ。良いわ、あとは奥様と話します」
「バカ言うな! あれは関係ないだろうが。そもそも妻と別れる気なんか毛頭ないからな。おまえだって赤井川先生の担当になりたいばかりに、先生と俺に身体を売ったんじゃないか!」
佐知は白い眼を向けてきたが、湖立はあまりに腹が立って「部屋に帰る」ひとこと残してバーを出た。
部屋に戻っても気持が収まらず、ぶつぶつ文句を言いながら部屋の冷蔵庫からビールや日本酒を出してバカ飲みする。
ペースが速過ぎたのか冷蔵庫が空になったのを見たら急に眠気が差してきて、時計を見るとまだ十時を僅かに回ったところ……。
そう思いながらベッドに横になった途端に眠りに落ちてしまった。
*
根田は帯広、釧路方面の書店へ定例的に販売状況などを調べるため札幌駅のホームに立っていた。
ふと上りのエスカレーターの方へ目をやると、見知った女性がやってきた。
相手は気付いていないようだが、間違いなく昔の不倫相手だった赤井川沙希だ。
「こんにちわー沙希さんお久しぶり」
声に気付きこちらを見ているが、すぐには思い出せないようだ。はてなと言う顔をしている。
「俺です。根田! 《関東文芸社出版》の……」分からないはずは無い。回数は少ないがベッドを共に汚した仲だ。
それでも分かるまでに時間を要した。
「あらー根田さんじゃない! どうしてこんなところにいるの?」
とぼけているのか良く分からないが頭の天辺から出したような声で言う。
「あれで北海道に異動になっちゃって、これから道東方面の書店巡りですよ。沙希さんひとりで? 先生は?」
「あぁ友達と来るはずだったんだけど、急に来れなくなっちゃって。創語は助手の山笠と一緒よ」
旅慣れているからだろう一人旅を楽しんでいるようにさえ思える。
「そうだったら一緒にどうですか? 俺もひとりですから」
思わぬ出会いで……この先の予定をあれこれ考える。
……
根田は沙希を連れて途中の帯広駅で降りた。
車中から酒を飲み始めすっかり酔った沙希は根田の言いなりになっていた。
ホテルにチェックインして沙希に「二、三店舗回ってくるから」と言ってホテルを出る。
そして明日行くはずの書店までタクシーを飛ばし、その近くにある駐車場に用意してもらったレンタルの冷凍車内で組み立て式の大型の水槽を作ってホテルに戻る。
寝ていた沙希を起してホエ―豚と和牛をメインとした夕食に舌鼓を打った。そして嗜むのは爽やかな酸味が特徴と言われる十勝の赤ワインだ。
その後、夜景の名所があると聞いていたが、ふたりともベッドに潜り込んで久しぶりの体温を感じあった。
翌朝、沙希には秘密にしている冷凍車を釧路まで運ぶので、沙希を帯広の駅まで送って「じゃ釧路のホテルで会いましょう」そう言って別れた。
昼過ぎまでかかって水槽を満タンにし、その水を冷やしながら約二時間半かけて釧路の街中に入る。
ホテルの駐車場に入って電気冷凍機だけを稼働させておく。その時で水温は十度まで下がっていた。
これからマイナス十五度くらいまで下げるのには七、八時間かかると聞いていたので、仕上がりは夜中の零時になりそうだ。
ホテルにチェックインすると沙希は既に部屋にいた。
根田は沙希を呼び出して近くの居酒屋へ誘う。
釧路だからもちろん魚介類中心の夕食にビール。
夜は静かに寝て貰わないと困るので、飲ませて食わせて忙しい。
「私もう食べられないわよ。でも、どうして東京とここじゃこんなに同じ魚の味が違うのかしらね」
沙希は不思議そうな顔をする。
「俺も北海道に来て始めて東京の魚でも野菜でも不味いことに気付かされたんだ。いくら冷凍するから新鮮だといっても、味は落ちるんじゃないか?」
「そう、知らなかったわ。こっちに移住したくなるわね」笑顔で沙希がそう言った。
「ところで、先生とは連絡とってるの?」
根田はこの先色々あるので訊いて見た。
「別のホテルみたいよ。でもここに佐知さんと湖立さんが泊まってるらしいわよ」
沙希はちょっと色気の混じった目をして根田を見る。
「えっどうしてそんな目で俺を見るんだ?」
「あら、あなた佐知さんと懇ろなんじゃないの?」
「いえいえ、俺は沙希だけです」
「あら、良いの? 奥さん忘れてるわよ。ふふ」
「あぁそれはやばい。ははは」
……
根田は時間が気になり頻りに時計を見ていると「どうしたの? さっきから時計ばかり気にして、この後若い娘と待ち合わせでもあるのかしら?」と、沙希。
「えっあっ、いや、早くベッドに入りたいなって思ってさ」根田は深夜の計画を思い浮かべて言ったのだが、「あら、いやらしいこと考えてるのねぇ」意味深な笑みを浮かべて沙希が言う。
根田は言われて気付いたが……まぁそういうことにしておいても良いかと思って「そう夕べのじゃ全然足りなくってさ」
沙希の手を握る。
九時を過ぎていたがまだ少し早い。そう思って「ホテルのバーでも行ってワインでも飲んでから部屋へ行こうか」
……
十時を前にして沙希がトイレに立った。
根田はその隙に薬をグラスに入れ混ぜる。
バーテンダーは見ているがにやりとしただけで何も言わない。
きっと男が女を落とそうとするときには良くあることなんだろう。
交代で根田もトイレへ行って、戻ると沙希のグラスが空になっている。
根田もグラスを空けて「じゃ、行こうか」沙希の肩を抱いて立ち上がった。
沙希の足下が覚束ない。
効きが早いなと思いながら部屋に入ると沙希は真っすぐベッドへ向い、ごろんと横になってしまった。
「おいおい、脱がなきゃ」身体を揺すって起そうとするがすでに寝ていて重たいので諦める。
バーで佐知を置いて湖立が出ていったのを見ていたので、今がチャンスと思い急いでバーへ戻った。
幸いバーでは佐知がひとりで飲んでいた。
ひとりでぶつぶつと何事か喋っている。
「こんばんわ。佐知さん」
振向いた佐知は瞼がとろんとして眠そうだ。
勝手に隣のスツールに掛けてグラスワインを頼む。
バーテンダーが振向いた一瞬の隙を狙って佐知のグラスに睡眠薬を入れる。
佐知は「あのやろう……」とか「子供は私が……」とか言ってるが、良く分からない。
きっと湖立と喧嘩でもして、その続きをひとりで喋ってるんだろう。
……そのうち、佐知がカウンターに両腕を置いて枕にし始めた。
根田はバーテンダーに一声かけて佐知を担ぐようにしてバーを出た。
片手でバッグを持って部屋カードを探す。
ベッドに佐知を寝かせコップに水を用意して、片手で頭を持ち上げ睡眠薬を数粒口の中に放り込む。そしてグラスを唇につけると佐知はごくごくと飲んだ。
根田は佐知のカードを持ったまま部屋を出る。
時計は十時半を示している。
部屋に戻った根田は、変装用の小道具を確認し、缶ビールを片手に時間が過ぎるのを待っていた。
……
*
釧路警察の乾実(いぬい・みのる)警部が釧路川に掛かる幣舞橋の袂にあるロータリーに置かれた冷凍遺体の前に立っていた。
一月十六日の午前十時だった。
乾は発見した刑事から発見時の状況を訊いていた。
「本官がパトカーで巡回中、九時過ぎに幣舞橋を渡り港の有る港町方面へ行こうとロータリーを右折しようとした所、中心部の円形地帯に氷漬の人形が置かれているのを発見し、届け出の有無を確認したがそのようなオブジェを設置すると言う申請が無かったので撤去すべく現物の確認を行おうとした際、人間のようにも見えたので鑑識を呼んで確認した結果、遺体であることが判明致しました」
「いつからあったんだ?」
「現在、目撃者等聞取りをしております」
「タクシー会社へは確認したか?」
刑事がしていないと言うので乾は市内のすべてのタクシー会社にロータリーを通った車両を確認し、ドライブレコーダーの提供を依頼するよう命じた。
「しかし、こんな所に置いて早く発見して欲しかったのか? それとも別の理由が……」乾が誰に言うでもなく呟いた。
午後から記者会見をして事態を公表するとこの謎の多い殺人事件を各社トップで取上げていた。
遡って朝の9時半、《日本文庫本出版(株)》の販売推進課長の湖立辰馬という男性から、東京から一緒に仕事で来ていた友池佐知という女性の行方が分からなくなったと通報があった。
受付けした釧路警察署の生活安全課では来署を促し写真とスケジュールなどの提出を受けた。
その情報が乾に届いたのは夕方の五時過ぎ、念のためと言って生活安全課の担当者が写しを持参したのだった。
乾は部下を連れて湖立課長をホテルに訪ねる。
「この写真とお借りした写真なんですが、顔付きが変わってしまって同一人か分からないのですが、この服装はどうでしょうその友池佐知のものか分かりませんか?」
写真をひと目見た湖立課長は「あっそうです。友池です!」ロビーに響き渡るような大声で叫んだ。
「湖立さん落ち着いて、間違いないですね」乾は念を押す。
「この先の仕事を中断してここに居て下さい。またお聞きしたいことが出ると思うんで……」
乾は湖立課長が頷くのを待って「ところで、……」と続けた。
「ところで、湖立さん。友池さんを最後に見たのは何時ですか?」
「えー夕べ九時頃このホテルのバーで一緒に飲んだのが最後です」
「部屋へは一緒に帰らなかったんですか?」
「え、えぇちょっとあったもんだから、私だけ先に戻りました」と、湖立課長。
「ほーちょっとね。……何があったんですか?」
乾は湖立課長の落ち着かない様子に引っかかりを感じたのだ。
「いえ、プライベートなことです」
湖立課長は喋りたがらない。
「湖立さん、殺人事件なんで話して貰わないと、署へ来てもらって訊くことになるんですが……」
乾は湖立課長の細かな挙動を見逃さないよう注視する。
「はぁ事件とは関係ないんですが、……」湖立課長がさらに渋る。
「ははは、湖立さん、それを判断するのは警察です」
「そうですよね。……実は、私と友池は男と女の何でして……」ようやく口を開いたが予想の範疇の話しだった。
「男女関係があった。湖立さん奥さんは?」
「はい、います」
「じゃ不倫してたってことですね」乾は湖立課長が頷くのを待って「で、何かで揉めた?」
「はい、佐知、いや、友池くんが妊娠したと言い出しまして……」
「なるほど、で、どう揉めたんです?」
「私は自分じゃないと思ってたんで、そう言ったし、仮に自分だったら下ろせと……」
「で、彼女は嫌だ。産むと言ったんですね」
「はい、でも彼女は赤井川創語という作家の担当をしていて、彼とも出来てたし、うちの社の桂という若い男とも出来てるんです。それに、私は避妊していたし……」乾は、湖立が「避妊」と言う言葉から弱々しい言い方になったので嘘なのか自信は無いが言ってみたという事なのか、いずれにしても動機のある人物が三人いるって事だと理解した。
「ふむ、だけど彼女はあなたの主張を認めなかった、という事ですね?」
乾は良くある殺人事件の動機だと思った。
「ところで、写真の通り遺体が氷漬けにされてたんですよ。何故だと思います?」
乾が湖立課長の表情を注視し続けていると、動揺しているのだろう目が落ち着かない。
「小説だと、死亡推定時刻を誤魔化すためですよね」
「でも、それだと遺体をどっかに隠して氷が溶けてから、そして衣類を乾かしてから発見されないと意味がないと思いませんか?」
「確かにそうですね。……じゃ何で氷漬けなんか……」湖立課長は腕組みをして考えている。
これが演技だとしたら相当な悪だ。
「湖立さんは部屋に戻ってからどうしました?」
「えー部屋の冷蔵庫にあったビールと日本酒を飲んで寝ました」
「それをどなたか証明できますか?」
「いや、ひとり部屋だし、誰とも話さなかったから無理です」
「そうするとあなたにもチャンスはあった訳だ」乾が鋭い目を向けると湖立課長が始めて自分が疑われていると認識したんだろう狼狽する。
「ま、ま、まさか、私は、彼女なんか、いや彼女を殺してなんかいませんよ……本当です。冗談じゃない。信じてください……」湖立課長は小心者のようだ取り乱し方が半端じゃない。
「でも、証拠は無い」乾がドスを効かせて言う。
「や、や、や、いや、でも私じゃない! 私じゃないってば!」また大声で叫ぶ。
「あなたの他にトラブルになっていた人とか知りませんか?」
「……さっき言った赤井川創語先生と桂慎一郎といううちの若い社員も佐知に妊娠を知らされてたんじゃないかな?」
「そのふたりは東京ですか?」
「いえ、先生は川の反対側にあるホテルに泊まってますよ。あっ今日は根室へ向かったかもです。助手と一緒に行動してます」
乾は連絡先を訊いて部下に電話をさせる。
……
「警部、赤井川創語は今阿寒湖の温泉ホテルだそうです。夕べは十時には部屋に戻って寝たといってます。友池とは会っていないそうです。殺害されたと伝えたら驚いてました。予定を変えて明日ここへ戻ってくると言ってくれました」
「そうか、事情を明日訊こうか。で、桂は?」
「はい、呼び出してるんですが出ません。また時間を置いて掛けてみます」
刑事が友池佐知が泊まっていた部屋から遺留品を持ち帰った。
一週間ほどの旅行計画だったと聞いていたがキャリーバッグひとつびっしりと衣類などが入っている。
「これが机に置いてありました」
刑事が見せてくれたのは、赤井川創語著の「活き造り冷凍殺人事件」というタイトルの小説だった。
「暇なときに読もうとしてたのかな」乾はそう言ってテーブルに置いた。
特に事件に絡みそうなものはなかった。
夜になって桂慎一郎と連絡がとれたと部下から報告があり、乾が電話を入れる。
桂は妊娠の話を聞いていなかったと言ったが関係だけは認めた。
夕べの行動については
「佐知を探してバーへ行ったら湖立と飲んでたんだよ。それで一旦部屋でビール飲んで時間潰して三十分か四十分かな、もう一度バーへ行ってみると知らない男と飲んでて、おそらくナンパでもしてんのかなと思って様子を見ていたら佐知がカウンターに突っ伏して寝ちゃったみたいで、男に担がれるようにして出ていったんだよね。あちゃーと思ったけど後をつけたら佐知の部屋へ入って行ったんで、やばいと思って俺もその部屋に向かったんだ。佐知がなにかされるかもしれないだろう。でも、男はすぐ出てきてさ何処かへ行っちゃった。で、ドア叩いても、部屋から電話入れても応答無くって寝腐ってると思って俺も寝ようかなと思ったんだけど眠れなくて、しばらくビール飲んで日付が替わって一時頃だったと思う。ソープでも行こうと思ってさ調べて行って二時半過ぎてたかな戻って寝た」
桂は口の軽い男のようでぺらぺらと一気に喋り続ける。きっと女にもだらしない男だと言う印象を乾は持った。
乾がそのソープに確認を入れさせたが間違いは無かった。
翌日、午前中のうちに赤井川創語と助手の山笠颯太が署に出頭してきた。
「先生が十時頃寝ちゃったので、自分は部屋に戻って缶ビールをひとつ飲んで寝ました」
と山笠は言う。前日赤井川創語に電話で訊いた内容と一致した。
「桂くんは佐知さんに先生の担当を奪われたから恨みに思っていたはずだ」とも言う。
赤井川創語は子供の話を認めたが、どうしなとは言わなかったし、その時の自分の心境も小説のひとつのネタとして記録していると言ってネタ帳を乾に差し出したのだ。
乾はこの作家はすべてを小説のネタと考えているみたいで、佐知とトラブルになって殺す様な真似はしないだろうという感触を持った。
ただ、妻の赤井川沙希が友池と同じホテルに泊まっているので事情を聞くことにした。
「私は、十時頃までだったかなぁ根田健という出版社の男性とバーで一緒に飲んでいたら、なんか眠くなってしまいバーからどうやって部屋へ戻ったかも覚えてないんですよ。ふふふ。だらしない女ですよねぇ。で、気付いたら朝の六時だったの、びっくりしたわ」
この証言にもう札幌へ帰ってしまったという根田も「夫人がバーで寝てしまい、部屋まで担ぐようにして連れて行った」と証言した。
三角関係のもつれではなさそうだった。
乾は証言を確認するため最上階のバーへ行ってバーテンダーに話を訊いた。
関係者の写真を並べて夕べ来た人と何時頃誰といたかを質問した。
バーテンダーは夫人と根田の写真を指差し、「このふたりは九時五十分頃まで飲んでお帰りになりました」と証言した。
そして友池と湖立を指差して「こちらのおふたりは九時四十分過ぎまで一緒で、先に男性が帰って、別の男性が来て、十時過ぎてから一緒にお帰りになりました」と言った。
「えっ湖立が帰った後に別の男性が来たんですか?」
「はい、さっきの男性が戻ってきて……」
それは根田だ。彼はそんな話をしていない。
早速根田に電話で確認する。
「えぇ先に寝られちゃって、部屋飲みしようかなとも思ったんだけど、誰かいないかなとバーへ行ったら女性がひとりで飲んでたんで話しかけて一時間もいなかったと思うけど、そしたらその女性も寝ちゃったんでしょうがなく部屋まで連れて行って寝かせ自分も帰って寝たんです」
根田はそう証言した。重要な事だとは思わなかったので言わなかったと言う。
乾がその女性が被害者だと伝えると驚いた様子もなく
「そうなんですよねぇ、ニュースで知り驚きました。その女性知り合いだったんですよ」
「えっ飲んでるときには気が付かなかった?」
「そうなんです。かなり酔ってるみたいで全然顔を見せないでぶつぶつ喋るんで分かりませんでした」
「そうですか。根田さん部屋に戻ってからどうされてました?」
「ですから、寝ました。今朝は八時過ぎに起きて市内の書店を回り、帯広へ行ってそこでも書店回りして札幌に着いたのは八時過ぎだったかな。ラーメン屋のテレビニュースで名前を知ってびっくりですよ。でも、あの時の女性だとはまだ気付いていませんでした」
「いつ気付きました?」
「今朝になって会社の名前が出て赤井川創語の担当者だという事と服装が映像で流れたので驚いたんですよ」
「根田さんのこれからの予定は?」
「しばらくは札幌ですが、釧路へ行かないとダメですか?」
「えぇお願いします」
乾には寝ている被害者を何故、どうやって凍らせたのかさっぱり分からなかった。
関係者の殆どが東京から来ているので警視庁に電話を入れ万十川建造(まんとがわ・けんぞう)課長に事情を話して捜査に協力してもらえることになった。
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