狼男短編集

第1話 マスクを外せない男

　僕は、マスクマンだ。顔を隠しながら生活している。2020年、コロナウイルスが世界中に蔓延している頃、感染予防のために、マスクをつけることが義務になった。

　自分は、マスクをするのが良かった。自信のない容姿を隠せるからだ。

　食事以外にマスクを外すことはめったにない。

俺の容姿は不細工だと自覚している。

イケメンだと言われたことがない。

中学時代は「顔が面白い」といじられたこともある。そこから人間不信になった。

　しかし、マスクをしてから、顔が隠れているのが自信になって、コミュニケーションを以前よりも積極的に取るようになった。

　写真撮影も苦手だ。マスクを取れと言われたときは緊張して顔が引きつってしまう。

　大学時代、マスクをしたまま、過ごすことが多かった。アルバイト先でもマスクをずっと付けていた。2020年から着用するようになったマスクをいつまでつけ続けることができるのか。

マスクをつけていないと落ち着かないようになっている。家で過ごすときだけ、唯一マスクを外している。だから、知人にはマスクを外した顔を見せることはあまりない。

女性がすっぴんを人に見せないように、自分のマスクを外した顔を人に見せないようになった。