第51話 二人の朝
夜半まで降り続いた雨は止み、朝日の中滴がポタリと落ちる、金色の髪を撫でていると、いつの間にか目を覚ましたヒルデがニッコリ微笑む、
その後ボク達は子供に戻ったみたいにはしゃぎあった。
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普段よりずいぶん遅い時間に起きたボク、いつもなら小言の一言も言って来るオスヴァルトだけど、今日は何も言わず立っているだけ、
「レオポルド様、ミヤビは只今お館様の商会に行っております」
「ミヤビが父上の商会に?何しに行ったんだ」
午後の早い時間ミヤビが帰って来るとその謎は解けた。
「わたくしミヤビはここに独立を宣言いたします」
「レオポルト様、つきましてはわたしの首輪を外していただけませんか?」
「ミヤビ様、急です! いったい何のご不満が有ったと言うのですか」
ヒルベルタ様が声を荒げる、
「不満なんてありません、この商会はわたしのとって最高の職場ですよ」
「ならば独立なんてする必要はないじゃないですか」
「ヒルベルタ様、これはあなたの為でもあるのですよ、わたしがいなくても商会が回る様にしてくださいませ」
「ですが、まだ早いです!」
ミヤビも彼女なりの考えていたんだ、これからはボクとヒルデでこの商会を切り盛りして行け、と言う彼女なりの手向けの言葉だろう、
「ヒルデ、ミヤビの言う事はもっともだ、ボク達はミヤビに頼り過ぎていた」
ボクに背を向け、ひざまずいてるミヤビ、真っ白なうなじには細い銀色の首輪、
手をかざし解除の呪文を言うと、スルリと首輪は外れる、首輪はたくさん嵌めたけど、外したのは初めてだ。
「レオポルド様、わたくしを奴隷にして頂きありがとうございました」
「独立するならスタッフが必要だろう、好きなだけ連れて行けば良い」
「お心使いありがとうございます、メイドのメリッサ、カタリーナ、ミーア、エルヴァ、そしてリフリーを連れて行こうと思いますがよろしいでしょうか?」
それだけでは足りないだろうからもっと連れて行って良いと言ったが、5人だけで充分と譲らなかったミヤビだ。
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独立したミヤビ、今までどおり娼婦の教育、と言っても彼女が教えるのは高級店の女性だけ、
“これまで見た事もないおもてなしの技を教えます”
なんて言っていた、
そうしてもう一つは買い取り、商人のボクとしては悔しい気持ちだが、彼女の人を見る目は本物だ、
今まで一度も外れを引いてない、遠征買い取りやオークション等には頭を下げてついて来てもらっている、
ボクも商人の道を歩き始めたから、人に頭を下げるのは苦痛じゃないよ、つまらない自尊心はいくらあっても換金できないしね。
▽▽▽
「脚は細くしてね、スラリとした脚にキュッと絞れたお尻にしてね、ウエストは細くして、胸はそんなにいらないから、
あとたれ目は治して、もう少し目と目の間隔を広げられないかな?髪はちょっと濃い目の茶色で」
「もう、ミヤビは注文が多すぎだよ」
「いいじゃないの、秒で終わる美容整形なんだから」
「びよーせーけー?」
「ああ、今の言葉は忘れて、それから歳は18歳でお願いね」
「どうして歳を下げるのさ? 商売で舐められるよ」
「いいのよ、外見で判断する様な人はこちらから願い下げよ」
「あっ、忘れていた、わたしのアゴの形、変じゃない? もう少しシュッとした感じで…」
「もう、始めるよ」
ミヤビの注文を全部聞いたら終わらないからボクは魔法陣に魔力を流す、
魔法陣が光るとそのまま、ミヤビも光に包まれる。
いつもの様に立ちくらみみたいな感覚、頭がズキズキ痛む、なんとか薬の瓶を開け死ぬほど苦い薬を飲み干す。
「あら、良い感じじゃない、身体も軽くなった気がするし、胸もいい感じに張りが出て来て、ちょっと、どうしてツルツルなの!」
「ミヤビ、どうして魔法陣に立っているか覚えている?」
「そりゃ、身体を色々治してもらうためでしょ、美容整形でしょ」
どう言う事だ、今まで何人も顔や身体を治したけど、彼女達はみんな記憶が無くなって、
“わたしの身体はもともとこんな姿”
と言う認識だったのに、相変わらず規格外なミヤビだ。
「あっ、そうそうスリーローズ商会の子達をみんな神殿に連れて行って魔力を見てもらったのよ、そしたら魔力持ちの子が結構いてビックリ」
両手で数の多さを表現するミヤビ、
「それは凄いね」
「それでね、わたしも魔力を見てもらったら、強さも明るさも共に5+だって、
凄いでしょ」
なんとミヤビは最上級の魔力の持ち主だったんだ、やはりボクなんて比べ物にならない貴族の出で間違いない。
「ねぇ、ミヤビは本当は貴族なんだろう?」
「違うわよ、普通の人よ、こっちの世界で言うと平民」
ちょっと待て、平民がそんな魔力を持つと問題だ!
「ミヤビ、貴族の妾にされちゃうよ」
「何それ! わたし風俗は好きだけど、妾は嫌よ」
「そんな簡単な問題じゃない、貴族っていうのはね……」
最後までお読みいただきありがとうございました。
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