レオポルド伝

第39話 ボクは王様


「クラウス先生、こちらの術式は教科書とは違いますね、おかしくありませんか?」

「レオポルト様、これは古い術式です、間違いではありませんが、今は教科書の様なシンプルなタイプが主流ですよ」

「そうですか、古いタイプの方が可変条件を組み込み易い様に見えるのですが?」

「まさにその通りです、応用が効きますが、治癒魔法では簡単な方が良いと言う事で今ではシンプルな教科書タイプが幅をきかせております、

 それにしてもレオポルト様はよくこんな細かい事にまで気が付きますね、10歳とは思えない聡明さでございますよ」


 家庭教師のクラウス先生がボクを褒める、ボクは奴隷商人の息子レオポルト、父上が将来のためにと、大勢の家庭教師を宛がってくれるけど、一番好きなのは魔導学のクラウス先生だよ。


 この世界では魔法が全てを動かしている、12歳の誕生日に神殿に行き魔力溜まりを見てもらい魔道を開けば魔法が使えるようになって一人前、

 二年後が楽しみだよ。


 道具を使わないで直接手の平から魔力を流して風を起こしたり明かりをつけたりするいわゆる“魔法”と術式回路を書いてただ魔力を流すだけの術式魔法があるのだけど、ボクは今術式に夢中さ。



「レオポルト様、失礼致します、熱心にお勉強をなさっておられますが子供部屋に行くお時間が過ぎておりますよ」

 執事のオスヴァルトがやって来て至高の時間を中断させられた、

「オスヴァルト、今は術式を学んでいるのだ、子供部屋なんて後でよかろう」

「失礼致します、わたくしクラウスはレオポルト様の聡明さに感心して時間の経つのを忘れておりました、次の予定が入っておりますのでお暇させてもらいます」

 魔導学の先生は執事の顔色を読んでテキストをまとめ出す。


 △


「……まったく、子供と遊ぶよりも術式の勉強をしていた方がよっぽど有意義だと言うのに」

 ボクは文句を言いながら三階の子供部屋に向かう、

「レオポルト様、将来人の上に立つお方は今のうちから人との関係を学んでおく必要がありますよ」

 そう言いながら流れる様な仕草でドアを開けるベテラン執事。

「それでは、しっかり遊んでください」

 そう言ってドアを閉めたオスヴァルト、今からは何をしても怒られないボクだけの時間さ。


 年少組の積み木で遊んでいた子、木で出来た人形で遊んでいた子達、カルタを広げていた子達が一斉にボクに注目する、

「こんな事やっているんじゃないよ」

 綺麗に積み上がった積み木を蹴り倒すと、良い音がしてお城が崩れる、小さな子が自信作を壊され泣きそうな顔になるけど、知ったことじゃない、

「つまんない遊び!」

 ボクはカルタを足で払いのける、女の子たちは一瞬睨むけど、すぐに目を伏せる。


 そのまま年長組に行くと宣言する

「ミヒャエル、ロットマン、カードゲームやろうぜ!」

「はい、レオポルト様」

「それじゃあ、ボクはユーリア、ミヒャエルはカロリーナね」

「レオポルト様、ボクはまたオルガですか?」

「一生懸命頑張れよ~」


 ボクの後ろにユーリアが立つ、子供部屋ではまぁ美人の部類だと思うよ、カロリーナは普通かな、オルガはブタみたいな顔をしているからみんなからイジメられている。


 △


「はい、ロットマンそのカード当たり、またボクの上がりだよ~」

「うゎー、やられた、もう残ってないですよレオポルト様」

 男の子がカードで負けると、後ろに立つ女の子が一枚服を脱ぐと言う遊びさ、ブタ顔オルガはキャミソール一枚、

「まだ残っているだろう、オルガ!早く脱げよ」


 下着姿にさせられたオルガは目を伏せてブルブル震えている、ボク達はそれを見てニヤニヤ笑っているだけ、

 オスヴァルトが子供部屋は人との関係を学ぶ場所って言っていたけど、その通りだね、一人イジメられっ子を作ればみんな団結してイジメるよ。

 だけどもうブタイジメも飽いてきた。

「オルガ、お前がさっさと脱がないからしらけたよ」

 そう言って子供部屋を後にするボク。


 △


 朝ご飯は食堂で父様と一緒に食べるけど。晩御飯は一人部屋で食べる、メイドのレアンドラがサーヴしてくれるけど、このメイドは割と美人なので気に入っている、

 ちょっとボクの自慢話をしておこう、自慢と言うとやっぱり、


「……そう言う訳で今日も子供部屋でブタのオルガをイジメたのさ」

「まぁ、レオポルト様は庶子の扱いがお上手ですね」

「なんだ“しょし”って?」

「レオポルト様の御兄弟でございますよ、母親は違いますけどね、ユーリアとカロリーナは可愛らしいお顔ですから妾の子でございましょう、

 オルガはきっと下働きの子供ですね」



 ボクとオルガが血のつながった兄弟だったなんて、あんなブタと一緒って事?

頭の中がグルグルしてきたよ。

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