第38話 終わりは突然に(最終話)

 奴隷オークションや遠征で娘を買い取ると教育を施し、閨の作法を教えて娼館に売る、わたしのスキルの力があるので、適正のある子だけしか選んでいないので、売られた子の多くが上級店に格上げになったり、身請けされたりしている。


 娼婦として適正の無かった娘や戦闘奴隷を迷宮でレンタルしたり販売したりしているけど、こちらも順調な商売だ。

 それとは別にスリーローズ商会はローションやバレーナの皮の利ザヤで潤っていて、わたしのポケットマネーと言うレベルでは収まらなくなってきたのが悩みの種だ。


 ロリコンのレオポルト様最近はヒルベルタ様を寝屋に呼んでいるようだ、こちらの世界では子供を作る年齢もずいぶん早いのだと実感させてくれる。

 そのヒルベルタ様、昼間は娼婦候補生達に教養の授業、夜はわたしの部屋に来て奴隷商会の運営を学んでいる、もともと頭が良い上に熱心な性格で貪欲に知識を吸収している。


 商会運営は上手く言っている、そう思っていたのだけど、生憎周りは違う評価をしていた様だ。



 ◇◇



 ご主人レオポルト様の父親ルードルフ・アルトナー、彼の商会に呼ばれた、今まで何度も顔を合わせた仲だが、実際に彼の商会に行くのは初めてではないだろうか。

 大通り沿いの一等地に建つ奴隷商会の建物、レオポルト奴隷商会とは格が違う、と言う現実を見せつけられた、

 受付の対応も流れる様で奴隷商会は人が命、と言う事を見せつけられた気分だ。


 通された応接間でも良く躾けられたメイドの動きで、レオポルト奴隷商会はメイドごっこをしているだけだと、分かった、まだメイドを売りに出す時期ではないわね。

「遅れて済まないミヤビ嬢、待っているあいだ退屈だっただろう」

「いえ、ルードルフ様、色々勉強をさせてもらいました」

「うむ、そう言った向上心は大切な事だな、

 ところで今日君を呼んだのは、私からお願いがあるかなのだが」

「はて、いかな御用でしょう?」


「端的に言うとレオポルト奴隷商会をやめて欲しい、いや君は優秀だからどこでも務まるだろうし、独立してもよい、もし望むのならこのルードルフ奴隷商会に来ても良い、君の望むポストを用意しよう」

 考えもつかない事を言われて頭を殴られた様な衝撃を受けたけど、すぐに衝撃から立ち直り、ルードルフ様の言葉の意味をかみ砕く。


「わたしがいてはレオポルト様の独立の妨げになるからですね」

「まぁ、そう言う事だ、レオポルトは君に頼り過ぎている」

「ヒルベルタ様に活躍の場を与えないといけませんしね」

「何と言うか、話が早いな、もしかして以前から考えていたのかい?」

「多少は身に覚えがありますので」

「もちろん今すぐ結論を出す必要はないし、必要なら金銭でも人でも援助する用意がある、これはわたしの我儘だからね」


 ◇


 帰りの馬車の中で色々考えた、こちらの世界に来て程なくして嵌めたこの首輪が取れると言う事か、

 今のスリーローズ商会の収益なら充分に食べていける、だけど食べて行くだけで人生と言えるのか?

 かと言って奴隷商人として独立するのはハードルが高過ぎる、ルードルフ様の下で世話になれば生活は安定するけど、つまらない仕事になりそうだ。


 馬車がレオポルト商会に着く頃にはわたしの心は決まっていた、そのままレオポルト様、ヒルベルタ様、オスヴァルトを集めて宣言する、

「わたくしミヤビはここに独立を宣言いたします」

「レオポルト様、つきましてはわたしの首輪を外していただけませんか?」

「ミヤビ様、急です! いったい何のご不満が有ったと言うのですか」

 ヒルベルタ様が声を荒げる、


「不満なんてありません、この商会はわたしのとって最高の職場ですよ」

「ならば独立なんてする必要はないじゃないですか」

「ヒルベルタ様、これはあなたの為でもあるのですよ、わたしがいなくても商会が回る様にしてくださいませ」

「ですが、まだ早いです!」

「ヒルデ、ミヤビの言う事はもっともだ、ボク達はミヤビに頼り過ぎていた」


 意外にもレオポルト様は理解が深かった、いやわたしに商会を乗っ取られるのでは、と警戒していたのかもしれない。


 ◇◇


 独立にあたりわたしが選んだスタッフはメイドのメリッサと幼女四人、カタリーナ、ミーア、エルヴァ、そしてサキュバスのリフリー、

 このメンツでギングリッチ兄弟商会から巻きあげた別荘に拠点を移した。

 主な仕事は風俗嬢の教育、娘達におもてなしのテクニックを施すの、生徒は誰でも良いと言うわけじゃないわ、適正のある娘を選ばせてもらいますからね。


 風俗嬢とは随分違った形になってしまったが、異世界で風俗嬢を育てる、やりがいのある仕事よ。





  ミヤビ編 第一部 完

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