第7話 つまり引き籠りは最強だって事さ!

 生きてた。

 俺は自分のマイホームででんぐり返しのような格好でうずくまっていた。

 あの時、飛龍のブレスの余波で俺はそのまま運よく自分のマイホームにホールインワンしたのだ。

 正直死ぬかと思った。

 実際死にかけた。

 カラダはボロボロだ。

 鱗はところどころ剥がれてるし、全身擦り傷切り傷だらけ。

 あー血が出てるし。

 俺の血って黒っぽいんだな。

 初めて知ったわ。流石、龍。

 つーか痛い。すごく痛い。

 痛みなんて感覚久しぶりだな。

 前世でも俺喧嘩なんてしたことも無かったし、痛みなんて感覚久しく忘れてたよ。

 ああ、ずきずきするなぁ。


 あの時、飛龍の放ったブレス。とりあえず直撃は避けられた。

 ぶっちゃけて言えば外れた。

 多分直撃からかなり離れていたと思う。

 遠くからきのこ雲みたいなのが出来てたし。

 余波でこの威力って、飛龍のブレスまじぱねぇ。

 多分飛龍は爆発の地点に俺がいると思ったんだろう。

 離れた場所で本当に良かった。

 直撃喰らってたら間違いなく死んでたよ。

 きのこ雲が出来る爆撃って、俺テレビでしか見たことなかったよ。


 さらにブレスの余波で、入口が崩壊。部屋はボロボロ。

 マイホームはダメダメになってしまったが、まあ、良しとしよう。

 命あっての物種だ。

 また作ればいい。


 でも不幸中の幸い、マイホーム崩れたおかげで飛龍の目をごまかすこともできた。

 外の景色は見えなかったが、あの後二~三回爆音が続いた。

 おそらくあの飛龍が立て続けにブレスを放ったのだろう。

 きちんと追撃するって怖いね。


 それからしばらくして静かになったが、俺は外に出る気にはなれなかった。

 怖いし。

 あんなのがいるのにわざわざ外に出る馬鹿がいるか?


 いや、ごめん。

 バカは俺ですね。はい。


 あの飛龍間違いなく俺の放ったブレスに驚いてこっちに来たっぽいもんね。

 そりゃ警戒しますよね?

 いきなり近くで爆撃があれば。

 そりゃだれだって驚きますよ。


 すいません。

 でも言い訳させてください。

 仕方なかったんです。

 ブレス撃つの面白かったんだもん!

 アレはしょうがない。

 小さいころに出来なかったカメハ○波が撃てるんだよ?

 口からだけど。

 だからつい舞い上がってしまったのだ。


 うん、自重しよう。

 あと、お外怖い。

 

 しばらくは地中でのんびり暮らそう。

 少なくとも十分に成長するまでは。

 それに俺はもともとひ弱な人間。パンピーなサラリーマン。

 龍に転生したって根っこの部分は変わらない。

 俺は単なる小市民なのだ。

 弱肉強食の自然の中で生き抜くのがそもそもの間違いだ。

 温室育ちは逆境に弱いのだ。


 それに俺はまだこの世界に生まれて、たったの二日。

 赤ん坊も、赤ん坊だ。

 いや、普通に歩いたりしてたけどさ。

 ともかく今は、成長のために休むべきだ。

 探索やその他もろもろは一切休止。

 休止ったら休止だ。


 という訳で、地下で引き籠ろう。

 地中なら外敵もいないだろうし。

 そう決めた。


 よく考えれば、俺の食料は土に岩。

 食料には困らないし、一日中グータラ寝ていても咎めるやつも誰もいない。

 だって俺、龍だし。

 窓際族であった俺はもともとぼっちだ。

 一人でいることには慣れている。

 別に悲しくなんてないよ?

 

 のんびり土でも食べながら、地中で惰眠をむさぼる、ひきこもりのグータラ生活。


 あれ?

 よく考えなくても、悪くないんじゃないか、この生活?


 前世の社畜時代の夢がある意味叶った。


 うっほほーい!


 と言う訳で、さっそく食事にしよう。

 傷を治すのには食べるのが一番だ。

 喰って寝る。これが一番。

 近くにあった岩を一齧り。

 ぼりぼりぼり。

 うん。うまーい。

  

 あ、これ昨日食った赤い石だ。

 今のところ、これが一番美味い。

 しばらく掘り進めても、この地層が続くようだし、この部分を中心に拡張していくか。

 さて、マイホームの増築といきますかね。

 

 石を食いながら、これからどんな家を作ろうかと俺は考えていた。

 

 ちなみに体は三日ほどで完治した。

 その間に脱皮を五回も繰り返した。

 龍の体ってホントすごい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る