第六章 最終年

第107話 ドバイへ


 「プヒヒヒン?」 (また海外ですかー?)


 年が明けてしばらく。

 相変わらず雪が積もる我が実家でちびっ子と遊んだり、弟達とトレーニングしたり過ごしていたある日。


 お兄さんからまた海外に行くらしいって話を聞いた。いや、聞かされた訳じゃなくて、厩務員さん達が話してるのを盗み聞きしただけなんだけど。


 ドバイですって、ドバイ。

 前世でも話は聞いた事がある。

 なんかオイルマネーだかなんだかで、滅茶苦茶お金を持ってる国でしょ?


 写真で街並みとか見た事あるけど、すっげぇビルとかいっぱい建ってるんだ。人間時代に行けるなら喜んだかもしれないけど、馬の状態で行ってもねぇ。


 観光とか出来ないし、普通に走るだけだろうし、それなら日本で良くねって思っちゃうんだよ。アイアイサーも居ないだろうしさ。


 せめてワクワクするような馬がいるならレースに張り合いも出るんだろうけど、世界最強って言われてた馬がアンジュだったって考えると、これからあれ以上の馬と出会えるのは期待薄でしょうよ。


 毎回期待以上の走りでワクワクさせてくれるアイアイサーと走ってる方がよっぽど楽しいですよ。





 なんて事をうだうだと考えてたら、あっという間に飛行機に乗ってました。


 だけど俺のテンションはかなり高い。


 「プヒヒヒン!」 (アイアイサーおるやんけ!)


 「ブルルルッ」


 同じ飛行機にアイアイサーがいるのだ。いやぁ、びっくりしたね。ギリギリまで行きたくないでござるって駄々捏ねたけど、アイアイサーがいるんだもん。


 「プヒヒヒン? プヒヒン?」 (アイアイサーは初飛行機? 大丈夫?)


 「ブルルルッ」


 コミュニケーションは全く取れないけど、とにかく喋りまくる。なんか俺そっちのけでずっとソワソワしてるんだよ。


 初飛行機で緊張してるのかもしれん。ここは飛行機先輩の俺がばっちりフォローしてやらねばなるまいて。


 「プヒヒヒン」 (大丈夫大丈夫。落ちないって)


 飛行機事故って確率的には車より低いって何かで見た事あるよ。まあ、あくまで確率で落ちる時は落ちるからなんとも言えないけどさ。


 正直落ちたら馬の俺達はどうしようもないんだし、そんな心配をするぐらいならいっそのこと割り切ってゆっくりしてた方が気分も楽になるでしょうよ。


 という事をプヒプヒ言いながらアイアイサーに説明する。通じてるかは全く分からんが、とりあえず落ち着いて来たらしい。


 「プヒヒヒン」 (お、よし、落ち着いてきたな)


 「ブルルルッ」


 なんかお礼を言われた様な気がする。理解は出来ないけど、なんか素振り的に。プイって顔を背けながらもそんな感じがしたんだ。


 ツンデレ女子がよくやりそうな仕草と言ったら分かりやすいだろうか。


 「プヒヒヒン?」 (よし。じゃあ何する?)


 せっかく同じ飛行機に乗って移動するんだ。どれだけ時間がかかるか分からないけど、どうせなら一緒に遊びたい。


 恋バナとかどうよ。そこら辺の藁やら葉っぱを使ってトランプみたいな事でもやるか? 


 なんか修学旅行みたいで楽しくなってきちゃったぞ。


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 今年初めてG1で馬券取ったんやけど…。

 3連複やけど当たると思ってなかったで…。

 PS5買っちゃおうかな。

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