第23話 帰るぞ
いつも通りの記念撮影。
ちびっ子を横に配置してもらって、エンマ君はにっこにこである。
なんか滝さんが感極まった顔してらっしゃったのが気になるけども。
「プヒヒヒン」 (そういえば初勝利だっけ)
そりゃ嬉しいよなぁ。
滝さん程のレジェンドが勝ててなかったレース。さぞかし難易度が高いレースだったんじゃなかろうか。レース毎に難易度があるのかは知らないし、結構あっさり勝てたから、運が悪かったとかそんなんかなとも思うけど。
「エン! 待ってるからね!」
「プヒヒヒン!」 (すぐに帰るからな!)
記念撮影が終わって、いつものお別れ。
しかし俺はこの後実家に帰れる予定になってるのだ。なんなら今すぐ一緒に帰りたいところだけど、流石にそうはいかないらしい。
これは調教師の兄ちゃんをさっさとせかして、帰れるようにしてもらわないと。
前脚キックのキレを上げておこう。
厩舎に戻って飯をペロリと平らげた翌日。
「元気だな」
「プヒン」 (早く帰らせやがれ)
俺の様子を見に来た牧瀬さんと調教師の兄ちゃんに猛アピールしていた。
前回は体が筋肉痛になったけど、今回は特にそんな事もなく。若干体がだるい程度で元気いっぱいだった。
「念の為に少し様子を見てから放牧に出すか」
「ですね。万が一があってはいけませんから」
「プヒン!」 (なんやて!)
もう大丈夫だと言っておろうに。
俺は早く帰ってちびっ子と遊びたいんや。
「ほら。エンマ散歩行こっか」
牧瀬さんが紐を俺に装着してお散歩広場へ向かう。むぅ。残念ながらまだ帰らせてくれないみたいだ。仕方ないから牧瀬さんと遊ぶかね。
でもその前に。
「おわっ!」
「こら、エンマ」
「プヒン」 (ふふん)
牧瀬さんに従うフリをして、調教師の兄ちゃんに前脚キックを繰り出した。ギリギリ避けられたけど、焦った顔が見られたから良しとしよう。
「エンマありがとうな」
去り際にボソッと調教師の兄ちゃんにお礼を言われた。蹴られそうになってお礼を言うって何事? もしかしてドMなのかね?
それならこれからも蹴ってやろう。
☆★☆★☆★
「エンマの次走についてですが」
事務所では、調教師の一永、馬主の花京院、偶々時間があった主戦ジョッキーの滝がエンマダイオウの次走について話し合っていた。
「2000mでも問題なさそうだけど、もう少し長い方がエンマには合ってるんじゃないかな」
「2400m〜2600m辺りですか。こちらからするとありがたい限りですが」
滝と一永が距離適正について話し合う。
前回のレースは圧勝出来たが、若干足を持て余してるように見えたのだ。
「一応次は皐月賞でお願いしようと思っていたんですが、前哨戦を挟んだ方が良いですか?」
「私は直行でも問題ないかと思ってますが、その時次第ですね」
花京院は初の馬がいきなりクラッシック戦線に参戦する事になって、頭が追い付いていないが、ここで辞退なんてのもありえない。
「皐月→ダービー→休養→何かを挟んで菊花賞というのが王道の流れではないでしょうか。何もアクシンデントがない前提になりますが」
「ダービーから宝塚記念っていう鬼畜ローテもあるよ」
滝が今ではありえないような提案をしてくる。今回のレース後のように元気にしてれば一考の余地があるが、恐らくそれは無理だろう。
3歳での宝塚記念制覇は夢のある話ではあるが、やはり目標はダービー制覇。
一度きりのチャンスを是非モノにしたい。
「まだエンマダイオウは2歳です。これから更に馬体は成長していく事になるでしょう。これからが楽しみですね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
はい。今章終了です。
お疲れ様でした。
とりあえず誕生から2歳までを書いてみましたけど、いかがだったでしょうか。
色々調べながら書いたりしてるんですが、もしかしたら間違った知識を披露してるかもしれません。その時はご指摘くだせぇ。
次章はクラッシック戦線です。
エンマ君の更なる活躍にご期待ください。
ではではまた次章で〜。
作者は他にも作品を更新してますので、良かったらそちらもご覧ください。
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